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1990年代の“2代目”和製高級車の5選

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1990年代の“2代目”和製高級車の5選

1990年代にフルモデルチェンジを受け登場した、和製高級車の“2代目”について、小川フミオが振り返る。

自動車の世界では、何代にもわたるモデルチェンジを経て続いてきたシリーズのなかで、なにが1番よかったか? と、迷うときがある。いちおう、もっとも”志(こころざし)”が高いということで「初代がいちばん!」という意見がある。でも洗練性でいうと、2代目も悪くない。

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もっともよく出来た“2代目”といえば、個人的にはメルセデス・ベンツ「Sクラス」だ。1979年に発表されたW126は、作りも走りのクオリティもスタイルも、いまも色褪せていない。もっとも人気のあるSクラスであり続けている。

1990年代の日本の高級車をみると、上記の言が説得力を持つ。初代の企画は1980年代に、まだ自分たちが知らない上級市場に入っていくということもあり、ちょっと、おっかなびっくりなかんじがある。

和製プレミアムセダンの2代目の多くは、いわゆるバブル経済がまだ崩壊していないときに開発されただけあって、初代のいいところを思いっきり伸ばして開発された感がある。もちろん、インパクトでいえば初代だ。

たとえば、セルシオ。米国でが1989年にレクサス「LS」として登場し、当時いきおいのあったキャデラックのセダンやメルセデス・ベンツSクラスに真正面から挑戦するといういきごみだった。

セルシオでは、いいクルマづくりを各構成部品の精度を上げていくところまでさかのぼった「源流主義」を掲げ、かつエンジンの上にシャンパン用スクープグラスを積み上げ、V8を始動させてもグラスのタワーが崩れない映像を公開するなど、印象が強い。

そんなふうに、初代の陰に隠れがちな2代目であるものの、たとえば上記セルシオでは、2代目では軽量化とともにブレーキ強化がはかられ、かつエアバッグやブレーキアシストといった安全装備が充実。しっかりアップデート化がはかられたことが特徴としてあげられる。

(1)トヨタ「セルシオ」(2代目)

セルシオの2代目は、1898年に発売された初代の後を襲い、1994年に登場した。レクサスLSとして大きな話題を呼んだ初代は完成度の高いモデルであった。フルモデルチェンジでは、ホイールベースを35mm延ばして2850mmとし、いっぽう4995mmの全長は継続した。

エンジンも4.0リッターV型8気筒の「1UZ-FE」を継承。最高出力は260psから265psへと上がった。細かい改良は、エンジンの圧縮比変更、フリクションロス低減、吸気効率の向上など多岐にわたる。4段オートマチック変速機はトルコンの高効率化がはかられた。

ボディでは剛性強化と同時に振動と騒音の低減。前後ダブルウィッシュボーン形式のサスペンションシステムは、ジオメトリーの変更と、(エアサス仕様では)Gセンサーの追加といったぐあい。車重は100kg以上も軽量化されていた。

フロントマスクや、ウィンドウグラフィクス(サイドウィンドウの輪郭)を含めて、スタイルは初代と、うりふたつ。このクルマの開発担当者は、ようするに、初代を完成させようとしているのでは。そのように感じたのを思い出した。

当時は、初代のパワフルで安定した走りの印象が強かっただけに、2代目は、いいクルマだけれど、印象に乏しいと思ったものだ。でもいま、初代に乗るとあらためて軽快で出来のいい走りのよさに感心するだけに、2代目もいい状態であれば、おそらく乗る価値があるのではないかと思う。

(2)日産「シーマ」(2代目)

“日本的な味を持った世界に通用するクルマ”を、標榜して日産自動車が1988年に発売した、セドリックおよびグロリアの上級車種「シーマ」。高級車がもてはやされたバブル経済下で、シーマ現象と呼ばれるほどのヒットに。そして1991年には早くもモデルチェンジして2代目に。

2代目の特徴は、車体の大型化と、新エンジン。ホイールベースが80mm延長されて2815mmに。全長はプラス40mmで4930mmに、全幅はプラス10mmで1780mmに。上級車種用のエンジンは「インフィニティQ45」などに搭載されていたものをベースにした、新開発の4130ccV型8気筒DOHCに変更された。

このころの日産車のおもしろさは、高性能エンジン、アクティブサスペンション、フルタイム4WDシステムなど、持てる技術をほぼすべて、惜しげもなく投入するところ。おかげで、傍からはセルシオ対シーマという、当時トヨタに迫るいきおいを見せた日産だけに、2社の代理戦争ならぬ健全な競争を楽しめた。

スタイリングは、ぼってりしていた初代を継承。セルシオと較べると垢抜けないものだった。後席スペースを拡げるのが2代目シーマにおける重要なテーマだっただけにしようがないともいえるものの、キャビンが大きいために、見た目の印象はぼってりとしていた。

シーマのルックスが洗練されるのは、1996年の3代目からだ。とはいえ、この適度なもっさり感が、日産車好きにとっては魅力ともいえる。そこがセルシオと一線を画していた点なのだ。

(3)ホンダ「レジェンド」(2代目)

ホンダがプレミアムセダン「レジェンド」を1985年に発表したのは衝撃だった。ホンダといえばシビックに代表される、コンパクトカーをうまく作る会社、というイメージが強かったからだ。そして1990年に出た2代目レジェンドはさらにボディが大型化。こちらも、さらに驚かされた。

ホイールベースは150mm伸びて、セルシオより長い2910mmに。車体は全長4940mm、全幅1810mmと、堂々としたもの。スタイリングは、本来はコンパクトカー向きのデザイン手法だったブリスターフェンダーを止めたのは懸命な策。

