■マツダの「人馬一体」と「自動運転」は矛盾しない?
どこの自動車メーカーも、自動運転を見据えた先進の安全技術に取り組む昨今ですが、これは運転そのものの楽しさを追求することとは相反するのではないか、という見方もあります。
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2017年4月9日(日)、マツダが都内で開いた「安全取材会」の冒頭で、松本浩幸 執行役員 車両開発本部長が語った「コパイロット(副操縦士)コンセプト」と称するマツダの自動運転に対する考え方によれば、運転するのはあくまで人であって、クルマはドライバーの認知、判断、操作に異常を検知した場合、即座に運転をとって代わり(オーバーライドし)、自動運転により周囲を含め安全な状態を維持するといいます。
さらに、同取材会のメニューのひとつとして、高齢者の体の状態を身をもって経験してみようというものが用意されていました。おもりの入ったベスト、歩きにくいサンダル、足首まわりやひざ関節の自由が著しく制限されるサポーターなどを身に着けると、確かに杖なしでは歩くこともままならなくなります。加えて視界を制限するメガネもかけ、そうした状態でクルマの運転席に座ってみると、記者は正直、運転などとてもできる気がしませんでした。もしかすると周囲以上に、高齢者ドライバー本人も危険に思っているのかもしれません。
そうしたとき、クルマの側で高齢者の運転をサポートし、運転そのものを免許返納の最後の瞬間まで楽しんでもらおうというのが、マツダの考える自動運転のひとつの側面だそうです。
しかしマツダの安全に対する取り組みは、「i-ACTIVSENSE(アイ・アクティブセンス)」に見られるような、レーダーやカメラなどを駆使した最新の先進安全技術に関するものばかりではありません。たとえば、アクセルとブレーキのペダル位置を見直すという、ともすれば地味に思えるような点も改良しています。
■地味ながら大きな差がつくペダル配置の妙とは
前出の高齢者疑似体験セットを身に着けると、ひざを内側や外側へ回転させる幅が大きく制限されます。これがそのまま、アクセルからブレーキ、あるいはその逆のペダルの踏みかえを難しくさせます。また足の移動もままならないため、普通に踏みかえようとしてもペダルに足がひっかかるなどして、即座にしたい操作ができないという事態が起こりえます。
記者も実際に高齢者体験セットを身に着け、ひと世代前の「デミオ」の運転席に乗り込んでみましたが、特に上半身を後ろへひねり後進する体勢のときなど、即座にペダルを踏みかえようとしてもなかなかできず、そして何度もペダルに足をひっかけました。
続いて乗り込んだ現行モデルの「デミオ」では、足をひっかけるようなことはまったくなかったのですが、この差はそれぞれのペダルが20mm程度、配置が異なるからだといいます。加えて、アクセルペダルが吊り下げ式(上方からペダルが伸びる)からオルガン式(床面にペダルが接地している)に変更されていることや、運転席との位置関係を見直したことも、この踏みかえのしやすさにつながっているそうです。
実はこれは、右ハンドル車特有の問題でもあります。というのも、クルマの右前輪との位置関係から、ペダルのレイアウトに制約があるのです。よって、「ペダルの位置を見直す」といっても、実はシャシーからすべて見直すという、地味どころか大掛かりな作業になったといいます。
■その効果、86%減
マツダの「第6世代商品群」と呼ばれる、「アクセラ」や「デミオ」など主力車種の現行モデルに使われているシャシーは、このペダル位置をすべて見直していると、池田利文 統合制御システム開発本部 電子開発部長は説明します。たとえば「デミオ」では、先代より前輪の位置が50mm前にレイアウトされているそうで、ほか「アテンザ」や「CX-5」などにおいても、前モデルに比べ50mmから80mmほど前輪が前へ移動しています。
ここまでして作り出されたペダル配置の違いはほんの数十mmのものですが、その一見ささいに見える差が事故を防ぐことにつながるといいます。実際、公益財団法人交通事故総合分析センターの調べによると、2014年発売の4代目「デミオ」など現行モデルのクルマにおいて、ペダルの踏み間違い事故は前モデルに比べ実に86%も減少したそうです。
今回の「安全取材会」では、高齢者の運転支援をひとつのテーマとしていましたが、もちろん「i-ACTIVSENSE」などの安全技術やペダル位置の見直しは、高齢者向けに特化したものというわけではありません。若年層から高齢層まで幅広い世代に向けた安全技術の、ひとつの切り口ということです。そしてそこにある、運転の楽しさを追求する「人馬一体」という考え方と、自動運転を含む安全技術の推進のあいだに、なんら矛盾はないようです。
ちなみに取材会ののち、マツダの関係者も取材陣も「明日からジムに通おう」と口をそろえていました。疑似とはいえ高齢者の身体状態の体験は、やはり誰しも衝撃的だったようです。
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