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巨大なキドニーグリルはBMWの新たなチャレンジ

掲載 更新 11
巨大なキドニーグリルはBMWの新たなチャレンジ

BMWの新たなチャレンジである大型縦長のキドニー・グリルが話題のミドルクラスクーペの4シリーズ。直6エンジンを積んだ、“Mパフォーマンスモデル”と呼ばれるスポーティグレードのM440iで、2世代目となるクーペを試した。

縦長へと回帰したキドニー・グリル

外観のみならず中身で勝負に出たボルボR-デザインの進化を見逃すな!

新型4シリーズの巨大化したキドニーグリルをみて、BMW AGに在籍する日本人デザイナーの永島譲二氏の言葉を思い出した。実は以前、永島氏にキドニー・グリルのないBMWは考えられないのか尋ねてみたことがある。

BMW AG. For Editorial Use only. For any other purpose contact Fabian Kirchbauer mail@fabiankirchbauer.com「まず大前提としてBMWに見えなければいけない。説得力のある代わりになるものができるのであればもちろん歓迎します」と穏やかな口調で答えてくれた。もちろんそういった模索は過去に幾度も行われてきたという。その言葉はすなわち、キドニーの代替となるものを見つけることは至難の業であることを意味しているように思えた。

Editorial Use onlyキドニー・グリルを初めて採用したモデルは1933年に登場した、BMWとして初のオリジナル4輪車「303」だ。当時、グリルといえば縦に大きな1枚ものが一般的だったが、他車との差別化を図るために2分割したことが始まりだったという。ちなみにキドニーは英語で腎臓の意味だ。

基本的に縦長のデザインで変遷をたどっていたキドニー・グリルが、もっとも小さく、限りなく四角に近づいたのが1978年に誕生した、初のMモデル「M1」だった。ジウジアーロがデザインを手がけただけあって、キドニー・グリルがなければ、BMWというよりはイタリアンスーパーカーのようだった。ここでもキドニー・グリルの重要性を再認識したはずだ。

初めて横長のデザインを採用したのが、1986年にデビューした2世代目E32型7シリーズだった。これをきっかけにキドニー・グリルは横長のデザインが定着する。巨大化のきっかけは2015年にデビューした第6世代のG11型7シリーズだ。大型化はデザインのためのみならず、エンジンやブレーキの冷却のために空気を取り入れる必要がない時には、電動でグリルを閉じて空気抵抗を低減する“アクティブ・エア・ストリーム”という機能を盛り込むためでもあった。

BMW AG. For Editorial Use only. For any other purpose contact Fabian Kirchbauer mail@fabiankirchbauer.comそして2020年、誕生から約90年を経てキドニー・グリルはふたたび縦長へと回帰した。この大型縦長キドニー・グリルは2019年のフランクフルトモーターショーで披露された4シリーズのコンセプトモデル「コンセプト4」で提示されていたもので、それが市販モデルにもそのまま採用されたというわけだ。

前置きが長くなってしまったけれども、こうした背景を知れば新しい4シリーズの顔つきにも少しは合点がいくだろう。

Editorial Use only心の機微に触れるような6気筒のフィーリング

試乗車は、「M440i xDrive」だった。これは標準モデルとMモデルのM4とのあいだを埋める“Mパフォーマンスモデル”と呼ばれるスポーティグレードだ。Mモデルがサーキット志向であるのに対して、こちらは最上級公道仕様という位置づけになる。

パワートレインは最高出力387ps、最大トルク500Nmを発揮する3リッター直列6気筒ターボエンジンに8速ATを組み合わせ、四輪を駆動する。なめらかに吹け上がる6気筒エンジンに思わず感嘆する。やはり4気筒では出せないフィーリングがある。そしてアクセルに対する追従性もいい。ツインスクロールターボチャージャーは、シングルタービンながらも精緻な制御によって低回転域からターボラグを感じさせることなく意のままに加速してくれる。さらにアクセルペダルに力を込めれば、回転感によりきめ細やかさが増していくようだ。とにかく気持ちがいい。こういった心の機微に触れるような感覚はおそらく電動モーターでは味わえないだろうとも感じた。

ボディサイズは、全長4775mm、全幅1850mm、全高1395mm、ホイールベース2850mm、前後トレッドは1580/1590mm。これを3シリーズの「M340i xDrive」と比べると、全長4720mm、全幅1825mm、全高1445mm、ホイールベース2850mm、トレッドは1580/1570と、ホイールベース以外はすべて異なる。リアのトレッドまで拡大されており、有り体にいえば4シリーズのほうがワイド&ローだ。

BMWの商品企画担当者に確認すると、ボディサイズを変更しているだけでなくサスペンションやメンバーなどにも補強が加えられているようで、その結果セダンよりもしなやかな乗り心地になっている。車両重量は1740kgとセダンより10kg増しになっているけれど、そんなことはまったく感じさせないほど軽やかに走る。そしてスポーツモードにすれば、ミリ単位のステアリング操作に車体が瞬時に反応する。

キドニー・グリルの歴史を振り返れば、基本的にはフラッグシップモデルである7シリーズのモデルチェンジを機に大きな変更が加えられてきた。それをあえて4シリーズで試みたのは、おそらく7シリーズで試みるにこの顔つきはあまりにも挑戦的にすぎるからという判断かもしれない。いずれにせよBMWの新たなチャレンジといえるものだ。

そうえいば先出の永島氏が、現行型のスポーツカー、Z4と8シリーズのキドニー・グリルのデザインの共通点について解説してくれた際、最後に「今後すべてのスポーツカーがこうなるのかといえばそれはこれからのお楽しみであって、この2台に関してはということですが」と意味深に話していた。新型4シリーズがBMWのスポーツカーの行方を占う試金石というわけだ。

文・藤野太一 写真・ビー・エム・ダブリュー 編集・iconic

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みんなのコメント

11件
  • i8のような小ぶりでシャープなグリルにしておけば、爆発的ヒット作になった気がする。
    グリル以外はかなりアグレッシブで洗練されたデザインだと思います。
  • このグリルはいつ見てもひどい
    BMWはどこいったんだー
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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