輸入車の中でも特に国内マーケットで重要なモデルは、日本独自のCMやキャンペーンを打ち出すという。多くの人へクルマの魅力を伝えるために、アイディアを生み出し実行する−。そんな仕掛け人たちの声に耳を傾けた。Part2はAudiの池田マーク信治氏である。
“人生を最大限に楽しむ”というコンセプトで様々なアングルから若い世代へアプローチ
話題を呼んだキャンペーンの仕掛け人 Part1「BMW・井上朋子氏」
往年のアウディ・スポーツクワトロをオマージュしたスタイリングに、都会的でありつつも利便性の高いパッケージングが、巧みにアウディらしいインテリジェンスと同居する。見事なまでにクルマ好きに刺さりそうなアウディA1スポーツバック(以下、A1)がデビューを果たした。
自動車雑誌的には正統派であっても、世に訴えられた表現は少し意外だった。「この世のすべてを楽しみつくせ」というダイレクトなメッセージと共に全面に打ち出されたのは、とにかく若者っぽいイメージだった。HYPEBEAST(ハイプビースト)などのライフスタイルメディアとのコラボを通して、ミュージックやファッションのコンテンツを展開した。さらにBMXなどのエクストリームスポーツ、気鋭の写真家などとコラボするフリートラベルを含めて、大きく4つに括られたカルチャーを抱えて、新型A1は日本市場へと飛び出していった。それはクールでインテリジェントで、どことなく控え目なようでもあった従来のアウディの広告とは趣を異にするアプローチだった。
「A1は、様々な方へのエントリーモデルですが、今回は若者への訴求が世界的なテーマのひとつでした。先述の4つの分野で活躍されるメディアやキーパーソンにご協力いただいて、A1を訴求したいと考えました。世界観の演出ではストリートカルチャーを用いました」
一連の仕掛け人を務めた池田マーク信治氏はそう述べる。若者から芽生えたストリートカルチャーは多岐にわたるものの、最初は若者たちが遊んだり身につけたものが、次第に世の中全体を巻き込むカルチャーとして認められていったところは共通している。
だからこそ2019年12月1日に実施された日本導入記念イベントは渋谷だった。渋谷は今や「SHIBUYA」として世界中の若者が注目する街であり、今も再開発が進んで新陳代謝している。かつ拠点となった渋谷パルコは、イベントの9日前にリニューアルオープンされたばかり。これほど瑞々しくて刺激的な場所なんて、アウディが打ち出すA1像にぴったりだ。他にもスクランブル交差点の象徴である6面ビジョンをCMでジャックしたり、9台のA1が渋谷界隈をパレードランしたり、またインターFMで6時間の特別生放送をするなど、渋谷がA1に染まった。
「A1の直接的な購買層のみならず、広く若年層へ訴えかけて興味を抱いてくれたら、この上なく嬉しいです。将来のアウディユーザーを創り出して、ブランドを発展させることもこのキャンペーンの狙いでした」
ストリートカルチャーの多くは、表層だけの派手さや前衛的な雰囲気だけでなく、その裏地に伝統がひっそりと隠されるところがポイントだ。それはある意味A1と同じ。この新しい感性を伴って、今、新しいアウディが走り出した。
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