2.0Lスカイアクティブ-Gから220ps以上
text:Richard Lane(リチャード・レーン)
【画像】BBR GTi MX-5とND型ロードスター 全80枚
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
BBT GTi社のスーパー220は、マツダMX-5(ロードスター)用の最新チューニングキット。英国にも導入された2.0Lのスカイアクティブ-Gエンジンを強力に変えてくれる。
この2.0Lエンジンを搭載したMX-5(ロードスター)は、ND型の中でもベストという評判を得ているクルマ。特にオプションのリミテッド・スリップデフにビルシュタイン製ダンパーとを追加した仕様が良い。一方で1.5Lエンジンの、気持ちよく深がるフィーリングも悪くはない。
このスーパー220キットは、新しい2.0Lユニットと1.5Lユニットの個性を、組み合せて引き上げたような印象。英国のオーナーならBBT GTiのガレージへ直接向かって、愛車に装備させるパーツを選ぶことも可能だ。
高性能カムと、バブルスプリングやリテーナーに置き換えられたエンジンだけではない。美しい4-1形状のステンレス製のエグゾーストマニフォールド、BBR GTiのエアインテークや、K&N社のエアフィルターなどが用意されている。
それらの効果を統合するのが、ECUの書き換え。英国仕様の標準では183psとなる最高出力は、名前の通り220ps以上へパワーアップ。フェラーリ430スクーデリアのような特徴的な排気音も付いてくる。
チューニングの費用は2682ポンド(38万円)。通常はインストールに3日間を要するが、急いでいるのなら600ポンド(8万円)を追加すれば、1日で仕上げてくれる。
ただし今回は基本的なスーパー220のチューニング以上の内容を受けたクルマ。試乗した限り、基本キットに追加したくなること請け合いだった。
エンジンだけではない、気になるメニュー
ゴージャスな深みのあるゴールドが眩しいホイールは、OZ製のウルトラレッジェーラ。グッドイヤーのイーグルF1タイヤとのセットで1500ポンド(21万円)。ウィルウッド社製のブレーキキャリパーは、ホースとのセットで765ポンド(11万円)で装備できる。
ボディの下側を覗くと、アイバッハ製の真っ赤な調整式アンチロールバーが見える。こちらは560ポンド(8万円)。シェフィールド・スチール製のBBT GTi社オリジナルスポーツスプリングも、560ポンド(8万円)。
ダンパーはマツダ・オプションのビルシュタインのままだが、圧縮時のスプリングレートは10%高められている。車高は、ノーズをこする心配が出てくるものの、30mmほど下がる。
チューニングメニューを包むボディには、フロントスプリッターにサイドスカート、リアエプロン、リアスポイラーといった、マツダ製のエアロキットが装備されている。ボディサイドの派手なステッカーは選ばなくてもいいだろう。読者に知ってもらうべく、BBR GTiのデモ車両として貼ってある。
まっさらな新車状態で手に入れたいのなら、2.0LのマツダMX-5(ロードスター)の代金と合わせて、2万8500ポンド(407万円)ほど用意すれば間に合う。状態の良い中古車を持ち込めば、ぐっと費用は抑えられるはず。
BBR GTiのチューニングは基本的にエンジンや足回りなどメカニズムの部分のみ。この全部乗せ状態のデモ車両であっても、車内は基本的にいじられていない。
メーター類はアナログで、インテリアには一部レザーが用いられている。ステアリングホイールやシフトノブは細身。アルカンターラ仕上げや4点のハーネスもない。
同価格帯で他を圧倒するほどシャープ
どこかオールドスクールな雰囲気が漂うが、操作性に優れ居心地は良い。エンジンを始動する前、ストックのサイドサポートの低いシートが、BBR GTiの手にかかったパフォーマンスに充分なのか疑問を感じてしまった。
エンジンを目覚めさせれば、このMX-5(ロードスター)が素のクルマだとは誰も思わないはず。スーパー220キットのエンジン・チューニングに加えて、オリジナルのGTスペック・サイレンサーを装備しているから、排気音はアイドリング時からパンチが効いている。キリリと緊張感がありワクワクする。
スーパースポーツ・サイレンサーもラインナップされている。更にパワーアップが期待できるものの、エグゾースト・マニフォールドとのセットではBBR GTiとしても推奨していない。一般的なドライバーには少しうるさすぎるようだ。
