この記事をまとめると
■レーシングシーンにおいてはしばしばマシンが火花を散らしならが激走するのを見かける
■ブレーキングでチンスポイラー底のスキッドブロックが路面に当たって火花が出る
■アフターファイヤーはエンジン燃焼室で燃えなかったガスが空気と混ざって炎が出ている
スーパーGTでは火花散るバトルを拝むことができる
フォーミュラカーやGTカー、ツーリングカーに関わらず、サーキットを舞台にしたレース競技では、レーシングカーから火花が飛び散っているシーンを目にする機会は少なくない。
とくに世界最速のGTカーと称されるスーパーGTのGT500クラスでは、トヨタGRスープラ、ホンダNSX、日産GT-Rともに、ワイドフェンダーを持つGTマシンが、フロントタイヤの前あたりから、火花をあげながらコーナリングしているが、なぜ、火花が飛び散っているのだろうか? 日常のカーライフにおいて火花を飛び出すようなドライビングをすれば、すぐ大惨事になりそうだが、そもそもマシンは大丈夫なのだろうか?
というわけで、スーパーGTの最終戦となる第8戦の富士でGT500チームのエンジニアを直撃。TGRチームZENTセルモでチーフエンジニアを担当する田中耕太郎氏に、レーシングカーにおける火花について解説してもらった。
まず、火花のメカニズムについて、「ダウンフォースもありますが、一番多いのはブレーキングの際にノーズダイブしてタイヤがたわみますよね。その状態で、マシンがロールした際にフロントのチンスポイラーの底に取り付けているスキッドブロックが路面に当たって火花が出ています」と解説する。
さらに田中氏は「GT500クラスはチンスポイラーの底面から4mmまで飛び出てもいい……という規定になっているので、丸い円盤状のスキッドブロックをネジで固定しています。そのため、スポイラーはまったく問題ありませんし、スキッドブロックは消耗品なので、減ってくれば交換するんですど、その材質はチタンで、タイタニウムが使われています」と付け加える。
火花が散るのはタイタニウムを使っていることの証
田中氏によれば「タイタニウムは軽くて粘りがあるので、スキッドブロックの材質としては良好だと思うんですけど、私のかってな想像としては火花がキレイに散るから、タイタニウムを使ってるんだと思います。機械工学を勉強した人は火花試験をやるので知っていると思うんですけど、鉄だとあんなに火花が散らない。タイタニウムなら、キレイに火花が散るので、材質を選択した理由は見栄えも大きいんじゃないかな(笑)」とのことだ。
ちなみに、スーパーGTの富士ラウンドで火花が見えるポイントとしては、ヘアピンと100Rとなっているので、現地で観戦する際はチェックしておきたい。
また、火花ではないが、火=ファイヤーの繋がりで、マフラーから噴出するアフターファイヤーについても田中氏に解説してもらうと、「エンジンの燃焼室で燃えなかったガスがエキゾーストを通って外部に出てくるんですけど、その時に大気に含まれている空気と混ざって火が出ているという現象です」と語る。
市販モデルにおいて最近はあまり見かけなくなったが、グループA車両の三菱ランサーやスバル・インプレッサなど昔のターボ車両でしばしば見かけていた現象で、田中氏によれば「ターボ車両だとアンチラグといって、アクセルを戻してもガソリンを吹いてタービンの回転を落とさない制御があって、GTカーもその制御を採用している。その場合、燃え残った生ガスが大気中に出る瞬間に火が付くんですよね」とのことだ。
ちなみにアフターファイヤーで車両火災になるリスクについては、「エキゾーストがカウルの内側とかにあると火が付くことはありえるけれど、そんな間抜けな設計になっていないので大丈夫です」と田中氏。
というわけで、次回、スーパーGTを観戦する機会があったら、火花とともにアフターファイヤーにも注目したいものだ。
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