カローラの上にはマークXがあり、その上にはクラウンという具合で、車には車格がある。車格が上がれば、室内の広さや性能と引き換えに価格は上がる。ところがグレード選び次第で、ひとクラス差がある2台の車がほぼ同価格という例も多く、“ひとクラス上”が狙える車もあれば、逆に“ひとクラス下”の車が買い得なケースもある。同じ予算でひとクラス下の車が買い得な“下剋上車”はこの5台だ。
文:渡辺陽一郎/写真:編集部
ベストカー2018年5月26日号
廉価グレードはハリアーの魅力が乏しい
■C-HR「G」(292万9200円) VS ハリアー「エレガンス」(294万9480円)
C-HRのなかで上級グレードとなる「G」はハイブリッドとFFという組み合わせ。下位ブレードのエンジンは1.2Lターボとなる
ハリアー「エレガンス」では、ヘッドランプがハロゲンでLEDは付かず、リアゲートの電動機能も省かれ、アルミホイールの形状はそっけない。「エレガンス」には上級SUVとなる「ハリアーの価値」が乏しく、約30万円を加えて「プレミアム」を選ぶ必要がある。
ただし、これでも足りない。1580kgのボディに2Lの自然吸気エンジンでは、上級SUVとしてパワー不足だ。さらに27万円高い2Lターボ車がいい。「プレミアム」のターボ(約352万円)がハリアーの最低ラインだ。
いっぽう、C-HRの価格は、エンジンや装備を同等に補正すると、ハリアーよりも65万円安い。これが両車の「正味価格差」だ。ハリアーは内装が上質で後席も広いが、走行安定性はC-HRが勝る。乗り心地は同等か、C-HRのほうが快適だ。
こうなるとユーザーから見た両車の正味価格差は40万円が妥当で、ハリアーは25万円割高になる。
装備充実でデミオの魅力光る
■デミオ「XD ツーリング」(199万8000円) VS アクセラスポーツ「15S」(195万4800円)
デミオの上級グレードは1.5L直4ディーゼルターボエンジンを搭載、いっぽうアクセラの下位グレードは1.5LのNAガソリンエンジン車となる
デミオ「XDツーリング」とアクセラスポーツ「15S」の装備を比べると、デミオが充実して価格換算額の差は19万円だ。
エンジンはデミオが1.5Lディーゼル、アクセラスポーツは1.5Lガソリンで、この差額はディーゼルの29万円高。装備とエンジンの換算額を合計すれば48万円だ。
価格はデミオが約4万円高いから、48万円から4万円を差し引いた44万円が、デミオとアクセラスポーツの「正味価格差」になる。前述のCX-5とCX-3の「正味価格差」は36万円だったから、これより開きが大きい。
両車を比べると内装は、デミオも上質で差が付きにくく、後席はデミオが窮屈だが、アクセラスポーツも広くはない。アクセラスポーツは室内の価値が高いが大差はない。
走行性能の違いは相応にあるが、「正味価格差」は居住性の違いを含めても30万円が妥当だ。44万円の差額は大きく、デミオが買い得といえる。
N-BOXに価格以上の価値あり!
■N-BOX「GLターボ ホンダセンシング」(169万5600円)VS フィット「13G Lホンダセンシング」(165万3480円)
軽自動車ながらコンパクトカーのフィットとほぼ同価格となるN-BOX。だが、N-BOXにはクラス差を補う魅力がある
エンジンはN-BOXが660ccターボで、動力性能は自然吸気の1Lと同等だ。フィットは1.3Lの自然吸気だから、実質的にフィットの排気量が300cc多い。排気量の相場は100cc当たり2万円だから、フィットが6万円優位になる。
さらに価格はN-BOXが4万円高く、差額が10万円に広がる。ただ、これはそのままフィットが装着しないN-BOXの両側電動スライドドアの換算額になる(電動スライドドアは1枚5万円)。
つまりフィットとN-BOXの「正味価格」は同額だ。すると、荷室を含めた車内の広さ、シートの座り心地と各種アレンジなどを考えると、N-BOXが買い得になる。
値引きはN-BOXは少額だが、これは販売会社の受け取る1台当たりの粗利が少ないことを示す。言い換えればN-BOXは価格の割に価値が高い。
プリウスPHVは「割高」
■プリウス「A プレミアムツーリングセレクション」(339万4145円)VS プリウスPHV「S」(326万1600円)
プリウスPHVと同等価格になるプリウスの上級グレード。ポイントとなるのは「装備内容」だ
プリウスは最上級グレード、プリウスPHVは価格が最も安いグレード。そのため装備内容は大幅に異なる。
プリウスは緊急自動ブレーキを作動できる安全装備、後方の並走車両などを検知するブラインドスポットモニター、本革シートなど豊富に装着したグレードで、それが一番安いPHVと同等価格だ。
そのプリウスと、プリウスPHVとの装備差を価格に換算すると65万円に達する。しかも価格はプリウスPHVが約6万円高いから、差額は71万円に開く。この金額がプリウスとプリウスPHVの「正味価格差」だ。補助金を差し引いても51万円の差額が残る。
プリウスPHVは東京電力の従量電灯Bで充電すると、ガソリンを1滴も使わずモーターだけで走っても、51万円の「実質正味価格差」を取り戻すのに20万km以上の走行を必要とする。プリウスPHVは割高だ。
CX-5の2L車は価格が割高
■CX-3「XDプロアクティブ」(260万2800円) VS CX-5「20S プロアクティブ」(268万9200円)
上級グレードには、1.5Lディーゼルターボエンジンを搭載するCX-3。価格が近いCX-5の下位グレードは2Lガソリン車となる
CX-5のディーゼル「XD」では、4WDの価格が2WDよりも22万6800円高い。ガソリンは2WDが2L、4WDが2.5Lでエンジン排気量も違うが、2WDと4WDの価格差は22万6800円でディーゼルと同額だ。
つまり、CX-5はガソリンの2Lと2.5Lを同じ価格で計算している。開発&製造コストには忠実だが、一般的には排気量100ccの相場は2万円だ。
500ccの差があれば、価格に10万円の違いが通常は生じる。従って2LエンジンのCX-5「20S プロアクティブ」は、2.5L車に比べて10万円割高になる。
そして、CX-5のボディと内装の「正味価格」は、装備を補正してCX-3より36万円高い。これとエンジン価格差(CX-3はディーゼルでCX-5はガソリン)が相殺されて両車の価格が接近した。
後席の居住性や荷室容量の違いを考えると、ボディ&内外装価格差が36万円ならCX-5が割安だが、前述のようにCX-5の2Lは割高でエンジン性能が車重の割に低い。だからCX-3を推奨する。
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