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6代目ゴルフGTIは洗練された速さを獲得。乗り心地を中心とした快適性が向上していた【10年ひと昔の新車】

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6代目ゴルフGTIは洗練された速さを獲得。乗り心地を中心とした快適性が向上していた【10年ひと昔の新車】

2009年5月、6代目ゴルフのスポーツモデル「ゴルフGTI」が日本市場でデビュー、9月に販売が開始された。欧州で発表されて以来注目していたMotor Magazine誌は、日本にゴルフGTIが上陸するや、早速特集を組んで試乗テストを敢行している。ここではその興味深い試乗テストの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年10月号より)

より高い安全性のために最新セーフティ技術を導入
4ドアハッチバックのユーティリティの高さと、スポーツカーに負けないドライビングの楽しみという二面性を備えるGTI。新型でも、その根幹ともいえるDNAは継承されていた。ただしそこには「進化」という言葉も大きく付け加えておく必要がある。

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エンジンは先代のEA113系の「BAW型」から、EA888系の「CCZ型」へと新しくなった。4気筒2L直噴ターボという図式に変わりはないが、出力は147kW(200ps)/5100~6000rpmから155kW(211ps)/5300~6200rpmへとパワーアップ。280Nmという最大トルク値は変わらないものの、発生回転数はそれまでの1800~5000rpmから1700~5200rpmへと、トルクバンドが広げられている。

この新タイプのエンジンは、バランサーシャフトが組み込まれたシリンダーブロック、チェーン駆動式カムシャフト、メインベアリングキャップ部分の強化、燃料タンクへのリターンラインをなくしたフューエルシステムとインジェクターの改良など、多岐にわたる変更が実施されている。フリクションが減ったことで燃費も向上していて、10・15モード燃費では、12.6km/Lが13.0km/Lへと伸びた。

そして、ドライバーをサポートする新しい機構も新型GTIにはたくさん盛り込まれた。それはドライビングを楽しくするためにも役立つものであり、アクティブセーフティやパッシブセーフティを向上させることに貢献しているものでもある。

「DCC(アダプティブシャシコントロール)」は、18インチタイヤホイールとセットオプション(21万円)となっている。コンフォート/ノーマル/スポーツの3モードからダンパーの硬さを選択できるが、その減衰力設定は、走行スピードや条件によって常に可変してモード内の最適値に調整される。

「XDS」は標準装備。これは、トラクションを確保しながらも駆動輪がホイールスピンするのを防ぐ、ESP(横滑り防止装置)と一体のEDS(電子制御式ディファレンシャルロックシステム)機能を拡張した制御システムだ。中高速域でのコーナリング中にフロント内側タイヤの荷重が不足した状態になった場合、その一輪のブレーキ圧を5~15バールに高めてブレーキをかけて空転を防止する。トラクションを確保すると同時に、パワーオン時のアンダーステアを軽減させるシステムだ。

なおGTI専用のスポーツサスペンションは、フロント22mm/リア15mmのローダウン仕様になっている。

派手さはない、けれど細部に着実な進化を感じることができる
また新デザインのバイキセノンヘッドライトには、夜間の安全性向上に貢献する照射モードが採用された。ロービームでの走行時に「シティモード」と「ハイスピードモード」が含まれたのだ。このシティモードは、10~40km/hで走行しているときの作動状態で左右を幅広く照射して、タウンスピードで交差点を曲がるときの見通しなどを改善する。

ハイスピードモードは、110km/h以上の状態を30秒持続すると作動して、ロービームのままでもより遠方まで照射する(照射方向が0.6%上向きになる)。この2モード以外の速度域ではノーマルモードとなり、歩道側をより前方まで照射して、安全性を高めた照射パターンとなる。

これらの動きは、コーナーでイン側のライトは水平方向で最大15度、アウト側のライトは同じく最大7.5度、コーナーの内側へスイングするダイナミックコーナリングライトの機能を応用したものだ。これにヘッドライトの高さ調整機能を加えれば、照射パターンを上下左右に可変できる。より高い安全性を確保するため、走行スピードにあわせて照射パターンが変わるようにプログラムされた新技術である。

