スズキの軽トラックであるキャリイが8月18日に一部改良。それと同時に生誕60周年を記念した特別仕様車も設定された。
ここではキャリイの改良&特別仕様車の情報とともに、軽トラならではの最新カスタム情報を紹介していこう!
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文/大音安弘
写真/スズキ
【画像ギャラリー】生誕60周年を迎えたスズキ キャリイのいろんなバージョンを写真でチェックしてお祝いしよう!!
■生誕60周年を迎えたスズキのキャリイ
スズキの軽トラック「キャリイ」が2021年8月18日、一部改良を実施した。
その内容は、上級グレードに採用されていたフロントマスクに力強さを与える「メッキフロントガーニッシュ」に加え、走行性能を高める「ぬかるみ脱出アシスト(ブレーキングLSD)」と「ヒルホールドコントロール」の採用グレードの拡大といったものに留まる。
しかし、今回、スポットを当てるのは、新設定された特別仕様車の存在だ。
キャリイは、2021年で生誕60周年を迎えた。その歴史を少し振り返ると、初代となる「スズライト キャリイ(FB型)」は、1961年10月に発売。360ccの2サイクルエンジンを積んだセミキャブタイプの軽四輪トラックで、これがスズキ初のトラックとなった。
1961年に発売されたスズライトキャリイFB。360ccの2サイクルエンジンは21psを発生、当時29.5万円で発売されていた
その生産のために、愛知県豊川市にスズキ初の本格的な自動車量産工場を建設するなど、スズキが四輪車の拡販を狙い、大きな一歩を踏み出したモデルでもある。
そして、現行型となる11代目キャリィは、2013年8月に発表。2018年5月には、キャビン後部を拡大し、コンパクトなラゲッジスペースを確保した「スーパーキャリイ」を追加し、話題となった。
■キャリイ初の4速ATを搭載した「60周年記念車」
今回の一部改良で追加された特別仕様車は、その60周年を記念したもの。その名もずばり「60周年記念車」だ。
キャリイ特別仕様車「60周年記念車」。4速ATをはじめとする数々の快適機能を装備、ボディカラーも5色用意する(写真はホワイト(26U))
これはスタンダードな「KCエアコン・パワステ」をベースに、先進の安全運転支援パッケージ「スズキセーフティサポート」を標準化。
一部グレードに標準及びオプション設定される「ディスチャージヘッドランプ」をはじめ、パワーウィンドウ、パワードアロック、キーレスエントリー、フロアカーペット、ブラックメッキフロントガーニッシュ、カラードドアミラー、メッキドアハンドルなどを特別装備したものだ。
しかし、最大のトピックは、キャリィ初となる4速ATの搭載だ。なぜそれほど4速ATを強調するかといえば、キャリイのATは、いまだ3速のみ。唯一の多段オートマが、スーパーキャリイの最上級グレード「X」に設定される5速AMTの「5AGS」のみとなる。
2018年にデビューした「スーパーキャリイ」(写真のグレードはスーパーキャリイX)。キャリイシリーズのなかで唯一、5速AMTの「5AGS」が設定されている
ちなみに、スーパーキャリイXにも3速ATが用意されている。キャリイは5速MTがメインで、ATもタフな3速で充分というストイックな考え方なのだ。もっとも街中では、ワイドレンジの3速ATなら変速が少なく、荷物を積んだ時の加速にも有利というメリットもある。
ただライバルであるダイハツのハイゼットは、すでに4速ATが基本なのだ。それだけにキャリイでは待望の4速ATといえる。さらに「60周年記念車」では、リヤサスペンションを4枚リーフスプリングによる強化型に変更。これにより重積載時の車体の沈み込みを抑制してくれている。
スズキ広報部に、キャリイ初の4速AT搭載の理由を尋ねると、「より幅広いお客様のニーズに応えるため」とのこと。それではより広いニーズとは何かなのか。その背景には、軽トラックを趣味で活用する人たちの拡大にあるようだ。
■軽トラックベースのカスタムカーがアウトドアで大人気
近年、カスタムカーの世界でも軽トラックベースのものが増加。さまざまな軽トラック向けのカスタムパーツも販売されるようになった。その魅力に、アウトドアを楽しむ人たちも注目するようになっているのだ。
最新の軽トラック事情を探るべく、軽商用車向けカスタムパーツ「HARDCARGO」の田中宏之介さん(有限会社エフクラス)に話を伺うと、近年、明らかな顧客の変化を感じているという。
「強固」×「運ぶ」をテーマにした有限会社エフクラスのカスタムパーツ「HARDCARGO」によるカスタム例
「これまでは建築関係のお客様が、仕事用の軽トラックのためにパーツをご購入されるケースが多かったのですが、コロナ禍以降は、趣味で軽トラックを活用するお客様のニーズが増えています。
一般の方は、軽トラックをお仕事クルマではなく、気軽にアウトドアに活用できる新しいクルマとして捉えているようです。ですから、増車や別荘用のクルマとして、弊社のパーツを装着したコンプリートカーをご注文される人も多いですね。
やはりキャンプ道具や遊び道具を満載してアウトドアを楽しむ人が多いですが、最近は、荷台に125ccの小さなバイクを積んで各地に出向き、ゆるく林道ツーリングを楽しむ人も増えてきてますよ(田中氏)」
軽トラックの荷台を活用したテントキットが好評の軽トラックカスタムパーツブランド「Bug-Truck」の山本剛史さん(カーファクトリー ターボー)にも話を伺ったが、軽トラックのカスタムニーズは衰えることを知らず、コロナ禍でも盛況だという。
「Bug-Truck」のスーパーキャリー用多機能テントキット。軽トラがテント式キャンパーに変身
現在、荷台で車中泊も楽しめるテントキットは、約3.5カ月待ちとなるという。
ちなみに、軽トラックの2大ブランドであるキャリイとハイゼットの人気について、「HARDCARGO」と「Bug-Truck」に両社に尋ねたところ、やはり人気でいえばハイゼットだという。
その理由としては、ハイゼットの乗用車感覚の運転感覚や乗り味、使い勝手のよさなどを挙げる。また「Bug-Truck」の山本さんは、「ハイゼットのほうがカスタムパーツも多い。だからキャリイは自分だけの一台にこだわるカスタム派が多いかな」とのことだった。
■軽トラ市場はホンダ撤退により「スズキVSダイハツ」となった
あくまで個人的な考察だが、やはり唯一の4速AT搭載となる「キャリィ60周年記念車」は、個人ユーザーがメインターゲットではないかと思う。趣味で軽トラックを活用する人ならば、そのフィールドも、より広くさまざまなケースが想定され、ロングドライブには運転負荷や燃費の低減効果の高い4速ATのメリットは大きい。
さらに軽トラック市場は、ホンダの撤退もあり、完全にスズキVSダイハツの構図となっている。現時点ではハイゼット優勢の風向きだ。そのため、スズキも従来の価値観とは異なる進化の必要性を感じているのではないだろうか。
奇しくもダイハツ ハイゼットも、2020年で発売より60周年を迎えたばかり。長年のライバル対決が、個人ユースという新たな市場でどのような戦いを見せていくのかに興味津々だ。
ダイハツ「ハイゼットトラック」 ハイゼットシリーズは2020年11月に60周年迎えた。ハイゼットシリーズには、スーパーキャリーに相当する「ジャンボ」をいちはやく用意している
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