リトラクタブル・ヘッドライトの2台
英国はそろそろ朝晩が肌寒い。ヤシの木が並ぶグレートブリテン島の南東部、エセックス州の海岸線には、まだカラフルなビーチパラソルが列をなしていた。
【画像】マツダRX-7とポルシェ944 カブリオレ2台 先輩・後輩に当たるコスモとRX-8、968も 全89枚
そんな景色へ滑り込ませるように、2台のクラシック・コンバーチブルを停めた。紅白の鮮明なボディへ、少なくない視線が注がれる。
ガーズ・レッドのポルシェ944 S2は、ブランドの定番イメージからは外れているだろう。1989年当時の新車価格は約3万9000ポンドで、クーペより5000ポンドも高かった。登場から30年以上が経過するが、いまでも優雅な佇まいには自信が溢れている。
他方のマツダ・サバンナRX-7 ターボIIは、活発なサウンドを響かせ意欲的。鮮やかな青空に、純白のボディが映える。このクルマの存在を知っている英国人は、今となっては少数かもしれない。
1989年の英国価格は2万4000ポンドだった。新車の頃は944より手頃ではあったが、現在では遥かに珍しい。同年式のFRのポルシェより、多くの関心を集めるクルマだろう。
2台ともリトラクタブル・ヘッドライトが与えられ、優しくカーブを描くフロントノーズの先端は低い。ブリスター状に膨らんだフェンダーが、小ぶりなアルミホイールを引き立てている。クルマへ近寄ると、インテリアのディティールも観察したくなる。
意気揚々と路面を掴む944 S2 カブリオレ
ポルシェ944 S2 カブリオレは、端正なフォルムから想像する通り、意気揚々と路面を掴んで走る。肉付きの良いテール周りと彫りの深いボンネットは、先代の924からの進化を感じさせる。
そもそも924は、フォルクスワーゲンとの共同開発プロジェクトとしてスタート。長いボンネットに、アウディ100譲りの直列4気筒エンジンを搭載し、トランスミッションがリアデフ側に組まれるトランスアクスル構造が取られた。
それに続いた944ではスタイリングを継承しつつ、928用のV型8気筒を半分に切り落とした4気筒エンジンへ置換。ボアアップで排気量を2.5Lにした、正真正銘のポルシェ・ユニットが載っている。
一体成型された強固なエンジンブロックには、三菱が特許を保有していた技術、バランサーシャフトが組み合わされ滑らかな回転を実現。ノッキングセンサーの採用で圧縮比を高め、熱力学的に最適化されたポルシェだと、自負されたユニットだった。
1987年の944 Sでは、ダブル・オーバーヘッド・カム(DOHC)化。1989年のS2では3.0Lへ拡大され、10.9:1の圧縮比で211psを実現させた。オプションでSパッケージが用意され、944 ターボ用のボディキットやサスペンションを組むこともできた。
944にコンバーチブルが設定されたのも、S2になってから。クーペボディからの構造変更を請け負ったのは、ドイツ・シュツットガルト近郊に構えていたコーチビルダーのカロサビヴァーク・ヴァインスベルク社。後のアメリカン・サンルーフ社だ。
911から影響を受けたダッシュボード
ルーフの切除に合わせてシャシーを強化し、専用のフロアパンを溶接。ボディシェルの要所要所には、補強用ブレースも追加された。フロントガラスの高さが削られ、ルーフラインはクーペより低くなっている。
944の特徴といえた大きなガラスハッチは、フラットなデッキパネルへ交換。トランスアクスルの上に充分な荷室を確保するため、リアエンドはクーペより若干高くなっているが、折りたたまれたソフトトップが載ることでバランスは悪くない。
リアビューは、スクエアなテールライトとS2特有のスプリッターが相乗し、シンプルでありながら個性的。ジャーマン・クラシックとして、訴求力のある見た目だと思う。
944 S2のダッシュボードは、911から影響を受けたであろう4連メーターや、きれいに整列したスイッチ類が好印象。ビニールレザー張りで仕立てられている。
ボディと同じガーズレッドとブラックのツートーン・シートは、自己主張が強い。当時物の自動車電話に、ブラウプンクト・ドレスデン社製のカーステレオなど、イケイケだった時代の記憶が蘇るという読者もいらっしゃるだろう。
一方で、走りにはもう少しの時代を感じる。ステアリングホイールとペダルは想像以上に重く、低速域では硬いサスペンションがシートへ振動を伝える。反応には若干の曖昧さが伴い、起源とする技術が1970年代にあることをうかがわせる。
速度が上昇するほど扱いやすくなる
3.0Lと巨大な直4エンジンは、変速を多少サボっても不足ないトルクをみなぎらせる。右足へ少し力を込めれば、ポルシェらしいスピードへスルスルと加速していく。さらに倒すと、ザラついたノイズとともにパワーが放たれ、背中がシートへ押し付けられる。
速度が上昇するほど、ステアリングホイールやペダル、トランスミッションが扱いやすくなっていく。路面がうねっていても、突出した安定性で意に介さない。
タイトなシートに身体を委ね、優秀なサスペンションの仕事ぶりや感触豊かな操舵感に浸る。長いボンネット越しの視界と、トランスアクスルの重量配分を味わいながら、連続するカーブを正確に抜けられる。望外の楽しさ、というわけではないが。
そんなポルシェの印象とは対象的に、FC型のマツダ・サバンナRX-7はエネルギーに溢れている。ステアリングホイールは指先で操れるほど軽い。コーナーからコーナーへ、軽快に飛び込んでいく。落ち着き払った944 S2と比べると、より自由度が高い。
2基のロータリーがターボの過給圧を高めるまで、少々の時間を要する。準備が整えば、大きなトルクの波に乗るように、勢いよく前方へ押し出される。
小気味よくエンジンは回転し、トップエンドまで鋭いアクセルレスポンスは衰えない。7000rpmに設定されたレッドラインは、少々過保護に思えるほど。公道では、スピードを自制しながら走ることが難しい。
この続きは後編にて。
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