■ライバルひしめくコンパクトSUV市場に満を持して登場した新型ヴェゼル
ホンダのコンパクトSUVである「ヴェゼル」。2021年4月23日に発売されてから半年が過ぎました。発売半年の販売成績はどのようなものかを振り返ってみます。
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ヴェゼルは、言ってしまえば、Bセグメントのコンパクトカー「フィット」のSUV版です。
そして、フィットは、車体の真ん中の床下に燃料タンクを配置する「センタータンクレイアウト」を採用するのが特徴です。
多くのクルマは後席の下に燃料タンクがあるのに対して、フィットの燃料タンクは床下。この違いによって、フィットはライバルよりも後席まわりやラゲッジルームを広くすることができます。
そんなフィットのSUV版であるヴェゼルも、当然、センタータンクレイアウトを採用していますから、やはり室内空間が広いのが魅力。さらに、ヴェゼルは全長が4330mmもあって、Bセグメントのクルマとしては、少し大きめ。ですから、もう少し大きめなSUVをライバルにすることも可能です。
ちなみに、トヨタはコンパクトSUVに、Aセグメントの「ライズ」、Bセグメントの「ヤリスクロス」、Cセグメントに「カローラクロス」と「C-HR」という4台を揃えます。
それに対して、ホンダのコンパクトSUVはヴェゼルひとつ。トヨタよりも、1台でより広いニーズに応えているというのがヴェゼルの特徴となります。
とはいえ、トヨタがコンパクトSUVをこれほど数多く揃えたのは、ここ数年の話。その前は、逆にコンパクトSUVといえば2013年12月にデビューした初代ヴェゼルが大きな存在感を誇っていました。
登場翌年の2014年には年間約9万6000台を売り、販売ランキングで7位に入るスマッシュヒットを放ちます。小さいSUVで便利というだけでなく、ルーフの形がクーペっぽくて、おしゃれ&スポーティな雰囲気があったのも初代ヴェゼルの魅力でした。
そうした、おしゃれでスポーティな雰囲気は、2代目となる現行モデルにも引き継がれました。
新型のコンセプトは「AMP UP YOUR LIFE」というもので、“日々の生活の楽しさを増幅する”ことが狙いです。そのために「誰もが自信と安心感を持って運転できる」「美しいデザインだけでなく、使う人の所作も美しく見せる」「爽快な運転体験」を提供するといいます。
具体的には、1.5リッターのハイブリッド「e:HEV」とエンジン車の2種のパワートレインを用意。
ハイブリッドはモーター駆動中心のスムーズな走りが特徴で、エンジン車はリニアで爽快な加速感が楽しめます。価格はハイブリッド車が約266万円から330万円、エンジン車が約228万円から250万円。月間販売目標は5000台。つまり、年間6万台の販売が目標です。
先代よりも目標数は低めですが、先代は「ライバル不在」での好成績。今はライバルがひしめきあうという厳しい状況ですから、目標数を下げるのも当然のことではないでしょうか。
■フルモデルチェンジから半年経った新型ヴェゼルの販売状況は
では、実際のこの半年の新型ヴェゼルの売れ行きはどのようなものだったのでしょうか。
まず、発売直後にホンダから出たリリースは「発売1か月で受注が3万2000台超」でした。
これは目標の6倍であり、年間目標の半分をクリアしています。まずまずというか、なかなかの良いスタートダッシュとなったようです。
驚くのは、その内訳です。なんと、93%がハイブリッド。ガソリン車はたったの7%しかありません。価格帯の高いほうがたくさん売れているというのは、ホンダとしては嬉しいことでしょう。
また、81%がFFで、4WDはわずか19%。FFのハイブリッドが主流ということは、やはり使われるのは街中が多いということでしょう。
そして、実数としては、以下のように推移していきます(一般社団法人日本自動車販売協会連合会調べ、乗用車ブランド通称名別順位より。軽自動車を除く)。
2021年
5月 11位 4060台
6月 9位 5692台
7月 6位 7573台
8月 10位 4404台
9月 9位 3901台
10月 5位 6831台
2021年5月から10月の6か月合計 3万2461台
発売から3か月後の7月に6位まで順位をアップさせ、半年間で約3万台というペース。まずまず、順調な売れ行きといえるのではないでしょうか。
ちなみに、最強のライバルとなるヤリスクロスは、2020年8月の発売から約1年間でおよそ11万台が売れています。
それと比べられると、ヴェゼルの数字はちょっと寂しいものがありますが、それでも目標どおりの数字。決して悪くはありません。
2021年は、9月いっぱいまでコロナ禍の緊急事態宣言下という異常事態でした。それを克服しての数字と考えれば、健闘といえるでしょう。
※ ※ ※
ただし、この先の予測はけっこう微妙なものがあります。現在のように全国的に新型コロナ新規感染者が下火になれば、クルマの販売にも期待が持てますが、一方で世界的な半導体不足で生産が滞る可能性も。プラスとマイナスの両方があるというわけです。
まだまだ、ヴェゼルの売れ行きは不透明ということ。もう少し、注目する必要があるのではないでしょうか。
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