名車クラウンエステートの名が復活した。2022年7月15日の新型クラウンワールドプレミアで登場し、ステーションワゴンからラージSUVへと大きな変貌を遂げている。
クラウンファンの中では、最も愛された派生車の一つであろうクラウンエステート。その歴史をひもときながら、新型クラウンエステートについて、今後の展望を考えていこう。
クラウン4車種&同門同士で共食い勃発か!? 名門「エステート」復活の歓喜と今後の展望
文/佐々木亘、写真/TOYOTA、奥隅圭之
歴代クラウンの大きな財産「エステート」の存在
1999年に登場した11代目クラウンに設定されたクラウンエステート(アスリート)
クラウンのワゴンモデルといえば、やはりクラウンエステートだろう。17系クラウンをベースにステーションワゴン化したこのモデルは、ステーションワゴンのイギリス英語であるエステートと名付けられた。ちなみに、エステートの登場前には、クラウンワゴンというモデルが、クラウンのステーションワゴンとして活躍している。
1999年のデビュー当時、エステートにはロイヤルサルーンとアスリートの2グレードが設定された。しかし2001年にロイヤルサルーンを廃止。その後は2007年までアスリートグレードのみで販売が続けられている。そのため、クラウンエステートというと、メッシュグリルのアスリート顔を思い浮かべる人が多いだろう。
少しやんちゃなクラウンとして、当時のセダンユーザーよりも若干低い年齢層に愛されたクルマだ。クラウンとしての質感を残しながらも、走りのグレードであるアスリートを強く意識させ、クルマとしての派手さもあった。現在も根強いファンは多く、新車購入したクラウンエステートを、現在も所有し続けているというユーザーを、筆者は数多く知っている。
クラウンエステートは、それだけ完成度が高く、また代わりになるクルマがない、唯一無二の存在でもあったのだ。
生まれ変わったクラウンエステートはどんなクルマ?
15年ぶりに復活するクラウンエステート。新型はステーションワゴンからラージSUVへ
16代目クラウンのラインナップとして登場したエステート。その内容を見ていこう。
ボディ形状はクロスオーバーよりもワゴンを際立たせた2BOXで、サイドビューはハリアーやRAV4に近い。カテゴリーとしてはラージSUVと区分された。ボディサイズは全長4930mm×全幅1880mm×全高1620mm、ホイールベースは2850mmだ(数値はいずれも開発目標値)。アクティブライフを楽しむワゴンとSUVのクロスオーバーは、シリーズの中で最も全高が高く、使い勝手が良さそうだ。
ボディサイズ以外の数値は、まだ公式に発表されていないが、エンジンや駆動方式、乗車定員がどのようになるのか、今後の情報が楽しみである。
ランクルやレクサスRXと充分に勝負できるボディサイズであり、クルマの仕上がりにも期待できるはずだ。また、既に高級SUVの雄としてハリアーがいるが、それ以上のプレミアムSUVが2023年に誕生するということになる。世界的にも人気が高いプレミアムSUV市場にクラウンエステートが入り、欧州プレミアムSUV達とどのような戦いを繰り広げるのか、今から楽しみな存在だ。
2023年 クラウン三つ巴対決&トヨタ同士の共食いが始まるのか!?
クロスオーバー、スポーツ、セダン、エステートという4種類が準備されたクラウン。そのなかでもエステートは、現在の自動車市場で最も好まれるカタチであり、大きな支持が期待できるだろう。
先行して登場したクロスオーバーの車両本体価格は435万円~640万円。エステートは、ボディサイズが大きい分、価格も少し上昇しそうだが、500万円台の前半からスタートし、800万円あたりまでの価格帯で収まれば、プレミアムSUVの中で頭一つ抜けた存在になるはずだ。
他社のライバルにはもちろん、トヨタ内のSUV争いにも独り勝ちしそうな勢いもある。現行型のレクサスRXやランドクルーザー300などが位置する価格レンジでクラウンエステートが登場すれば、現在の高級SUV市場の潮目も大きく変わりそうだ。
また、クラウン同士の争いにも注目したい。クロスオーバーに関しては、既に詳細が発表され注文を受け付けており、まずは新型クラウンの腕試しといったところか。2022年中は、クロスオーバーが先陣を切り、クラウンという存在を刷新する役割を担う。
注目したいのは、残されたスポーツ、セダン、エステートがすべて2023年の登場予定となっている点だ。どのクルマがどのタイミングで登場するかは、まだわかっていないが、毛並みの大きく違うセダンを除いて、スポーツとエステートの登場タイミングいかんによっては、先行したクロスオーバーとの三つ巴が発生することも考えられる。
ショート・ミドル・ロングといったボディサイズの違いや、2~2.5BOXというボディ形状の違いはあるが、カテゴライズはすべてがSUVだ。それぞれの登場時期や価格は変化させても、それぞれがプレミアムであることには変わりない。
クルマとしての変化には限界があり、ハリアー・ランクル・RX・NXなどのSUVを巻き込みながら、熾烈なライバル争いが始まるだろう。商品力だけでの差別化は難しく、勝負に負けたクルマは、ラインナップから消える可能性も高まってくる。
こうした争いを避けるために必要なのが「販売力」だ。これまでも、ヤリスとアクア、プリウスとカローラ、ハリアーとNXなど、トヨタ同士、そしてトヨタとレクサスで共食いが発生しそうなクルマを売り分けてきたトヨタ販売店。クラウンに関しても、販売の力で無益な共食いは阻止されるはずである。
クラウンシリーズについては、商品力や値付け以上に、「売り分け」が重要となるはずだ。看板商品であるクラウンだからこそ、メーカーから販売店を含めた「オールトヨタ」で大切に広げていきたい。新型クラウン、そしてエステートの復活には心躍るが、同時にすべてのラインナップが発売されるまで、クラウンのマーケット戦略は気を抜けないものとなる。
クラウンの4モデル同時発表は、メーカーが販売店の力を信じているからこそできた、サプライズだったのではないだろうか。魅力ある商品をより輝かせるために、世界一ともいわれるトヨタの販売技術が、2023年に炸裂する。
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シリーズで売れりゃクラウン