スバルが誇る日本屈指の高性能スポーツカー
栃木県南部の益子町にある道の駅「ましこ」において2024年4月7日、栃木県警察による「春の交通安全県民総ぐるみ運動」の広報イベントが行われ、同県警にしか配備されていないパトカー、日産「GT-R」やハーレーダビッドソン「ストリートグライドスペシャル」の白バイなどとともに、いまや全国的に希少となった「インプレッサWRX STi」のパトカーが展示されました。
「インプレッサWRX STi」は、かつてスバルが生産していたモデルで、いわゆる「5ナンバーサイズ」といわれる小型車枠の4ドアセダンをベースに、徹底的にチューンナップを図ったスポーツモデルです。
世界ラリー選手権、通称「WRC」に参戦するために高性能化が図られた「インプレッサWRX」をベースに、メーカー直系のワークスチーム「スバルテクニカインターナショナル(STI)」がさらなる性能向上を施した、いうなればスペシャルモデル。それを交通取締用のパトカーとして調達したので、当時、運用が始まるとたちまち注目を集めました。
最初に、インプレッサWRX STiのパトカーが配備されたのは埼玉県警。2002年に交通機動隊向けとして2台を県の予算で調達しています。
その翌年、2003年と2004年に計10台が、おもに高速道路などで交通取締に用いる「交通取締用四輪車(高速II型)」として国費調達(警察庁が一括購入し、必要な都道府県に割り振る導入方法)されています。
そのため最盛期には、北は北海道から南は福岡県まで、前出の埼玉県を含めて全国11道府県でその姿を見ることができました。
しかし、配備から20年近く経過したことで徐々に退役も進んでおり、2024年現在も運用しているのは、栃木県や埼玉県など、かなり限られるようになっています。
埼玉県警の所有車とは似て非なるもの
インプレッサWRX STiは金色ホイールや大型のリアスポイラーなどが特徴ですが、それらはパトカーでも市販車そのままであったため、当時の警察車両としてはあり得ないほど、「派手な」パトカーになっていました。
なお、栃木県警の車体は当初、高速道路交通警察隊(高速隊)に配備されたため、ボンネット上に透明なバグガード(虫よけ板)を装着していましたが、のちに一般道での交通取締がメインの交通機動隊に移管されたため、バグガードは撤去されています。そのため、ボンネットにはその金具を取り付けていたボルト穴の跡が残っています。
ちなみに、埼玉県警のインプレッサWRX STiは最初から交通機動隊に配備されたため、そのような跡はありません。
ほかにも、埼玉県警の車体は県の予算で独自に調達したもののため、フォグランプやサイドバイザーを装備するなど、栃木県警の車体を含め、国費調達車にはないパーツを取り付けている点が異なります。
栃木県警というと、レクサス「LC500」、日産「GT-R」、同「フェアレディZ」、ホンダ「NSX」などのスーパーパトカーに注目が集まりがちです。
実際、冒頭に記したように今回、道の駅「ましこ」で行われた「春の交通安全県民総ぐるみ運動」には日産「GT-R」のパトカーも来ていましたが、ギャラリーの関心はそちらの方が高いように思えました。
しかし、「GT-R」は2018年に寄贈という形で栃木県警に配備された車体で、まだ6年ほどしか経っていません。残りの運用期間を考慮すると、確実にインプレッサWRX STiの方が短いです。
引退まで残された時間は?
会場で交通機動隊の隊員に色々聞いたところ、実は過去に引退といったハナシも出たことがあるのだとか。しかし、「広報車両」としての高い注目度と、4WDタイプの4ドアセダンという、この手の車両にしては比較的優れた使い勝手の良さから、更新されずに残っているとのことでした。
それでは、今後もしばらくは現役で使われ続けるのかというと、やはり配備から20年以上経っているため、不明だそう。車検は来年(2025年)5月まで残っているため、それまでは現役であるものの、その後はわからないという回答でした。
なお、高知県警などには、全国でも珍しいインプレッサWRX STIの交通取締用覆面パトカーが配備されています。
またSTiではないものの、インプレッサWRXの捜査用覆面パトカーが過去に国費で大量調達されたことがあります。こちらも金色のアルミホイールを履いた状態のため、目撃されるとSNSなどを中心に話題になることがあります。
いまだにインプレッサWRX STiは、性能もスタイリングも色あせていない1台であることは確か。イベントなどで見かけたら今のうちに写真を撮っておいたほうがよいかもしれません。
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