ブレーキ面では、GTIの証として赤いブレーキキャリパーが標準装備される。ブレーキディスクの径はフロント312mm、リア286mmで、このあたりはキャリーオーバーとなる。

またエマージェンシーストップシグナルも採用された。これまで、ABSが作動するような状況では後続車にその事態を報せるためにハザードランプが自動的に点滅したが、これに変えてブレーキランプが点滅する、より視認されやすいシステムが標準となった。

そして、ニーエアバッグを含む9個のエアバッグとともに、ノイズを捉える音響センサー(アコースティッククラッシュセンサー)を備えた「CISS(クラッシュ・インパクト・サウンド・センシング)」も採用。これは、クラッシュした瞬間のボディが変形する際に発せられる特徴的なノイズを即座に捉えることで、Gセンサーの感知よりも早く衝突発生をコンピュータが検知すると同時に、損傷の程度を判断。エアバッグ反応時間の短縮だけでなく軽度の衝撃での不必要なエアバッグ作動も防いで、乗員への余計な損傷を防止することができるという、パッシブセーフティの先進技術である。

突き詰めた存在としてゴルフを象徴するGTI
エクステリアデザインを見るとゴルフの中でGTIはやはり特別なモデルとして扱われているのがわかる。GTI専用のハニカムグリルを挟むように上下に2本のレッドライン、フロントバンパー、縦型フォグランプ、サイドシル形状、左右出しのツインエキゾーストパイプ、サイズアップしたハッチ上方のリアスポイラーなど、すべてGTI専用にデザインされたものだ。

内外装のデザインの凝りようを見ていると、「GTIはゴルフの象徴的存在なのだなあ」と強く感じる。GTIに乗ればゴルフがわかるし、ゴルフを突き詰めればGTIになるのだろう。

標準の17インチタイヤを履いた赤いGTIと、オプションのDCCを装備した18インチタイヤの白いGTIとともに、スパ西浦モーターパークに向けて東名高速を西に向かった。

高速道路を100km/hで走るのは、快適そのものである。適切なヒール段差でアップライトに気持ちよく座れるしっかりしたシートは、長距離ドライブでの疲れも少ない。その後のワインディングロードやサーキットでのハードな走りでも、身体のホールディング能力が高いことがわかった。

6200rpmからレッドゾーンのタコメーターで、100km/h時のエンジン回転数を見ると6速:2300rpm、5速:2700rpm、4速:3500rpm、3速:4800rpmである。2速では6800rpmを越えるところまで回ってシフトアップしたときがちょうど100km/hだった。DレンジでもSレンジでもアクセル全開で加速していくと6800rpmまで回ってからシフトアップ。レッドゾーンに入ってから600rpmも上昇するので、最初は自動シフトアップしないのかと思ったほどだ。

6000rpmを越える高回転でも軽快で元気が良く、そこまで回すことを躊躇させない。パドルシフトはいつでも使える設定だが、キックダウンスイッチまで踏み込むアクセル全開状態のままでも、パドルでシフトアップしていけるのがいい。そんな時は、シフトアップ時に回転を合わせるためか、排気音にボッボッという音が混ざるのが面白いと思った。

乗り心地もスポイルされないノーマルモード
高速道路を100km/hくらいで走行中に突然、先行車がブレーキを踏んだ。そこで普通よりちょっと強めのブレーキを掛けようと思ったら、ブレーキ力(パッドのミュー)の立ち上がりが遅く、期待するほどの初期制動力が出なかった。またサーキットでも、強いブレーキと弱いブレーキの中間を使おうとすると、強いか弱いかのどちらかに振られてしまってコントロールしにくいことがあった。ブレーキパッドは前後とも日本仕様に変更されているが、せめてGTIでは、オリジナルの仕様を選べるようにしてもらいたい。

高速を降りて、道幅の狭いタイトターンばかりのワインディングロードに入ると、今回の取材前に箱根のワインディングで試乗したときよりも17インチ仕様の印象が良くなった。

