上司「90分やるからレゴでスポーツカーを作れ」
上司からの指示で、AUTOCAR英国編集部のプライヤー、ペイジ、フィリップスの3人の記者がレゴを手に、それぞれ独自のスポーツカーを作ることになった。与えられた時間は90分。何を作ったかを文章に起こし、それからプライヤー記者(筆者)が公平に勝者を決めるように、とのお達しだ。
【画像】自動車雑誌のライターが「理想のクルマ」を作ってみた【レゴ制作に励む英国編集部記者を写真で見る】 全8枚
筆者が当事者では公平な判断はできないので、編集チームで審査してもらうことにした。「コンクール・デ・レゴ」とでも言うべきだろうか。
フェリックス・ペイジ君、3台のどれかに投票するコンテストで、1票も入らなかった君の苦悩は、筆者にはよく分かる。君がなぜBMW E30型M3を作ろうとしたのかは理解できるが、それが達成できたかどうかは分からない。
そのリアウィングにはプリムス・スーパーバードの面影がある。ボディとホイールのサイズ比率は明らかに欧州のスポーツセダンというよりも米国の大型車である。新しいローライダーのコンセプトだと言われていたら、もっと多くの票を集めたかもしれない(そうでないかもしれない)。
筆者のグレーのバギーには7票入ったが、その過程で嫌な思い出がよみがえった。筆者の子供たちは15年以上前にスノーウィーという年老いたポニーを飼っていた。そして、偏狭なポニーショーの審査員たちはそれをよく知っていた。
スノーウィーはホースで水をかけられ、ブラッシングされ、蹄の爪を磨かれ、馬具をピカピカに磨き上げられてから、専門家のパネルに披露された。専門家パネルとは、スノーウィー以外の誰にでもバラ色のリボンを配る、ツイードのスーツを着た夫婦のことだ。不公平感が一気によみがえってきた。
「グレーのやつは、背景を使って客観性を曖昧にしようとしている」と、残酷なクリス・カルマー記者が言った。
「背景はごまかしだ。それに床にはメガサイズの土台ピースが置いてあるし、天邪鬼だ」と、支離滅裂にチャーリー・マーティン記者がまくしたてた。
「オフロードバギーが勝てないなら、それは不正だ」と、アラステア・クレメンツ記者は正しく推測した。
優勝したサム・フィリップス君の話をしよう。筆者は、彼の赤い「アームストロング・ピドリー号」が形作られていくのを見ていた。ある瞬間はボートのように見えたが、次の瞬間には、この丁寧に仕上げられたクラシックなロングボンネットのヒルクライマーに変わった。
「リアのトレッドが狭いので、正直言って乗り心地は悪そう」と、ダイナミクス専門家のマット・ソーンダース記者は言った。無理もないが、筆者がそれを言うのは負け惜しみからだ。フィリップス君は13票を獲得し、圧倒的な勝利を収めた。
「赤いのが一番だ」とカルマー氏は言った。
「赤いやつ、バギー、そして4位が白いやつ」とマーク・ティショウ記者は言った。
「まったく、君たちオフィスワーカーは楽でいいよな」とカメラマンのマックス・エドレストン氏は言った。
では、レゴで作られた3台の素晴らしいマシンを、それぞれ制作者のコメントとともに紹介しよう。
マット・プライヤー – オフロードハイパーカー
一部の自動車メーカーによると、公式のプレス用写真は特定の角度と距離から撮影され、それから大幅に後処理されているという。
しかし、一般の人々はクルマをあらゆる角度から見ることになるので、それはナンセンスなやり方であり、僕(マット・プライヤー)はそんなことに時間を割くことはない。フェリックスが僕のオフロードハイパーカーのジオラマを間違った側面から撮影したことに気づくまでは。明らかに、背景はジオラマの奥に置くべきものだ。
ちなみに、背景を入れるのは不正行為でもごまかしでもない。ただ、バギーはそれほど複雑な構造ではないので、時間が余っただけだ。
僕はまず、全体のトーンを決めるホイールを探すことから始めた。フェリックス・ペイジ君が言うように、適切なサイズのホイールはあまりなかったのだが、オフロードスポーツカー用にぴったりのものを見つけた。
人間味とスケール感を加えるために、運転席を配置した。次に、ホイールベースを決め、フロントのオーバーハングをリアよりも短くした。その方が、比率的に速そうに見えるからだ。
そして、あちこち探し回って、キャノピーを片側に配置し、インテーク付きのエンジンらしきものを見つけた。その結果、すぐにコンセプトに似てきた。
次に細部に取り掛かった。バギーはたった30~40ピースでできているのだが、少々やり過ぎたかもしれない。ちょっとしたエアロパーツを付けた。フロントライトとリアライトも。エアスクープは効果的な高さに上げた。作業は完了し、時間も余裕があった。
他の仲間を待っている間、ぼんやりする代わりに、背景に作ってみようと思った。土台となるものを見つけ、グレーと茶色の表面加工を施して荒れたコースを表現した。
木を植え、廃墟のような建物と捨てられた馬車の車輪を置いた。バハや地中海のクロスカントリーラリーを走っているようなイメージだ。
僕はそのプロポーションに満足していた(とはいえ、結局はノーズ部分にボリュームを持たせ過ぎたと思うが)。そして、もしこの3台が本物だとしたら、僕が一番運転してみたいのはこれだ。
満足した僕は、リラックスして座っていた。その間、ペイジ君がうっかり正面からではなく背後からジオラマを撮影し、編集チーム全員にメールを送ったのだ。はぁ(ため息)。
しかし、剣を取るものは剣によって滅ぶ、と言われているように、どんな風に撮影されても精査に耐えるデザインでなければならない。だから、僕は評価を甘んじて受け入れよう。ブラボー、フィリップス。
