Honda独自の2モーターハイブリッドシステム「e:HEV(イーエイチイーブイ)」が今、急速な進化を遂げようとしています。その立役者は、高められた効率を「愉しさ」に結び付けてくれる次世代テクノロジーの数々。まずは、さっそくの市販化が期待できる「Honda S+ Shift」を、新型プレリュードプロトタイプのテストドライブでチェック!本当の意味で「スマート」な次世代スポーツクーペの、魅力の片鱗を窺うことができました。
たとえハンドルを握らなくても、気分はしっかり盛り上がる
まずはなぜか、次期プレリュード プロトタイプの後席インプレッションからお届けしましょう。身長175cmの担当編集には、やっぱりヘッドクリアランスが足りません。聴けば、だいたい160cmくらいまでの人なら、ちゃんと座れます(同乗した開発メンバー談)とのこと。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
なるほど、確かに足もとに窮屈感を覚えることはありません。テストコースという比較的路面状況の良い環境でも、なかなかに乗り心地は良好。キツめのバンプはさすがに腰(と頭をぶつけた)に来ますが、基本的にしっかり使えるリアシート、と言えそうです。
ちょっと限定的ですが・・・小学生くらいのお子さんがふたりいるけど、新型プレリュードが密かに欲しいもんだから、奥さんをどう説得しようか悩んでます。というパパ、ぜひ参考にしてめげることなく貫徹してください。その価値はきっとあります。
なにより運転していなくても気分を盛り上げてくれるのが、調えられた「音」成分がもたらす滋味でしょう。エンジン回転数と同期したエンジン音を聴かせてくれる「アクティブサウンドコントロール」は、電子サウンドとのミックスであることがわかっていても、ちゃんと気分を高揚させてくれます。
ちなみに「タイプS(インテグラ?)」の直4ユニットのサウンドを「ベース」に「迫力のある音」を演出しているようですが、もしかするとこれ、他の音にコントロールすることも可能なのではないでしょうか? 個人的にはZCとかF20Cを所望。チームの許認可さえ得られれば「RBPTH002」の感動すら疑似体験することができるやもしれません。あくまで妄想ですが。
というワケで、諸事情によりハンドルを握ることはかなわなかった次世代プレリュード。Hondaの流儀に則ったハイブリッドシステムの熟成が生む「五感に響く技術」の片鱗、ちょっと窮屈だけど意外に快適なリアシートでしっかり味わわせていただきました。
それは同時に、単なる「ハイブリッド」という括りではなく、「ICE(内燃機関)」に関わるモノづくりの革新を、ホンダというブランドがまったくあきらめていないことを実感させてくれる体験でもありました。
電動化の時代に向かいながらも、主役はエンジンだったりする
ここ数年、多少の足踏みこそあるものの確実に訪れることになるバッテリーEVの時代に向けて、さまざまなメーカーが戦略を明らかにしています。中にはEV専業ブランドへの早期の転換を目指して、内燃機関を中心とするパワートレイン技術の新規開発凍結を明言しているメーカーもありました。最近は一部で「ブレ」も見うけられますが。
もちろんホンダも、その潮流に乗り遅れるわけにはいきません。「Honda 0 TechMeeting」と名付けられた全く新しいEVシリーズを中心に、着実な電動化シフトを組んでいることは確かです。
確か・・・なのですが今回、宇都宮のプルービンググラウンドで開催された新技術取材会「Honda e:HEV Biz&Tech Workshop」での主役は、やっぱり「エンジン」なのでした。改めて思うのですが、ホンダに限らず日本の自動車メーカーって、なんだかんだ言いながら好きなんですよね、ICEが。
公開されたのは本格的なEV時代への移行期に向けて開発が進められている、技術群です。まずは数年のスパンを見据えて、ハイブリッド車に対する需要に応えるメニューが揃いました。
中でも試乗した次期プレリュード(コンセプト)は、真っ先に市販化されるテクノロジーを搭載した直近未来形。2025年後半から2026年初頭にかけての発売開始が、欧米市場向けにアナウンスされているテクノロジーです。
搭載されているe:HEVユニットは、直噴アトキンソンサイクルDOHCエンジンに、2モーターを平行軸に配置した電気式CVTを搭載する、いわゆる「SPORT e:HEV」の一部改良版です。注目すべきはそこに組み合わされた新しいシフトコントロールのテクノロジー「Honda S+ Shift(ホンダ エスプラス シフト)」です。
もともとダイレクト感では定評のある「リニアシフトコントロール」の進化形ですが、およそCVTのイメージとはかけ離れた「さらなる切れ味」を徹底的に追求しています。アップシフト方向での応答性は、ホンダ曰く「世界最速」・・・とくに、パーシャルからアクセルを踏み込んだ時の初期応答のシャープさが大きく向上している、とのこと。
加えて、ブレーキ減速時などのシフトホールド状態から再加速までの間、最適なエンジン回転数をキープしながら加速用発電に向けたタメを持たせる制御を追加。いざアクセルオン!のタイミングで「おいしい領域」を最大限に使い切ってのダイレクトかつ圧倒的な加速レスポンスを実現しているそうです。
運転手役のモータージャーナリスト 河村康彦氏が、周回を重ねるごとにペースを上げまくっている様子をリアシートから眺めていると、ハンドルを握っていなくてもその愉しさは十二分に伝わってくるような気がしました。実際に握っていたのは、ややべたついた感のある手汗でしたが。ホントにご機嫌な感じで。いや、うらやましい。
おいしい領域を拡げたら、いろいろと気持ち良くなる
今回のワークショップもさまざまな新情報がてんこ盛りでしたが、ホンダの内燃機関に対する愛情がひときわわかりやすく伝わってきたのが、新規開発中の1.5Lと2.0Lの直列4気筒ユニットの革新ぶりでした。直噴アトキンソンサイクルの高効率化とともに、フロントドライブユニットおよび統合冷却システムを刷新、従来比で10%以上の燃費向上を目指しているといいます。
