日本車の選択肢がわずか11モデルにまで縮小したセダンの現状
「マツダ6(アテンザ)」、トヨタ「カムリ」、スバル「インプレッサG4」、そして日産「フーガ」……。これらモデルの共通項がすぐに分かった人は、きっと自動車事情通に違いありません。
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それらに共通するのは、ここ2年ほどの間に「日本での販売を終了したセダン」だということ。日本市場におけるセダンのマーケットはどんどんシュリンクし、それに伴いラインナップも削減され、今では絶滅危惧種に近い存在となってしました。
2024年11月時点で、日本で新車販売されているセダンはトヨタが「カローラ」、「カローラ アクシオ」、「クラウン セダン」、「MIRAI」。レクサスが「LS」、「ES」、「IS」。日産とホンダとスバルとマツダが「スカイライン」、「アコード」、「WRX」、「マツダ3セダン」とそれぞれ1モデルずつ。つまり、わずか11モデルしかありません。ちなみに、2019年から2021年にかけては、一気に8モデルのセダンが消滅しました。
かつてセダンは、日本で販売される乗用車の中心的存在で、1990年代中盤頃まではこの世の春を謳歌していました。その間、「レガシィ ツーリングワゴン」を始めとするステーションワゴンなどの流行はありましたが、各ブランドの販売の主戦はあくまでセダン。“それ以外のボディタイプ”を選ぶ人はなんらかの理由があってこそ、という時代が長く続いていました。
では、最近はどうして「セダンを選ばない人」が増えたのでしょう? 結論からいえば、それは「セダンを選ぶメリットがなくなった」からです。
例えば、荷物を積むならセダンよりもステーションワゴン(こちらも人気は下降気味ですが……)やSUV、そしてミニバンの方が断然便利です。乗り降りだって、セダンよりもミニバンやSUVの方が楽です。
また、タイヤが大きい分、ロードクリアランスも大きいSUVは、駐車場へ入る際などの小さい段差を気にしなくてもいいといったメリットもあり、そのストレスフリーな魅力を知ってしまうと、セダンなど背の低いクルマには戻れないほど。
加えて、SUVは側面から衝突された際、ドアではなくサイドシルで衝撃を受け止められる可能性が高いことから、安全性に優れるという長所もあります。
さらに、ミニバンが“ファミリーカーの定番”という時代に育った世代は、自分でクルマを買おうとする場合、あえて室内の狭いセダンを選ぶ理由を見つけられないでしょう。一度、室内の広いクルマやスライドドアつき車両の便利さや快適さを知ってしまったら、もうセダンには戻れないのです。
●セダン推しの人は今となってはマイノリティな存在
1976年生まれの団塊ジュニア世代で、セダンを乗り継ぐ家庭で生まれ育ち、クルマ好きを自称する筆者(工藤貴宏)も、振り返ってみると、自身ではワゴンやミニバン、SUV(それにスポーツカー)を買ったことはありますが、セダンは買ったことが一度もありません。
もちろん、「セダンにもメリットはある」と主張する人はいるでしょう。しかし、そういう意見は、今となってはマイノリティといわざるを得ないのです。
確かに、重心の低さに起因するフットワークのよさや、移動中の乗員の体の“揺れ”の少なさなど、物理的要因によるセダンのメリットはあります。しかし、クルマ全体の動的性能が底上げされたことで、ミニバンやSUVとの差は極めて小さくなり、一般的な人にとっては「走りの悪さなど気にならない」、「それよりも便利な方がいい」という状況になっています。
「それでも、やっぱりセダンがいい」というこだわりも理解できますが、世の主流は別のジャンルにシフトしているのです。
こうした状況、実は日本だけではありません。かつてセダンが主流だったアメリカ(北米)も同様。シボレー、フォード、クライスラー、そして、それらの上位ブランドであるキャデラック、リンカーン、ダッジなどからも、セダンはほぼ消えました。各ブランドに1台存在すればいい方で、もはや風前の灯といった状況です。すっかりSUVに駆逐されてしまったのです。
