15年生産された3代目チャレンジャー
カナダ南西部の山岳地帯に位置する、フレーザーバレー。数マイル離れた場所で山火事が発生し、一部のエリアへの立ち入りは制限されていた。それでも、フレーザー川の渓谷沿いに伸びる、片側1車線の道路は走れるようだ。交通量は殆どない。
【画像】ハンドルで操る「悪役プロレスラー」 ダッジ・チャージャー/チャレンジャー フォード・マスタングとシボレー・カマロも 全102枚
辺り一帯、木々が燃えた煙と匂いが充満している。そんな不穏な駐車場に停まる、ダッジ・チャレンジャーとチャージャーを眺めていると、内燃エンジンの時代が終わろうとしていることにも納得できる。この快楽は、罪悪感と背中合わせだ。
2008年に復活した3代目チャレンジャーは、2023年までの15年間、V型8気筒エンジンを積んでアメリカン・ノスタルジーを全身で表現してきた。あっという間だったと感じるのは、筆者だけだろうか。
初代チャレンジャーは、1969年の秋に発売された。ところが、1970年代前半にオイルショックが世界を襲い、わずか4年で生産終了へ追い込まれた。同様に大排気量の3代目も、2023年に生産は終了した。
英国へは、最後まで正規導入されなかった。極少数が、並行輸入されただけだ。それでも、この終焉を悲しむ人は少なくないだろう。
他方、マッスルカーの兄弟として誕生したダッジ・チャージャーは、2024年にモデルチェンジ。直列6気筒ターボか、電気モーターを搭載した次世代へ、バトンタッチすることが決まった。
V8エンジンに合わせて震えるボンネット
従来のチャージャーは4ドアサルーンのみだったが、チャレンジャーの後継も担うべく、新型では2ドアクーペも用意される。それでも、ボディサイズは僅かに小さくなり、轟音を響かせる大排気量のV8エンジンは選べない。
まあ、賢明な進化といえるだろう。恐竜は、いつまでも生き延びることはできない。
フレーザーバレーの西でうねるように伸びる、山岳路は空いている。自然吸気のV8エンジンには、6速マニュアルが組まれている。肉厚なタイヤは、ホイールアーチギリギリ。マッチョな人の筋肉が、ピチピチのTシャツから溢れ出ているようだ。
自動車の、未来への歩みは止まらない。だがその前に1度立ち止まって、前時代のマッスルカーを味わっておくべきだろう。
粘土質の土壌をえぐるフレーザー川は、下流に向けて幅が広くなり、河口付近に肥沃な大地を生み出した。その上流側は、ヘルズゲート(地獄の入口)と呼ばれるほどの激流。岩肌へ何本もトンネルを掘り、南北を結ぶ道が作られている。
レブマッチ機能を有効にし、シフトダウン。アクセルペダルを倒すと、チャレンジャー・スキャットパック・スインガーはフロントノーズを斜め上に向けながら、堂々と加速し始める。
ボンネットを前後に貫く2本の峰が、65.5kg-mの大トルクを生み出す、V8エンジンの回転に合わせて震える。見ていて小気味いい。
狭いトンネルへ飛び込む。ウインドウを開くと、ライフルで銃撃されているような、怒涛の排気音が反響する。ゾクゾクしない人はいないだろう。
ステアリングホイールで操れるプロレスラー
川が削った地形に合わせて、道は緩やかにカーブを描く。カリフォルニア州のドライブルートのように、ヘアピンはない。チャレンジャーにはピッタリだ。
アメリカン・ステーキのように大味なフォルムだが、走りはずっと繊細。足取りが軽いとはいえないものの、驚異的なグリップ力があり、シャシーバランスは悪くない。
1.9t以上ある車重は常に感じられるものの、特別なホイールとタイヤを履いたオプション・パッケージは、強力な392ヘミ・ユニットを受け止めるべく設定されている。長打力のスラッガー的ではあるが、丁寧に癖玉を打ち返すこともできる。
6速MTのシフトレバーも大味。アメリカのレストラン・チェーン店で提供されるような、呆れるほど大きいナイフに似ているかも。有り余るパワーを適切に路面へ伝えるには、相応の努力が必要。8速ATの方が、性格には向いている。
右腕でタイミングを図りながら、3速までシフトアップ。右足を倒しトルクのビッグウェーブへ乗ると、他では味わえない充足感に浸れる。
極太のフロントタイヤを操るステアリングは、予想通り鈍感。とはいえ最新のBMWでも、同じような不満は感じるだろう。程度の違いはあるとしても。
あやふやだった1970年代のマッスルカーと比べれば、反応は遥かに正確。ドライバーが求めれば、ちゃんと応えてくれる。ワダチで右往左往することもない。ステアリングホイールで操れるプロレスラーと表現しても、違和感はない。
悪魔的なスーパーチャージド・ヘルキャット
ボディは、ちょっと誇張された印象を伴う。しかし、フォルムにはカリスマ性がある。路面へ低く構えた筋肉質な造形で、フロントマスクが目の合う者を威嚇する。悪役レスラーのように。
劇場感はスーパーカーにも迫るが、排他的な雰囲気はない。友だちになれそうな、不思議な親しみやすさも漂わせる。
3代目チャレンジャーと、7代目チャージャーへ10年前に設定が始まった、ヘルキャットのエンジンは悪魔的だ。それ以前のV8エンジンも6.4Lでパワフルだったが、6.2Lヘミ・ユニットは、スーパーチャージャーで加給すれば圧巻の707psを発揮した。
レッドアイやデーモンなど、パワフルな特別仕様はいくつか登場した。しかし、最も記憶に刻まれているのは、ヘルキャットだと思う。直線加速の勢いは半端ない。アポロ計画で月を目指した、サターン・ロケットのようだった。
このヘルキャット・エンジンは、カナダ・トロントからクルマで40分ほどの場所にある工場で作られていた。でも、アメリカ人は自国の象徴だと考えている。
希少性も高く、アメリカでは盗難率も高い。最近の統計では、4ドアのチャージャー・ヘルキャットは、一般的なクルマより60倍も盗まれる可能性が高いとか。犯人は盗難車を分解し、部品毎に販売されてしまうそうだ。
この続きは、チャージャー/チャレンジャー ダッジのマッスルカー2台を比較(2)にて。
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