ホイールハウスまわりをフェンダーパネルごとふくらませるブリスターフェンダーのかわりに、フロントからリアにかけてまっすぐなキャラクターラインが伸びやかさを表現。加えて、きれいなカーブで膨らんだホイールアーチのフレアが、パワフルさとエレガントさを同時に感じさせた。

エンジンは新設計の3206ccV型6気筒。ヘッドまわりの設計見直しで、パワーアップ(190psから215psへ)と、高効率化がはかられた。ホンダらしいのは、プレミアム市場にあっても、当時の定石だった後輪駆動でなく、あくまでも前輪駆動にこだわったこと。

いっぽうで、エンジンはあえて縦置きにして、前車軸より後ろに搭載するいわゆるフロントミドシップ方式を採用。カーブを曲がるときなど、鼻先を軽くして、すっと自然に車体が内側へと入っていく感覚を大切にした。前輪駆動のプレミアムセダンとしては競合ともいえたアウディとは逆の考えだ。

アウディ車は、リアエンジンを後車軸より後ろに搭載したポルシェ「911」を前後180度ひっくり返したレイアウトを採用。当時2社のエンジニアリングを統括的な立場からみていたエンジニアのフェルディナント・ピエヒは、駆動輪をしっかり地面に押しつける(専門用語だと”トラクションをかける”)には、重量物であるエンジンを重しがわりに使うべき、という考えかただったのだ。ホンダとはまったく異なるところがおもしろい。

話をレジェンドに戻すと、1980年代にホンダはすでに販売の軸足を北米市場に移すことを決めていた。そのために2代目レジェンドは大型化したのだ。ダブルウィッシュボーンサスペンションの恩恵を強調するかのような、薄いフロントフェンダーなど、進んだ技術的内容をスタイリングで表現する手法は、北米でもおおいに評価された。

(4)マツダ「センティア」(2代目)

マツダが1991年に発表した初代「センティア」は、パーソナルユースに徹しきったプレステージセダン、と謳われた。全長は4925mmあるものの、あて後席を小さく見せるグリーンハウスのデザインを採用。大胆な企画だった。バブル経済下だからこそ、遊び心のようなものをぞんぶんに盛り込めた結果だろう。

1995年の2代目は、初代の反省のうえにたったような成り立ちで登場した。キャビンは造型のテーマが変更され、ルーフの前後長が伸び、ドアの切り欠きも大きく、後席の存在感があえて強調された。なんでも、初代は後席の狭さが不評だったそうだ。

マツダの開発陣が好き勝手に作った初代に、いってみれば”マツダらしさ”を強く感じるというファンの声もある。それでも、2代目のまとまりのよさはおおきく評価したい。

前後マルチリンク式のサスペンションに、電子制御の4輪操舵システムが組み合わされたシャシー。エンジンは3.0リッターV6で、DOHCとSOHCが用意されていた。なんでその必要があるのか? という疑問を抱くほどに、ぜいたくな設定である。

あいにく、セルシオがあってシーマがあってレジェンドも、という日本のマーケットでは、販売力で劣るマツダが成功する可能性はそれほど高くない。ましてや、よく出来てはいるけれど、標準的なコンセプトのセンティアでは競争力が足りなかったのだ。

(5)三菱「ディアマンテ」(2代目)

三菱自動車が1990年に発売した初代「ディアマンテ」は、余裕あるボディサイズ(全長4740mm、全幅1775mm)とパワフルなドライブトレインに、4輪駆動かつ4輪操舵など凝ったメカニズムも、金余り市場で評価されてスマッシュヒットとなった。

あいにく、1995年に登場した2代目ディアマンテは、そこに続けなかった。ボディを大型化し、エンジンは2.0リッターをやめて2.5リッター以上をメインにし、4輪駆動と、電子制御技術をふんだんに盛り込んだトランスミッションなど、あらゆる要素を詰め込んでいたものの、バブル経済崩壊後、マーケットがなくなってしまったのだ。

当時のディアマンテは、最高のスポーツセダンを作りたいという開発者の思いがこもった“熱いクルマ”だった。とくに3.0リッターモデルは、“和製メルセデスAMG”とでも呼びたくなるほど、ズドーンっと加速し、くいくい曲がるクルマだった。

でも三菱は、すでに全社的に、セダンからRV(いまの言葉でいうとSUV)へと舵を切り始めていて、2000年のリコール隠し問題で販売が一時低迷したことなどをきっかけに、車種を大きくしぼってしまった。ディアマンテは青息吐息というかんじで、2005年まで販売が継続されたものの、後が続かなかった。

ディアマンテのようなクルマに、昨今のアウトランダーのような走りの技術を盛り込んでくれたら、また楽しめるモデルが生まれると思うのに。2代目ディアマンテを振り返ると、そんなことを思う。

文・小川フミオ

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みんなのコメント

4件
  • 顕著に売り上げを伸ばしていたのはセルシオだけだった。
    バブル崩壊して経済が低迷していた割に、よくあんな高額な国が売れていたものだ。
    シーマは初代が築き上げた市場を自らぶっ壊し、それをアリストに奪われていた。
    レジェンドは毎回中途半端な排気量のFF車だったから一般ウケしなかった。
    センティアは初代は良かったけど、二代目はオーソドックスなセダンにしてしまい大ゴケしていた。
    ディアマンテは、まぁ、そんなところだろう。
  • ここの2代目は初代を越えられなかった残念なクルマばかり。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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