とはいえ、アメリカへ行って意外に感じるのは、そんな状況にもかかわらず、比較的多くのセダンが街を走っていることです。アメリカンブランドのセダンは壊滅的ながら、トヨタ「カムリ」やホンダ「アコード」といったベストセラーカーなど、アジアブランドのセダンはまだまだメジャー。また都市部では、メルセデス・ベンツやBMWといった欧州プレミアムブランドのセダンもそれなりに見かけます。
「カムリ」や「アコード」を含めたアジアブランドのモデルがそれなりに売れている理由は明白。SUVに比べてコストパフォーマンスが高いからです。セダンの魅力というよりも、コスパのよさから選ばれているのです。一方、現地で見かける欧州セダンに関しては、こだわりのモノ選びといっていいでしょう。
欧州も、優れた高速性能が求められるドイツなど、国によっては日本に比べてまだ多くのセダンを見かけます。しかし、SUVに市場を浸食されているのは間違いありません。欧州は元々、日本ほどセダン偏重の市場ではなく、ハッチバックも多く売れていましたし、ステーションワゴンも昔から定番アイテムになっていました。
ちなみに、今、セダンが好まれている地域といえば、まずは中国。それから、一部の東南アジアや中東などが挙げられます。しかし、それらの地域でも、今後はSUVの勢力が増していくと考えて間違いないでしょう。
高性能なスポーツセダンであれば生き残れる可能性が
ではこの先、セダンの生き残る道はないのでしょうか?
これだけははっきりと断言できますが、もはや普通の乗用車として生き残る道はありません。理由は、乗用車として考えた際、セダンよりも他のボディタイプの方がメリットが多いからです。
人を乗せるならミニバンの方がいいし、日常使いでもSUVの方が楽ちん。また日本では、以前に比べて小さなクルマ(軽自動車やコンパクトカー)の販売比率が増えたことも、セダン離れに影響を与えたのは間違いありません。
しかし、そんな逆風下でも、セダンがしっかりと生き残れるジャンルはありそうです。それは、スポーツセダン。現在でいえば、レクサス「IS」や日産「スカイライン」、スバル「WRX」、そして、一部の欧州プレミアムセダンなどがそれに該当するでしょう。
セダンにこだわる人の多くがその理由として挙げる「低い重心に起因する、SUVやミニバンでは味わえない運動性能」が、スポーツセダンにとっては大きなメリットとなるからです。スポーツセダン市場はニッチですが、根強いファンがいるマーケットといえます。
とはいえ、当然のことながら、スポーツセダンには高い走行性能が求められます。「あえて選んでもらうための理由」を考えると、「コーナリングが気持ちいい」とか「思いどおりのハンドリング」というだけでは商品力が弱く、やはり「ハイパワーエンジンによる強力な加速性能」が必要不可欠となるでしょう。それらをクリアできるのは、まさに「スカイライン」や「WRX」、さらにはAMGやBMW Mの各セダン、というわけです。
その分、必然的に価格は高価となり、性能はどんどんエスカレートしていくことでしょう。そうなると価格は、さらに上がります。
結果的に、スポーツセダンは普通の人には手の届かない存在となっていく可能性もあるわけです。すでに、AMGやBMW Mのスポーツセダンはそれに近い状況ですし、「スカイライン」や「WRX」も同じような状況となりそうです。
いずれにせよ“セダンのニッチ化”は、もう誰にも止めることができないでしょう。
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みんなのコメント
今やセダンは「カッコイイから」でいいでしょ。
確かに記事のようなフットワークの良さを感じてたけど、最近のSUVはフットワークも良い笑
本当はクーペに乗りたいけど、実用性も欲しい。でもカッコイイと思う車に乗りたい。だからカッコイイと思えるセダンに乗る。
「なんじゃあ? 今まで載ってたのはトラックだったか?」
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「なんじゃあ? 今まで載ってたのはトラックだったか?」