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ベントレー「コンチネンタルGT」に乗って垣間見たクルマの進むべき道

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ベントレー「コンチネンタルGT」に乗って垣間見たクルマの進むべき道

■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ

 すでに登場してから数年が経っているが、あらためてベントレーの2ドア4シータークーペ「コンチネンタルGT」に乗る機会があった。「コンチネンタルGT」としては第3世代に当たるモデルだ。2003年にデビューした初代以来、すべての「コンチネンタルGT」に乗ってきたけれども、世代を経るごとに確実にアップデイトが図られていることを思い出す。

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 アップデートだけではなく、派生モデルの展開の手順や、モーターショーで披露されるコンセプトカーのデザインを取り入れ方など、とても丁寧なモデル展開が行なわれてきていた。「コンチネンタルGT」というクルマをちょっとおさらいしてみると、1998年にフォルクスワーゲングループ入りした新生ベントレーが2003年に送り出したニューモデル第1号が「コンチネンタルGT」だった。

 W型12気筒エンジンなどのパワートレインをはじめとする多くの機能部品がフォルクスワーゲン初の高級セダン「フェートン」から流用されていた。ステアリングホイール裏のシフトパドルや走行モードの画像までフェートンと一緒だった。しかし、ただ流用するだけでなく「コンチネンタルGT」のパドルの指が当たる部分には革が張られていたのが印象的だった。こだわるところにはこだわろうとするベントレーの意地が伺えたからだ。

機械として優れているか? ★★★★★5.0(★5つが満点)

 走らせてみると、速さもさることながら静粛性が高く、乗り心地が良いことに驚かされた。モンテカルロからポールリカール・サーキットのあるフランス・キャステレまで走ったが、距離を感じさせない超高性能だった。なんとなく走り足りなささえ感じるほど、快適で、ポールリカールからさらに1000kmでも2000kmでも走れそうだった。

「コンチネンタルGT」のスタイルは1950年代の「コンチネンタルR」のイメージを継承したものだが、オリジナリティーが高かった。クラシックなフォルムながら、ライト周りのディテイルなどにモダンな造形が施されていたのが新鮮だった。ターボ過給された独特なW型12気筒6.0Lターボエンジンが搭載され、4輪を駆動する。

 最高出力は560馬力だったが、マイナーチェンジやモデルチェンジを経るごとに少しづつ強化され、この第3世代では635馬力にまで高められた。最大トルクも900Nmに増大されている。贅を尽くしたインテリアなどもあり、「コンチネンタルGT」の重量は2290kgと決して軽いものではない。

 その重さを逆手に取って静粛性と快適性を担保しているわけだが、第3世代となったW型12気筒エンジンはターボエンジンとは思えないほどレスポンシブで「コンチネンタルGT」を鋭く加速させる。4輪駆動のトルク配分比率なども初代から変更されているが、アクセルペダルを素早く踏み込んだとしても、いささかの姿勢の乱れなどもなく矢のようなダッシュを示す。

 初代を思い出すと、荒々しさが消えて洗練の度を増している。どの世代の、どのモデルでも「これで完成形だろう」と思わされてきたけれども、モデルが進むたびにアップデートが功を奏しているのには舌を巻いてしまう。オプション代の626万円を含んだ代金は2680万円で絶対的には高価だが、内容を考えると決して高くはないと思った。超高級クーペを求めている人にとっては納得がいく価格だろう。

商品として魅力的か? ★★★★★5.0(★5つが満点)

 第3世代となった「コンチネンタルGT」は、CASEと呼ばれる現代の自動車が直面することとなった新しい課題にも対応している。SIMカードを装備してインターネットに常時接続し、車内はWiFi環境下にある。ACCとレーンキープ&トラフィックジャムアシスト、パーキングアシストなどの運転支援機能も装備されている。

 フルデジタル化されたメーターパネルはステアリングホイール上のボタンで豊富な機能の表示を切り替えていくことができる。驚かされたのは、エンジン制御のエコ志向が強まっていることだった。W型12気筒はスピードが一定の巡航時などには気筒の半分を停止し、残り半分の6気筒で走行できるのは以前から行われていたが、さらに条件が揃えばコースティングも行なうようになった。



 コースティングとは、走行中にエンジンとギアボックスが切り離され、そこからクルマは惰性で走り、エンジンはアイドリング状態になることだ。ちょっとでもステアリングを切ったり、アクセルペダルを踏んだりした途端にエンジンとギアボックスは接続する。一回ごとのコースティング状態の時間は短いが、チリも積もれば山となるの喩え通り、燃費はそのぶん確実に良くなる。

 CASEの課題をクリアしつつ、いわゆる世界観を崩していないのが頼もしいところだ。CASEの課題を素早くクリアしている筆頭格であるテスラやボルボなどは大きなモニター画面に操作系統を集約し、物理スイッチを減らしていく方向にある。世界のベストセラー、フォルクスワーゲン「ゴルフ」も昨年末に発表された第8世代はメーター類がすべてデジタルパネル化された。「コンチネンタルGT」も、その方向に進んでいるのだけれども、まだまだスイッチは多い。しかし、ずっと続けてきた、スイッチやレバーなどを動かすところには滑り止めのローレット加工を施しているのも、また、ベントレーのデザイン文法を守り続けている証しである。

 つまり、ドライバーインターフェイスまではこれまでの「コンチネンタルGT」なりベントレーの様式を守りながら、メカニズムやデジタル制御などのクルマの内側の部分は最新のものを揃えているのである。100年を超える歴史を持つ超高級車メーカーであっても、昨今の進境著しいCASEを織り込むことを怠らず、それでいてそれだけに流されることもない。世界観に揺るぎがないのだ。

 将来、アップルやグーグルが完全自動運転を先に実現してクルマを造り始めるようになった時に、既存の自動車メーカーはどうやってそれを太刀打ちするのか? 自動車メーカーだって自動運転の開発を行なっているが、アップルやグーグルが持っていない“歴史と伝統”は強い武器になるだろう。ブランド価値の有無が、コモディティ化する自動車に対抗できる大きな手段となる。

 そうなった時のために既存のクルマの進む道がどんなものなのか示すヒントが「コンチネンタルGT」の進化に含まれているように思えた。

■関連情報
https://www.bentleymotors.jp/models/continental/new-continental/

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

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