全領域における理論空燃比の実現で、出力性能の向上と低燃費を両立・・・と説明してもなかなか難しいのですが、あえて整理して解説するとするなら、新しいホンダのエンジン群の魅力は次の3点ほどに集約されるような気がします。
ひとつは、「Honda S+Shift」に関わるもの。エンジンが高い効率を発揮できる「おいしい領域」を拡げて、そのゆとり分をシフトコントロールの最適化、高効率化に活かすことで生まれるダイレクトな駆動とシフトの実現です。
新開発の1.5Lユニットでは現行比で約40%、2Lユニットでも約30%、高効率領域が拡大されています。結果として、あらゆるシーンでの瞬発力が大幅に向上することになるでしょう。さらに高レスポンスの発電モーターによって変速をアシストすることで、ステップシフトのリズムが格段に気持ち良くなる可能性を秘めています。
ふたつめは、ドライブユニットの高効率化とパッケージングそのものの小型化がもたらす恩恵です。急速燃焼の採用とNVが改善されているエンジン本体はもとより、エンジン直結のトランスミッション(1.5L用は1軸、2L用は2軸)は非常にコンパクトにまとめられながらも、フリクションを低減、伝達効率も改善されています。
効率向上の要と言える電動系に関しても、着実な改善が見込まれます。たとえば2016年からホンダが世界に先駆けて取り組んできた重希土類(レアアース)フリーの電気モーターは、独自開発の新形状によって10%もサイズダウン。意外に嵩張るPCU(パワーコントロールユニット)は、リア駆動用モーターのインバーターまで内蔵しながら配線の工夫で小型化を徹底し、きっちりフロント部にまとめられています。
パッケージングという面では、バッテリーパックの小型高出力化も重要なポイント。全高、全長ともに最小サイズ化されながら、剛性パーツとしての機能も兼ね備えています。後席下に配置されたことで、居住性、積載性を損なうことなく快適で使いやすいユーティリティを実現しました。部品の共用化によるコストダウンも、図られているそうです。
「有段ギア」のリズムの先に、ちょっとアナログな快楽が見えてくる
そして3つめ。実はもっとも期待したいのが、次世代e:HEVシステム搭載モデルに採用されるという電動AWDユニットなのでした。モーターユニットは、「0シリーズ」開発の中で熟成が進められた小型・高出力のシステムを採用して、コスト面でのアドバンテージも稼いでいます。
従来の機械式AWDに比べて、前後駆動力の配分制御が格段に進化していることがまずは注目したいポイント。向上した最大駆動力と相まって、高精度かつ素早いモータートルク制御を実現しているとなれば、スポーツ領域でのドライバビリティの向上が大いに楽しみです。
特徴的なのは、加速時に後輪への駆動力配分がアドオンされていること。また減速時の車両制御コントロールまでこなしているそうです。ライントレース性や操縦安定性の向上もさることながら、スポーツ走行で急減速をかけるシーンなどでは、フロント側の沈み込みにあわせてリア回生を効かせ、フラットな姿勢を保ってくれます。
一方でコーナリング時には、過度に後輪への配分を上げ過ぎないことで、内輪荷重の成分を減らす方向でセッティング。挙動変化の少ない安定した旋回姿勢を追求しています。
この新しいAWDは、ミドルクラスの新型モデルを想定して開発された、次世代プラットフォームに対応して開発が進められているもの。ただ固めるのではなく、引き締まった動きを生むための「しなりを考慮した」剛性マネジメントが徹底されていることが、ポイントです。
ロードノイズ低減や衝突性能を向上させた新しいプラットフォームは、モジュール構想に基づいた優れた共用性を備えた上で、個性的な商品ラインナップを自在に作り分けるフレキシビリティも備えています。
e:HEVワールドの広がりは、もしかすると想定を超える
ワークショップの中でホンダは、e:HEVシステムとプラットフォームの刷新による「圧倒的な戦闘力を備えた商品群」を、順次市場に投入する計画も明らかにしています。少なくともここ数年は、その戦闘力向上には常にICEの存在が垣間見えるような気がします。
ちなみにHonda S+ Shiftを紹介するオフィシャルリリースには、「エンジンとモーター制御による有段変速フィーリング」という見出しとともに、「まるで有段ギアを変速したようなドライブフィールを実現します」と謳われています。
「有段ギア」という表現が、なんとも味わい深い印象。そのあたりからもまた、内燃機関(と書いてアナログと読む?)大好き!感が伝わってくるのではないでしょうか。こだわりからもたらされる「恩恵」は、まさに、華やかな「序章(プレリュード)」の先にすでに見えているのかもしれません。
ところで・・・・ちょうど、この原稿を書いているたった今(2024年12月23日18時頃)、日産とホンダ、三菱自動車が「経営統合」に向けた「3社協業形態の検討に関する覚書を締結」に関する記者会見が開催されています。
そこで記者の質問に答えるカタチで本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役社長 三部 敏宏氏が、「たとえば」の話として、統合のシナジーとして期待される「強み」のひとつとして「我々のハイブリッドが・・・」と発言しました。もしも統合が実現すれば、事業の立ち上がりはまずはホンダがリードしていく形になるといいます。
その戦略的根幹に、Honda e:HEVが重要なコアとして位置付けられていることは、間違いなさそうです。「Biz&Techの世界」は果たして、どこまで広がりを見せることになるのでしょうか。
[ アルバム : Honda e:HEV Biz&Tech Workshop はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
BEVに注力すべきと思いますが、無理なんでしょうね