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ファミリーカーの今──新型スズキ・ソリオ試乗記

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ファミリーカーの今──新型スズキ・ソリオ試乗記

フルモデルチェンジした新型スズキ「ソリオ」に今尾直樹が試乗した。スズキでいちばん売れている普通乗用車の魅力とは?

合理思想に感動

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新型スズキ・ソリオの試乗会が千葉県の幕張で開かれた。1.2リッター直列4気筒ガソリン・エンジン+マイルド・ハイブリッドを主力とする前輪駆動(4輪駆動もある)の小型ミニバンで、このクラスの先駆的存在だとスズキは主張している。

その特徴は、全長4m以内の小型車で、たぶん世界一広い、居住と荷室の一体型空間を実現している点だ。全高を高くとることで広々とした空間を実現し、後席のレッグルームなんてショーファー・ドリブンのごとく広大、スズキの鈴木修会長も会長車に選んでおられる。

前席と後席はウォークスルーが可能で、たとえば、小さな子どもを後席のチャイルド・シートに乗せ、クルマから降りることなしに運転席に移ることができる。後席を前にたためば自転車を乗せることもできるし、前後席を後ろに倒せば、ほぼフルフラットになって、車中泊もラクラクだ。

HIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKAもちろん、ミニバンだったら、これらは当たり前の機能である。それを全長3790mm×全幅1645mmというコンパクト・サイズで実現した。そこにスズキのオリジナリティがある。ル・コルビュジエとかミース・ファン・デル・ローエとか近代建築の巨匠が見たら、その合理思想にウルッと感動、まではしないとしても、共感するのではあるまいか。

ちょっと待ってください。“スーパーハイトワゴン”だったら、元祖のダイハツ「タント」があるでしょう。スズキにも「スペーシア」があるし、販売台数ニッポン一のホンダ「N-BOX」もある。コルビュジエが感動するとしたら、そっちでしょ?

HIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKA軽のワゴンがあるから軽の特典のない小型のワゴン車はいらない、と、思うのが、筆者を含めた勝手な思い込みで、事実、ソリオはいま、国内市場でいちばん売れているスズキの小型車なのだ。2015年に登場した先代3代目は、モデル末期というのに2020年4~9月のブランド通称名別販売台数で第17位を維持している。

ちなみに、おなじ統計で第6位のトヨタ「ルーミー」はダイハツ「トール」のOEMだけれど、これら1.0リッター直列3気筒の小型ミニバンの登場は2016年。ソリオは「ワゴンRソリオ」として2000年に発売となり、2011年発売の2代目でスライド・ドアをリア両サイドに採用しているから、スズキのほうが5年早い。

小型モーターの効果

オレンジ色のハイブリッドMZ、すなわち、いちばん高いグレードのモデルに乗り、幕張近辺のイオン・モールやコストコを右手に見ながら、トコトコ、一般道をフツーに走っていると、う~む。幸せって、これでいいのか。と思うに至った。

新型ソリオは、スマッシュ・ヒットとなった3代目に地道な改良をくわえたモデルだ。ボディ内外のデザインを一新しているけれど、プラットフォームと1.2リッター直列4気筒ガソリン・エンジンとISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレター)を組み合わせたマイルド・ハイブリッドのシステムは継承している。

HIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKA先代同様、ピラー類を真っ黒けにして屋根が浮かんでいるように見えるフローティング・ルーフを採用、水平方向を強調することで、高い全高にもかかわらず、安定感を醸し出している。

リアのオーバーハングを80mmほど延ばしたのは荷室空間を拡大するためで、オウナー調査でもっとも要望が多かったということだ。ライバルのルーミー/トールと較べても、早急に改善すべき弱点だった。そこさえ修正すれば、ルーミー/トールは1.0リッター直列3気筒ガソリンターボ、ソリオは1.2リッター4気筒のマイルド・ハイブリッドということで、スズキにも勝ち目のない戦ではなくなる。

HIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKA実際、新型ソリオはかなり静かなのだ。試乗したハイブリッドは、12.5という高圧縮比を特徴とする1.2リッター直4ガソリン・エンジンにISG(モーター機能付き発電機)を組み合わせたマイルド・ハイブリッドで、エンジンは最高出力91ps/6000rpm、最大トルク118Nm/4400rpmを発揮。3.1psと50NmのISGは微力ながら、発進時と加速時に行うエンジンの助太刀ぶりはまことにあっぱれなものがある。

たとえば、発進時はエンジンをまわさずともISGがEVもかくやの働きを見せる。さらに踏み込んでも、思いのほか静かなのは、ISGが加勢しているからだ。減速時にはエネルギーを回生して、運転席の下の少量容量の12Vリチウム・イオン電池に蓄える。停車時はアイドリング・ストップでエンジン休止。再始動は通常のスターターより大きなパワーを持つISGが即座にこれを行うので、一瞬でエンジンがかかり、しかもそのさい、ぶるるんッとボディが震えたりしない。

2480mmというロング・ホイールベースに、165/65R15という控えめなタイヤの選択もさいわいしてか、前ストラット、後ろトーションビームという小型前輪車の定番のサスペンションながら、乗り心地がけっこうよい。ボディや足まわりに加えられた防音・防振対策が効果を発揮しているのだろう。

HIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKA理想的なファミリー・カーの1台

高速巡航も試してみた。少なくとも強い横風がなければ、100km/hでちゃんと真っ直ぐ走ることができる。このような動的性能は660ccで、全幅1.48mの縛りのある軽自動車には望めない。

試乗後、エクステリアとインテリアを担当したデザイナーの人それぞれと話す機会があったので、たとえば、試乗時にたまたま見かけたスズキの大型バイク、「ハヤブサ」に乗っているひと向けに、ボディに「隼」と一緒に入れるとか、もうちょっと明るい、たとえばラパンみたいにベージュの内装の仕様をつくってみるとか、するのはどうでしょうか、と、提案してみた。

HIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKAでも、おふたりのデザイナーによると、新型は、2000年の初代以降、累計38万5888台が販売されたソリオの買い替え需要を主なターゲットにしていること、そして、期待されるのは他社セダンからの乗り換えを含む、いわゆるダウンサイザーで、購買の中心は40~50代であること、などの事情があり、ソリオのオウナーはむしろ目立たないほうを好まれるという。なるほどなぁ。

2020年3月にスズキは100周年を迎えた。個人経営の織機工場は、いまや自動車だけで年産300万台の大企業に成長した。『スズキ100年史』の巻頭に鈴木修会長が謙虚に記しているのを一部抜粋する。

「スズキ100年の成績は、試合に例えるならば『100戦51勝49敗だった』と感じています。これは『負け戦となり、一旦は引き下がっても、何とか勝つ方法を探して、勝ち戦にしてきた』という意味です」

「『お客様の立場に立って、価値あるもの、使いやすいもの、便利なものを提供する』。このことはこれまでも、そしてこれからもスズキのものづくりから決して欠くことのできない基本であると考えております」

HIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKA新型ソリオでもまた、徹底的にお客様の立場に立った商品づくりがおこなわれている。だから、これは絶対にないわけですけれど、もしもですよ、もしもソリオの「隼」仕様、ラパン仕様が出てきたとしたら、それは筆者の提案ゆえです。

お呼びじゃない? こりゃまた失礼しました。

価格は試乗車で200万円ちょっとで、ダイハツ・トールより1気筒とマイルド・ハイブリッドの分、ちょっぴり高い。

HIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKA例によって、マジメな顔のソリオと、ちょっとワルい顔のソリオ・バンディットがある。12月4日に発売された新型の場合、6:4でソリオのほうが多い。先代は5:5だったから、やがてそれに近くなっていくことが予想される。

グレードは、ソリオは3種、バンディットは1種のみ。ともに4WDもある。ピュア・ガソリン仕様は158万1800円で、トールの一番安いモデルの155万6500円より、やっぱりちょっと高いけれど、1気筒、200cc多いのだからお値打ちともいえる。販売目標は月販4000台。

賢い消費者たらんとするひとにとって、理想的なファミリー・カーの1台でしょう。

文・今尾直樹 写真・小塚大樹

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