エンジンが温まったら、このクルマに丁度いい道へ辿り着くまで、ポテンシャルに探りを入れてみる。初めに気づくのが、スロットルレスポンスの鋭さ。この価格帯では他を圧倒するほどシャープだ。
パワーはリニアに得られる。標準から300rpm上乗せされた、7800rpmのレッドゾーンまで力強さは増し続ける。スーパーカー級の回転域ではないにしろ、吹け上がりは最高。タッチの良い6速マニュアルの、1速から3速を何度も行き来させたくなる。
パワーウエイトレシオが改善したことで、圧倒されるほどではなくても、充分に速い。最大トルクの回転域が下がり、20.8kg-mから22.9kg-mへと増えているものの、高回転域まで回す必要はある。でも、とても楽しい。
エンジンを引き立てる絶妙なサスペンション
ターボ過給されるフォード・フィエスタSTより、加速感は遅く感じるかもしれない。念のため。加えてフォードは、頭で考えて運転するのに充分なスピードを持つが、速すぎないからコーナーでちゃんとメーターを目視できる。
このスーパー220キットを搭載したMX-5(ロードスター)もほぼ同じ。ダッシュ力が穏やかで、レッドゾーンまでしっかり回して変速する余裕があるぶん、さらに良い。
もともと素の2.0Lスカイアクティブ-Gも優れているが、スーパー220がインストールされたことで、パワーデリバリーの質感に磨きがかかった。ビンビンのレスポンスを味わえば、チューニングに投じた費用を悔いることはないだろう。
単体でメニューを選ぶなら、エンジンだけでなく、それに見合うサスペンションも欠かせない。少なくとも調整式のアンチロールバーは選んでおきたい。市街地での快適性は多少犠牲になるものの、郊外の道なら2速いっぱいまで回さずとも、その効果は体感できる。とても良く練られたチューニングだと思う。
BBT GTiのサスペンションで優れているのは、ボディロールを抑制しつつ、完全に排除していないところ。充分に挙動の先読みができる、コミュニケーション力が残されている。加えて姿勢制御の精度は高い。
特にリアタイヤの上下方向の動きが改善され、急な起伏を通過するときなどで有効。コーナーの途中でカント角が変化していたり、アウト側に窪みがあった場合などでも、上手に丸めてくれる。
もし真剣に攻め込んでも、幅215タイヤが生む程よいグリップ力と、コンパクトなボディサイズ、FRの優れたバランスが際立つだけ。クルマを信頼して操れるし、気難しいところもない。
求めるすべてを1台に融合させた
高性能モデルの市場状態を俯瞰してみる。後輪駆動の優れたスポーツカーの場合、5万ポンド(715万円)くらい出せば、簡単にエントリーモデルが見つかることは間違いない。
このスーパー220をインストールしたマツダMX-5(ロードスター)は、価格破壊に近い。短時間試乗しただけだったが、ガレージに収めて常に楽しみたいと感じさせる訴求力がある。
真のスポーツマインドを刺激するために、チューニングしたMX-5(ロードスター)という選択は、悩ましいことも認める。しかし、アンチロールバーやスプリング、軽量ホイールなどが、チューニングされたエンジンと相まって、ND型ロードスターがこれまでにないほど優れたクルマに仕上がっている。
適正なタイヤサイズのおかげで、グリップ力とパワーとの黄金比が成り立っている。ドライバーの意のままに、グリップを活かし切るか、パワーで押し出すか、選択できるだけの精度が備わっている。
BBR GTi MX-5 スーパー220は、運転を愛する人が求めるすべてを、1台に融合させたといっても良い。手頃な値段も含めて。
BBR GTi MX-5 スーパー220のスペック
価格:2682ポンド(38万円・エンジンチューニングのみ)/約2万8500ポンド(407万円・ベース車両込み)
全長:3915mm(標準モデル)
全幅:1735mm(標準モデル)
全高:1230mm(標準モデル)
最高速度:249km/h(予想)
0-100km/h加速:6.0秒(予想)
燃費:-
CO2排出量:-
乾燥重量:1188kg
パワートレイン:直列4気筒1998cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:224ps/7800rpm
最大トルク:22.9kg-m/4350rpm
ギアボックス:6速マニュアル
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