みなさん、新年はいかがお過ごしだったでしょうか。ドイツでは、新年が明けた瞬間を盛大に花火の打ち上げでお祝いします。除夜の鐘を聞きながら静かに過ごす日本とは対照的に、子供たちやご年配の方も揃って花火をドカドカ打ち上げる様子は、なかなか他の国では見られない光景ではないでしょうか。
一方、ドイツの正月休みは非常に短く、1月2日はなんと「平日」。学校や会社も平常に戻ります。ドイツの人々にとって大切なのは、お正月ではなくクリスマスなのです。そんな賑やかな年末年始のベルリンで、爽やかなイエローが印象的なコンバーチブルに出会いました。今回は、思わず春が待ち遠しくなってしまうクルマ、サーブ9-3コンバーチブルをご紹介します。
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スウェーデン生まれの名門
スウェーデン生まれの自動車ブランド、サーブ。航空機・軍需品メーカーであるサーブの自動車部門として1947年に設立されました。
航空機メーカーらしい空力にこだわったクルマやモノコック構造のボディ、航空機エンジンの技術を引き継いだターボエンジンなど、独創的な設計を特徴としていて、日本でも独特のスタイリングやメカニズムが好評を博し、バブル期には多くのクルマが日本に輸入されました。
ドイツでも、サーブのクルマは「寒さに強く、丈夫で長持ち」ということで人気が高く、同じくスウェーデン製のボルボと並んで、耐久性を重視するユーザーに選ばれています。ドイツでは、気に入ったクルマをあまり買い換えずに長く乗ることが多いため、日本に比べて古いサーブ車を見かける機会は多いといえるでしょう。
2代目以降、伝統のハッチバックが消滅
サーブ9-3は、1998年に初代モデルが登場。それまで生産されていたサーブ900のマイナーチェンジ版で、3ドアと5ドアのハッチバックと2ドアコンバーチブルがラインナップされていました。2002年には早くも2代目にバトンタッチ。サーブ伝統のハッチバックスタイルがついに消滅し、4ドアセダンがベースモデルとなります。2005年には、5ドアハッチバックの穴を埋める5ドアワゴンと、新型のコンバーチブルが追加されました。
2代目9-3の最大の変更点はエンジンです。もともとサーブの自社設計で、長年にわたり改良を続けてきた直列4気筒エンジンを廃止し、当時の親会社であったゼネラルモーターズ系列のエコテック系エンジンを採用。同時期に新型にモデルチェンジを果たしたオペル・ベクトラとプラットフォームを共用しています。
2008年には大規模なマイナーチェンジを敢行。変更箇所は2000箇所にも及び、外観面でもフロントマスク、ボンネット、テールランプなどが大幅に変更されました。今回撮影したクルマは、まさにこのマイナーチェンジ後のモデルで、大胆なハイデッキスタイルの流麗なスタイリングが目をひきます。コンバーチブルらしからぬ大きなラゲッジスペースやゆったりとしたサイズのシート、優れた直進安定性はドイツでも高い評価を受けました。
「サーブ」ブランドはどこへ?
しかし、サーブはここから苦難の連続となります。2009年に親会社のゼネラルモーターズが経営破綻。紆余曲折の後、オランダのスパイカー・カーズの傘下に入ります。その後も経営状態は回復せず、2011年に破産申請することに。
2012年には、中国系スウェーデン企業のNEVS(ナショナル・エレクトリック・ビークル・スウェーデン)がサーブの自動車事業を獲得。電気自動車として復活させた「9-3」の生産を、中国で2017年から開始するとの発表がありました。ところが、NEVSは「サーブ」のブランド名を現在使用することができません。もともとの親会社で、現在は航空機・軍需品メーカーのサーブが、数年前にNEVSが経営危機に陥った際、「サーブ」のブランド名の使用権を撤回してしまったからです。
結局、現段階での「サーブ」のブランド名が復活する可能性は、残念ながらあまり高くないと言えるでしょう。電気自動車に生まれ変わった9-3も気になるところではありますが、現段階ではコンバーチブルの設定はなく、また追加されるというアナウンスもありません。
事実上、サーブ最後のコンバーチブルとして、今後ますます希少な存在になっていくであろう9-3カブリオレ。いつまでも元気な姿を見せてほしいですね!
[ライター・カメラ/守屋健]
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