新型「レンジローバースポーツ」に追加された高性能バージョン「SV」の性能が、とにかくスゴい! スペインで試乗した大谷達也がリポートする。
SUVとは思えぬ高性能
“スーパー”なステーションワゴンだった──新型アウディRS6アヴァントパフォーマンス試乗記
最高出力が600psを超え、価格は2000万円オーバーのハイパフォーマンスなラグジュアリーSUVがランボルギーニ、アストンマーティン、ポルシェ、BMWなどからリリースされている。
それらはSUVであることが信じられないほど優れた動力性能やコーナリング性能を誇るいっぽうで、そうした高性能振りを声高に訴えるかのようにさまざまなエアロパーツが装着されているケースがほとんど。
もちろん、ウチに秘めたパフォーマンスをデザイン面に反映させるのは自然なことだが、ラグジュアリーカーを乗り継いできた手練れのなかには「パフォーマンスは高くても、外観は品がよくて、できれば乗り心地も快適なほうが嬉しい」という欲張りなファンもいるはず。そういった“ラグジュアリーSUVの上級者”に是非ともお勧めしたいのが先ごろ発売されたレンジローバースポーツSVである。
ひと世代前のレンジローバースポーツにもSVRというハイパフォーマンス版が設定されていたが、現行世代では“各モデルの個性をより強調したグレードにSVの名を与える”との方針に従い、もっともダイナミックな性能を誇るモデルをレンジローバースポーツSVと呼ぶことになった。
事実、レンジローバースポーツSVは、レンジローバーファミリー史上、もっともパワフルなエンジンを搭載する。最高出力は635ps、最大トルクは750Nmに達し、0~100km/h加速はたったの3.8秒でクリア。最高速度も290km/hに到達する。
それらとともに注目されるのがコーナリング性能の高さで、最大横Gは先代の0.9Gを大きく上まわる1.1Gにもなる。しかも、これは標準装備されるミシュランのパイロットスポーツオールシーズンというオフロード走行にも対応したタイヤを装着した場合のデータ。もしも、オンロード性能をバランスよく満たしたパイロットスポーツS5に履き替えれば、サーキットでは最新のスーパースポーツカーにも匹敵する1.3Gを発揮するという。
6Dダイナミック・エアサスペンションの威力今回は、スペインのアルガルヴェ・サーキットで、この“1.3Gの世界”を体験してきたので、報告したい
SVの車高は標準モデルに比べて10mm低められているが、それでも全高は1800mmを優に越す。これは、レンジローバーに相応しい優れたオフロード性能を実現するためのものだが、それにもかかわらず、レンジローバースポーツSVはサーキットでのハードコーナリングでも安定した姿勢を保ち、まったく不満がない。
しかも、タイヤが路面を捉えている様子がステアリングなどから克明に伝わってくるので、タイヤが持つグリップ力を最大限に引き出しながらコーナリングすることも容易。さすがにスポーツカーのようにヒラリヒラリと向きを変えることはできないものの、この絶対的なコーナリング性能はSUVとして驚異的といっていい。
なお、レンジローバースポーツSVのメーターパネル内には前後左右にどれだけの加速度が発生したかを示すGメーターが装着されているが、私のドライブでも最大値は1.3Gを超えていた(サーキット走行時はパイロットスポーツS5を装着)。
それとともに驚かされたのが一般道での乗り心地が快適な店で、4輪のサスペンションがしなやかに伸縮して路面からの振動を巧みに吸収する様は、スタンダードなレンジローバースポーツと比べてもまったく遜色がないほど。その心地よさは、数あるハイパフォーマンスラグジュアリーSUVのなかでもトップクラスに位置する。
傑出したコーナリング性能と快適な乗り心地を両立している最大の秘密は、レンジローバースポーツSVで初めて実用化された「6Dダイナミック・エアサスペンション」にあるといっていい。
これはサスペンションダンパーの油圧回路を前後左右の4輪で関連づけることにより、ボディの姿勢をフラットに保つ効果を生み出すもの。このため、コーナリング時のロール(ボディが横向きに傾くこと)を防ぐアンチロールバーが不要となり、これが乗り心地をさらに改善するのに役立っているという。こうした考え方はマクラーレンのロードカーに採用されている「プロアクティブ・ダンピング・コントロール」と、よく似ているが、マクラーレンのものとは油圧回路を連結するレイアウトに違いがあるそうだ。
BMWと共同開発した4.4リッターV8ツインターボエンジンもまた、高性能と快適性を両立したものといえる。前述したとおり、レンジローバースポーツSVの0~100km/h加速タイムは3秒台とまさにスーパースポーツカー並みで、どんな回転域からも即座に強大なトルクを生み出すレスポンスのよさを誇っているものの、どれだけアクセルペダルを深く踏み込んでも耳をつんざくようなエンジン音を響かせることはなく、キャビンは心地いい静けさに包まれる。こうした品のよさもまた、レンジローバーファミリーの一員に相応しいも。
それは内外装のデザインについても同じこと。ハイパフォーマンスモデルだからといって派手なエアロパーツをつけることなく、品のいい佇まいを守っているあたりは、アンダーステイトメント(控えめなこと)を旨とするイギリス紳士に通じる姿勢。
この点にこそ、レンジローバースポーツSVの最大の魅力があるといって間違いないだろう。
文・大谷達也 編集・稲垣邦康(GQ)
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