近所のディーラーまで見に行った
アルファ・ロメオ・トナーレは、それなりに思い入れのあるクルマだ。2019年3月のジュネーブ・ショーでコンセプトカーが登場した際に現地で見ていて、「これはカッコイイ……」と痺れたのをよく覚えている。
【画像】モントリオール・グリーンがよく似合うアルファ・ロメオ・トナーレ 全32枚
ES30型SZを彷彿とさせるヘッドライト、8Cコンペティツィオーネの流れを組むボディフォルム、ジュリア・クーペをオマージュしたサイドライン、プラグインハイブリッドであることを示す蛇の頭がプラグになった遊び心あふれるロゴ……。当時所属していた某雑誌で『今すぐ市販して欲しい』と書いたほどだ。
市販化されたのはそれから3年後の2022年で、日本へは昨年1月にまずマイルドハイブリッドの『TI』を導入。その後、上級モデルの『ヴェローチェ』が登場し、さらに今回撮影した『プラグインハイブリッドQ4』を追加したという流れだ。ちなみにTIがデビューした直後、個人的に近所のディーラーまで見に行ったのは本当の話である。
マイルドハイブリッドが1.5L4気筒ターボ+アシストモーターのFFであるのに対し、プラグインハイブリッドは1.3L4気筒ターボに前後1機ずつモーターを組み合わせた4WDとなる。ちなみに前者が160psで車重1630kg、後者は合計280psで車重1880kgとなるから、190kg増の重量を差し引いても、Q4のほうが動力性能は上だ。乗った印象は軽快でナチュラルなFFと、モーターの後押しで力強く走る4WDという塩梅で、キャラクターが異なる。
ただし、コーナリングがクイックかつスムーズで曲がるのが楽しいのは、両方に共通するアルファ・ロメオらしさだ。かつての名機ほどエンジンの官能性は正直感じられないが、人生を楽しむ天才のイタリア人たちが、電動化すら楽しんで開発しているような気がしてならない。このモントリオール・グリーンのトナーレを見ていると、細かいことは全て忘れさせる圧倒的なデザイン力があり、まさにイタリア車の面目躍如だと感じている。
知人の紹介でアルフィスタに出会う
今回、トナーレを借りている期間に知人の紹介で、とあるアルフィスタと出会った。ちなみに筆者はかつて『アルフィスタ』というアルファ・ロメオ専門誌を担当していたので、アルファ・ロメオ乗りのことをアルフィスタと呼んでいる。
市川正樹さんは、2021年2月に発売されたジュリエッタの最終モデル、『ジュリエッタ・スペチアーレ』にお乗りだ。ボディカラーはアノダイズドブルーメタリックで、イエローのアクセントが目印となる。限定20台のうちの1台だから、なかなかに貴重だ。
スキーが趣味の市川さんは、最初はスバル・レガシィ・アウトバックやボルボに乗り、最近はドイツ車が多かったが、どれも所有期間は短かったという。その中で例外的に長かったのはフォルクスワーゲン・トゥアレグのV8で、10年くらい乗ったそう。「やんちゃなクルマが好きなんです」と市川さんは笑う。
ではなぜアルファ・ロメオと出会ったのかと言えば、当時小学校6年生の息子さんがF1好きで、アルファ・ロメオで走っていたバルテリ・ボッタスのファンだったから。もちろん、ナンバープレートは『77』だ。クルマという共通項は親子のコミュニケーションツールとなり、クルマの話をしたり、一緒に走りに行ったり、グランツーリスモで遊んだりして楽しんでいた。
そういった流れで、最初は4Cを見に行ったところ、ショールームでジュリエッタ・スペチアーレに出会う。そこで「これは楽しめそうだ」と直感し、初のイタリア車として購入にいたったそうだ。市川さんは現在東京に単身赴任中で、車両は奈良の実家に置いたままだが、週末帰省しては近所のワインデングに走りに行き、ジュリエッタを堪能している。助手席の息子さんに「縁石を攻めすぎ」と注意されるほどに!
踏み込めばやんちゃもできそう
せっかくなので、少しだけトナーレのステアリングを握っていただいた。EVは初めてということで、EVモードで走り始めると「静かでなめらかですね。おもしろいなぁ」と興味津々。「非常にクレバーな走りですね」と好印象のようだ。
道がすいていたので、ちょっとだけアクセルを踏み込んでもらった。
「ジュリエッタとはトルクのかかり方が違いますが、エンジンの雰囲気はアルファ・ロメオらしいですね。ジュリエッタって乗り心地が悪いですし、Dモードでパドルを使い頻繁にシフトダウンして走るので、家族には不評なんです。やんちゃな走りができていいのですが。トナーレは街中で運転したくなりますし、踏み込めばやんちゃもできそうなので、いいところどりと言えます」
乗っているうちに、自分が所有する姿も想像できたようで、曲がり角でも回転半径を確かめながら「これは運転しやすいですね」と嬉しそうな市川さん。「もっと音がよかったらなぁ」とジュリエッタを思い浮かべながら、「ジュリエッタ・スペチアーレは、購入を秒で決めたんです。アルファ・ロメオって本能で欲しくなるクルマだと思いました。走るときも五感全てを使うから、思考が入る余地がないんです」と語る。
市川さんは『ネスレ日本 ネスレヘルスサイエンス カンパニー』で、『執行役員 マーケティング&メディカルアフェアーズ統括部 統括部長 薬学博士』という肩書をお持ち。簡単に書くと、元々研究者ではあるがマーケティングの経験もあり、『食品で医療を変える』ことをテーマに日々、活躍されている方だ。
トナーレへの好印象が止まらない
そういった多忙な日々の中で、仕事を完全に忘れさせるアルファ・ロメオは、なくてはならないパートナーとなっている。「長年仕事を頑張ってきて、ゆとりができたので、クルマを楽しむことができています。免許を返納するまでやんちゃしたいんです(笑)」と話し、楽しそうにトナーレのドライブを続ける市川さんは、セレクターをDモードに切り替えた。
「やはりエモーショナルですよね。Dにした途端、単なる移動手段ではなくなりました。トナーレはハンドル操作ではなく重心移動で曲がることができるので、足の裏で感じて滑る、スキーの感覚に似ています」
ドライブを終えてもトナーレへの好印象が止まらない。
「従来のスタイルを踏襲しながら、新しいスタイルも取り込んでいるのがいいですね。デザインで欲しくなるクルマって最近あまりないんですが、これは欲しくなります。現在ファーストカーの位置が空いているので、持って帰りたいですね(笑)」
最初、クルマの説明をしている時は、なんだかセールスマンみたいだった。「トナーレって、こんなにいいんですよ」といった塩梅だ。しかし、だんだんとアルファ・ロメオに対する感覚が一緒であることに気が付き、そこからはイタリア車乗り同士で意気投合し、共通した感覚を語り合う場になっていた。年齢も職業も経歴も何もかもが違うふたりであったが、こういった関係を築けるのがクルマ趣味の醍醐味と言えるだろう。
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スバリストもあるが、フェラーリならフェラーリスタ、ランボルギーニスタ?ポルシェスト?