箱根では、しなやかなサスペンションは快適だが、GTIならもう少し締まっていてもいいのではないか、と感じていたからだ。しかしここではタイトターンをセオリー通りのドライビングできれいに抜けてくれた。XDSの効果は、コーナーでアクセルペダルを少し早めに踏み込んだときでもアンダーステアを出さずに立ち上がっていくことでが実感できた。

翌日、サーキットを走ったときにも、17インチのGTI標準サスペンションはDCC付き18インチとのタイム差がないに等しく、素晴らしい味付けになっていることがわかった。

そのDCC付き18インチGTIでも市街地、ワインディングロード、サーキット、高速道路を走行したが、どんな道でもノーマルモードが一番良かった。このノーマル状態では、GTI標準のサスペンション仕様よりも硬めになるが、ストローク感はたっぷりあるし、乗り心地がスポイルされていない。コンフォートモードは、当たりはソフトになるが揺れは大きくなる。スポーツモードでは、周波数の高い揺れが増えてしまい、しなやかさが減るために、路面をホールドする感触も薄くなる。

快適性と乗りやすさの向上、進化した走り味の楽しさ
先代のゴルフGTIのほうがコーナーへのターンインの動きにシャープさがあるが、新型GTIはそのあとハンドルを切り込んでいったとき、アクセルペダルを踏み込んでいったときにもアンダーステアが弱く、ドライバーの意思どおりに曲がってくれる。切り始めのシャープさも、DCC付き18インチでノーマルモードを選べば、先代と遜色ない。

市街地走行や渋滞のときには、GTIの湿式クラッチの6速DSGはTSIハイラインの乾式クラッチの7速DSGよりクリープが強い設定なので、普通のATのような走り方で自然だった。坂道発進でも、2秒間のヒルスタートアシストがあるが、それが終わっても6速DSGはクリープが強いから後退しにくい。ATから乗り換えても違和感ない走りができるということだ。

エンジンは、停止からの発進の瞬間に、ターボモデルだということがよくわかる。ペタッとアクセルペダルを全開にするとスーッと発進してくれるのだが、最初はパンチのない加速だ。ただしタコメーターが2500rpmを示すくらいからは強烈なトルクが出て加速力も急激に高まる。このとき路面が濡れていたり、登り坂で前輪への荷重が少し軽かったりするとホイールスピンが起こる。時には、ジャダーも出る。この辺は圧縮比を下げてパワーを出すようにしたデメリットかもしれない。

3日間の試乗を終えて新型ゴルフGTIは、より上質で楽しいクルマに仕上がっていると感じた。乗り心地を中心とした快適性が向上したことと、XDSによりアンダーステアが出にくくなったことが印象的だったし、進化した部分でもある。そして、クセがなく誰にでも勧められるゴルフの良さと、GTIの個性が融合した魅力的なクルマであること、その価値も不変だった。

これから先、小さなボディでもっとキビキビ走りそうなポロGTIも登場するだろうし、スタイリッシュなパサートもライバルとなるかもしれない。将来的にはRモデルも用意されているだろう。それだけにゴルフGTIは、フォルクスワーゲン車の中でも際立たなくてはいけない存在である。

社内のライバルに勝つために備えた実力は、社外のライバルに対しても有効なわけで、新型GTIは、より上昇志向が強まっていると感じられた。(文:こもだきよし/写真:永元秀和、小平 寛)

フォルクスワーゲン ゴルフGTI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4210×1790×1460mm
●ホイールベース:2580mm
●車両重量:1400kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:155kW(211ps)/5300-6200rpm
●最大トルク:280Nm/1700-5200rpm
●トランスミッション:7速DCT(DSG)
●駆動方式:FF
●10・15モード燃費:13.0km/L
●タイヤサイズ:225/45R17
●0→100km/h加速:6.9秒
●最高速:238km/h 
●車両価格:366万円(2009年)

[ アルバム : フォルクスワーゲン ゴルフGTI はオリジナルサイトでご覧ください ]

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