フルモデルチェンジした新型スズキ「スイフト」は、従来のイメージから脱却すべくさまざまなアイデアが採用された。実車を見た世良耕太がリポートする。
先代の特徴だった力強さを抑える
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先代スイフト(3代目)の購入者に、購入にあたって重視した点を訊くと、圧倒的大多数が「スタイル・外観」と、答え、続いて「走る(運転する)楽しさ」、「足まわりの良さ」という回答が続いた。スタイルと走りが高い評価を得ていることがわかった。
一方で、スイフトに興味を示したものの購入にいたらなかった人にアンケートをとってみると、「走りのイメージが強いので私には合わない」と、答える人がいた。「取り回しのいいコンパクトなサイズは自分に合っている気がするので残念」と。いかにも走りそうなエクステリアのイメージから、試乗までいたらず見送られるケースがあったという。
乗ってもらえればスイフトの良さを理解してもらえるが、乗らずにエクステリアのイメージだけで敬遠されてしまうのはもったいない……そこで新型は、「乗ってみたい!」と思ってもらえるようなデザインコンセプトにしたという。
先代から引き続き新型の開発責任者を務める小堀昌雄は、デザイナー陣に、ひと目でスイフトとわかる要素は残しつつ、先代の特徴だった力強さを抑え、フューチャリスティックであったり、新しい世代が感心を持ったりするようなデザインにしてほしいという要望を出した。さらに、車両サイズは変えず、ロー&ワイドに見えるようにしてほしいとも伝えた。インテリアは「リラックスできる空間」がテーマだ。
先代が筋肉質なスタイルだったのに対し、新型は“デジタルの世界から飛び出してきたような異質感”をコンセプトにまとめられた。デザイン手法でいえば、多面体や多角形を多用している。多角形をしたボンネットフードのパーティングラインはサイドのキャラクターラインにつながり、キャビンは浮いたようにも見える。
力強さがテーマだった先代はキャラクターラインがリヤでキックアップしていたため、通常の位置にドアハンドルを配置するとせっかくの力強さが削がれてしまうように感じられた。そこで、窓枠に縦型のドアハンドルを配したが、結果、3ドアのようにも見え、スポーティなムードを高めた。新型はサイドのキャラクターラインになじむため、通常の位置にドアハンドルを置いている。窓枠にドアハンドルを置くことがスイフトのアイデンティティというわけではない。全体のコンセプトありきだ。
先代スイフトのインテリアはエクステリアと同様にスポーティにまとめられていた。メーターは砲弾タイプ。センターの空調吹き出し口もエアコンの操作系もメーターと同様、丸を反復したデザインだった。新型は“新しく見える”ことも重視し、丸の反復をやめ、リラックスできる機能的な空間を目指した。
先代はドアが薄く感じるきらいがあったので、新型は守られ感を表現しようとした。ライトグレーの3Dテクスチャーは前から後ろにかけて均一なパターンとせず、模様のサイズやばらけ方を工夫してハンドメイドっぽい表情が出るようになっている。模様が深すぎるとごつく感じるし、浅いとべったりするのだそうで、絶妙なさじ加減とするのに苦労したという。
タッチ操作式のセンターディスプレイやエアコンの操作スイッチ類は先代で5度ドライバー側に傾いていた。新型は角度を強くし8度になったが、使い勝手のためである。離れた位置にあるスイッチにも手が届きやすくするためだ。運転席に座ってみると、ほどよい囲まれ感こそあれ、圧迫感はない。
「スイフトは高級な靴になってはいけないと思っている」新型スイフトの開発が本格的に始まった2018年~2019年頃の世の中は電動化まっしぐらだった。高出力の走行用モーターを備えたストロング・ハイブリッドやプラグイン・ハイブリッドを超えて、電気自動車でなければクルマではないみたいなムードだった。スイフトの開発陣は当時、そう感じていたという。
でも、スイフトはあくまで“下駄がわり”である。もう少し上品に表現すればサンダルだ。「スイフトは高級な靴になってはいけないと思っている」と、小堀は言った。オルタネーターをISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)に置き換えて減速時の運動エネルギーを電気エネルギーに置き換え、電装品の電力消費を補って燃費向上を図るマイルドハイブリッドの設定はあるが、走行用モーターを搭載するストロングハイブリッドは選択しなかった。そんなことをすれば高級な靴になってしまうからだ。
エンジンだけで頑張ると決めたからといって無策を決め込んだわけではない。エンジンは新開発だ。先代は1.2L直列4気筒自然吸気エンジンを積んでいたが、新型はおなじ1.2Lの排気量(厳密にいえば45cc少ない1197cc)ながら気筒数を減らし、3気筒とした。気筒数を減らしたことにより、機械抵抗損失や冷却損失が減って効率が高くなる。燃焼改善と合わせ、無駄な燃料の消費を抑えられるので、燃費が良くなるというわけだ。
CVTは先代スイフトより1.9kg軽量化し、燃費性能に貢献。スズキの国内販売で初めて5速MTを設定したのもニュースだ。マイルドハイブリッドはエネルギー回生量を増やしており、エンジン/CVT/マイルドハイブリッドの3つの技術で高い燃費性能を実現している。「お求めやすい価格を維持しながら、採用できる技術は採用し、環境性能としてやれることはやろう」と、意欲的に取り組んだ。
燃費を向上させるために空力も頑張った。できるだけ空気抵抗の小さなカタチにしたい。“カッコイイのが一番”であるが、一度まとまったデザインを空力のためにばらし、デザインとバランスが取れるようチューニングを施したという。しんどい作業だったというが、その甲斐あり、胸を張れる燃費性能を実現している。
エクスエリアカラーは新色を2種類用意した。ひとつはフロンティアブルーパールメタリックで、通常は顔料とクリアの2層とするところ、顔料2層+クリアの3層とし、深みを出した。実車で確認したが、明らかにひとクラス上の質感である。実はこのブルー、スズキのコーポレートカラーであることもあり、2020年に迎えた創立100周年の記念に開発を進めた色という。それだけ気合いが入っているということだ。
もうひとつの新色はクールイエローメタリック。緑がかった淡いイエローだ。新型スイフトはZ世代をメインのターゲットに据えており、デジタルネイティブの彼ら、彼女らのセンサーに反応するよう、「クールでミステリアスな色を狙った」という。
裏話をすると、開発陣はフロンティアブルーパールメタリックを遠州灘の海の色になぞらえて「遠州ブルー」、クールイエローメタリックは牧之原の名産である茶の若葉になぞらえて「牧之原グリーン」と、呼んでいたという。いかにも浜松に本拠を置くスズキらしいネーミングだし、昭和の老人にはこっちのほうがしっくりくるが、グローバルで通用するネーミングの縛りがあるため不採用(残念!)。
“走りのイメージが強かったので力強さを抑えたエクステリアデザインにした”と、聴くと、気になるのは走りだろう。抑えたデザインに合わせて骨抜きにされてしまったのではないか……と。
心配は無用。実車での確認は公道試乗ができるタイミングを待ちたいが、小堀によると「路面にピタッと張り付いて腰砕けにならず、フロントがステアリングの動きに追従して気持ちよくコーナーに入っていけるよう仕立てた」と、話す。見た目がクールになっただけで、“走りのスイフト”のアイデンティティを失ったわけではなさそうだ。
文・世良耕太 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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