冬になるとテレビで頻繁に見かけるスタッドレスタイヤのCM。みなさんはすでに準備OKでしょうか?
冬のドライブには欠かせないスタッドレスタイヤですが、バスの場合は乗用車と異なり、スタッドレスに加えてチェーンも用意します。バスにチェーンは必須。バス用チェーンとは一体どんなものかご紹介します。
雪が降る中 愛車で長距離移動!! そんな時スタッドレスタイヤがレンタルできるって知ってた?
文/運屋フランク(バス運転手)、写真/運屋フランク、AdobeStock
[gallink]
■チェーンは命を守る必須アイテム、バスの事故は身内だけでは済まない
みなさま初めまして。バス運転手の運屋フランクと申します。私は地方の路線バス会社に所属しています。雪が降る地方ですが、バスは雪が降っても止まりません。公共交通の最後の砦です。
そんな雪道で私どもの足元を支えるのがチェーンです。雪の予報ともなれば、翌朝は早めに出勤をしてチェーンを巻きます。バスにチェーンをかける際には会社から指示がありますが、最終的には運転手が判断します。
バスは一般車と違い事故を起こせば新聞沙汰。社会的信用を失いますし、身内の問題で済まないのです。実際雪道で事故を起こした場合、チェーン装着の有無で事故の評価が変わります。事故を起こせば運転手は懲戒問題になります。
会社からのチェーン装着指示を無視したともなれば重い懲戒が課せられますし、もちろん自分の大型二種免許にも。「スタッドレスを履いていた」は理由になりません。万が一、人を巻き込んでしまった場合は最悪です。数年前のスキーバスの痛ましい事故が思い出されます。
また、北国のバス会社ともなれば、この時期には必ず新しいスタッドレスタイヤに履き替えるのですが、使用するのはゴムを貼り替えたリトレッドタイヤ。性能はかなり信用できます。
圧雪であればトラクションもブレーキもハンドリングもしっかり効きますが、残念ながら万能ではありません。急な上り坂や下り坂、特に凍結路ではスタッドレスでも意味はありません。思わず運転席で声を上げるほどガッツリ滑ります。
チェーンを履いていればスリップを確実に防げるので、やはり最後はチェーンだと思い知ります。
従来型の鎖タイプのチェーン
■現在のバス用チェーンの主流は乗り心地が良くコンパクトなワイヤータイプ
バス用チェーンとはどんなものでしょう。ゴツい鎖を思い浮かべる人も多いと思いますが、現在の主流はワイヤータイプです。
ワイヤータイプはコストがかかるのですが、効果は絶大。振動と音が抑えられるからです。また路面に優しいのも特徴。鎖はアスファルトを削りますが、ワイヤーは軽微で済みます。そして何より軽くてコンパクト。鎖は筋トレレベルです。
ワイヤータイプ。サイドの部分は鎖ですが、チェーン部分はコイルスプリングを巻いたワイヤーとなっています
並べてみるとワイヤータイプの細さがわかります
チェーンをかける前に知っていただきたいのは、バスは基本的に3本のチェーンを使います(会社により違いはあるかもしれませんが…)。駆動輪と前輪の歩道側に巻きます。
例えば斜めの場所に停車した際、バスは長いので後輪のみチェーンを巻いているとコンパスのように前輪が流れてしまいます。それを防ぐためです。もちろん前輪に1本巻くだけでハンドリングもブレーキングも良くなります。
■タイヤチェーンをかけてみよう:1「チェーンをかぶせる」
ジャッキアップと行きたいところですが、バスを上げるには油圧ジャッキが必要です。そんなもの現場にはありませんので、バスを動かしながらかけます。この時に前進するか後退するかも要チェック。ラッチのない端を進行方向にして、その端が道路に着くくらいの位置にかぶせます。
ラッチがない端を進行方向にして若干路面に着くくらいで被せるのがベター
タイヤ半周くらい前に進めるとラッチ側がタイヤに乗ります。こうすることでかけやすくなります。ただ単に下に敷くだけでは両端をタイヤに上げなくてはなりません。無駄な手間になります。
ちなみに進行方向にラッチを向けないのは、踏んで曲げてしまう事故を防ぐため。また、実際は3本一気に巻くのですが、3本全ての位置を合わせておかないと、この段階でどれかが脱落して手間が増えます。
こんな感じでラッチ端がタイヤに乗ればOK
■タイヤチェーンをかけてみよう:2「ラッチをかけて固定」
まずは内側のフックをかけます。これが最も手を焼きます。なぜなら「見えない」から。腕を奥に突っ込んで感覚を頼りにかけるのですね。冗談ではなく針に糸を通す感覚です。
内側さえかかれば、表側のラッチはすぐに締められます。そしてこの状態で数十メートル走りチェーンをタイヤになじませ、増し締めをして一丁あがりです。
タイヤの裏側にかかる方。ただ引っ掛けるだけですが見えないので難しい
これが完成図。余るコマはなるべく詰めてしっかりと締める
基本的には道具は使わず素手でかけますが、作業効率化の部品がありますのでご紹介。まずは延長用のリンク。これをあらかじめかけておけば、端と端を繋ぎやすくなります。ちなみに上記の完成図の写真は、そのリンクで延長しています。カラビナを含む先がリンクです。
■タイヤチェーンをかけてみよう:3「ゴムバンドをかけて終了」
次にゴムバンド。チェーンは必ず緩みます。不意の脱落を防ぎ、増し締めをゴムに頼るというわけです。
チェーンの緩みをとるゴムバンド。ホームセンターで買える丈夫なもので良い
完成状態。チェーンをタイヤに密着させれば脱落なども防げます
これが現在のバス用チェーンです。これだけで驚くほど雪道を進みます。路線バスは後輪駆動ですがそれを忘れるくらい。しかしチェーンを巻く最大の効果は、運転手が安心してハンドルを握れるという点に尽きます。
■チェーンは全てのクルマに有効、手元において損はなし
現在の市販車は当然4WDばかりではありません。でもスタッドレスだから大丈夫は過信です。
例えばスキーに行くとしましょう。当然坂を登ります。その途中に停車したとしましょう。そうなれば前輪駆動では発進が困難です。実際タイヤが空転した瞬間に滑って落ちてきたトラブルも見ました。チェーンを付けていれば……と思うわけですね。
幸い、一般乗用車向けのチェーンはバス用に比べて安価です。参考までにおおよその値段は、写真のワイヤータイプのバス用左右1ペアで4万円、乗用車用であればその半分の2万円、そしてネットで売られているようなスパイク付きのゴムを巻き付けるようなタイプは1万円で手に入れられます。
転ばぬ先のチェーンです。どうか事故のためにレジャーが台無しになりませんように。
それでは末筆ながら、皆様の冬の安全を願っております。気が向いたら、ぜひバスもご利用くださいね! ありがとうございました。
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