サム・フィリップス – アームストロング・ピッディ号
読者の皆さん、正直に告白しよう。わたし(サム・フィリップス)のエンジニアリングの才能はそれほど広くはないが、自宅にはレゴのセットがたくさん隠してある。
レゴがたっぷり詰まった大きな箱2つを抱え、ワクワクしながらアリーナ(オフィスの会議室)に入ると、雨の日に学校で泥んこ遊びをしていた頃に戻ったような気分になった。当時も同様に素晴らしい乗り物が考案されていた。
わたしは、クラシックなトライアル仕様のバギーで泥だらけの丘を突っ走るのが好きな人間なので、これをレゴ作品のインスピレーションにしようと考えた。
どんな種類のブロックが用意されるかまったく知らなかったので、わたしはシンプルに、シャシーには平たい形のものを、ボディには小さなブロックを使うつもりだった。
そして、ペイジ君が用意してくれたレゴの箱にテクニックパーツが入っていたら、それをアクスルに使おうと思っていた。
「興味深い」E-Dirty M3用の白いパーツだけを見つけるためにレゴを漁り回った、彼の熱心な姿勢を非難することはできない。
膨大な数のレゴのパーツに圧倒され、その中からテクニックパーツを探しているうちに、選ぶべきパーツが多すぎて途方に暮れてしまった。
そして、頭の中で思い描いたアイデアに合うようにシャシーを必死に調整している間にも、ペイジ君とプライヤー氏はどんどん作業を進め、早くも構造を形作っていた。
試行錯誤(そして悪態)を繰り返した結果、アームストロング・ピドリー号が形になり始めた。ボンネット、フロントガラス、ヘルメットを被ったフィギュアがわたしの作品を引き立て、スペアタイヤとロールバーがクラシックなトライアルの雰囲気を醸し出している。
そして、フロントアクスルとバルクヘッドの結合が実現した。ありがたいことに、終了間際の数分でうまくまとまった。
わたしの頭の中では、自分のクルマはデロウMk1やトロールT6のような外観になるはずだった。しかし、実際には、セイウチの顔をしたウィリアムズFW26の後部に追突したマセラティ250Fのようなものができあがった。
マット・ソーンダース記者の意見には同意する。もっと時間があれば、後輪のアクスルを長くして、フロントエンドもきれいに整理できただろう。しかし、大きなホイールを選んでよかったと思っている。このホイールは、間違いなくわたしのクルマのテーマとバギーのようなプロポーションを支えてくれた。
ペイジ君がバトル前の不正行為を告白したことと、プライヤー氏が「環境」と呼ぶもので審査員を味方につけようとしたことを考えると、正直な戦術で組み立てた男が勝利宣言するのは当然のように思えた。
1つだけ言っておくが、わたしは編集委員が作ったレゴのトロフィーよりも良い賞品を期待していた。
フェリックス・ペイジ – E-dirty M3
僕(フェリックス・ペイジ)は、エンジニアリングの才能が全くないことを、本質的にはズルをして補おうとした。
このチャレンジのために探し回ったレゴの山は、僕の子供時代の寝室から解放されたものだった。つまり、プライヤー氏とフィリップス氏と会う前に、僕は2、3日かけてゲームプランを練る時間があったということだ。それが役に立ったかどうかは別として。
僕は、従来のレゴブロックは、1980年代のクルマに共通する角ばったシルエットを再現するのに適していると推測した。しかし、僕の不器用さや独創性の欠如により、その時代の有名な技術革新を作品に取り入れることができないため、よりシンプルな、あえて言えば純粋なデザインを目指す必要があった。
だから、まずはBMWのE30型M3を基本的に再現することから始めた。ミュンヘンが生んだ偉大なスポーツセダンの直線的な3ボックスシルエットは、理論的には「従来」のレゴで再現するのが簡単なはずで、最初の30分ほどはかなり順調に進んだが、巨大な浴槽がみるみる空虚になり、時計の針が2倍の速さで進んでいるように感じられた。ど、どうしよう……。
問題は、自分が何をやりたいことついて、あまりにも硬直した考えを持っていたことだと思う。そして、その考えを貫くあまり、遊び心や創造性をほぼ完全に犠牲にしてしまったのだ。
例えば、典型的な1×6のブロックなど、正しい色のブロックを見つけ、それが何であれ、シル強度を高めるため、あるいはアクスル取り付けポイントとして、あるいはフロアパネルの中央に無意味に取り付けるなど、何としてでも組み込むようにした。
フィリップス氏がトライアルバギーのリアトレッドを細かく調整し、プライヤー氏がジオラマに適した植物を調達する一方で、僕は無意味にサイドウィンドウを追加したり、ナンバープレートのマウントを探したりしていた。
だから、レビューを読むのはかなり辛い(特に「4位」という評価は)が、少なくとも評価は公平だ。
魅力的でシンプルな「ハイパーバギー」や、純正のレゴキットのようにうまく組み立てられたヒルクライマーの隣に並べられた僕のスーパーサルーンは、幼稚で、計画性がなく、バランスが悪い。
大きなホイールを履かせれば、もう少し良くだろう。ライバルたちがテクニックのパーツを革新的に活用しているのを見ると、時代に合ったパーツに限定しなければよかったと思うが、結局のところ、何よりも僕が抑制的になってしまったのは、革新よりも模倣を試みたからだと思う。
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