テスラとヒョンデのEVを乗り比べ
自動車メディアでは毎年恒例となっている日本自動車輸入組合(JAIA)主催のメディア向け試乗会。この試乗会に若手自動車ライターの筆者も参加させて頂いた。今回は、現在トレンドであるBEVのSUVとして、専売メーカー「テスラ」の「モデルY」と日本に再上陸を果たした「ヒョンデ」の「コナ」の2モデルを同時に見ていく。
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いまでこそさまざまなタイプのBEVが存在するが、BEVの先進性というイメージを牽引してきたのはテスラの影響が大きいだろう。日々アップデートが行われることでの進化や、先進性を全面に押し出した操作系や充電設備(スーパーチャージャー)などが特徴的で、乱暴な言い方かもしれないが、これまでの自動車を否定するような側面すら感じる。
今回試乗したのは2022年に日本に導入されたモデルY。2023年には世界で120万台が納車され一年間でもっとも売れている自動車となったそうだ。試乗車はロングレンジモデルで航続距離は605kmとなっている。
対するヒョンデは2022年に日本市場への復活を果たした。日本市場ではFCEVも含めた電動車のみのラインアップであるが、世界的にみたら世界3位(2022年)の販売台数を誇る大手自動車メーカーだ。日本では新参者のイメージが強いかもしれないが、テスラに比べたら長年に渡って自動車を作り続けてきたメーカーであるということを忘れてはならない。
今回試乗したのは2023年11月に日本市場で発売されたばかりのコナ。日本ではBEVのみの展開となっているが、ほかの国では内燃機関車も用意されている。試乗車はラウンジと呼ばれる上級グレードで、航続距離は541kmだ。なお、基本的にどのグレードでも64.8kWhというバッテリー容量は同じ、受注生産となるエントリーグレードのカジュアルのみ48.6kWhとなっている。
クーペライクなシルエットを持つモデルYとオーソドックスなSUVのシルエットとなっているコナを見比べると、エクステリアが異なっているのは当然だが、差として驚かされるのがインテリアだ。コナのインテリアは各種スイッチ類が常識的に配置されていて「自動車」といった雰囲気がする。
対するモデルYは、ステアリングコラムから生えた2本のレバーとステアリングに備え付けられたふたつのボタン、そしてセンターに備え付けられたモニターのみだ。
何というか、モデルYはデザイナーが考えたシンプルなインテリアをそのまま体現したかのようだ。正直いろいろな操作をモニターから階層を通らないとできないため面倒くさい。その点は物理スイッチが多くあるコナのほうが使いやすくて好印象だ。
しかし、モデルYが世界で売れているというのだから、これがワールドワイドでウケているということになる。保守的な日本人だから不便に感じてしまうのか、それとも世界が目新しいものに飛びついているだけでまたコナのようなインテリアに戻るのか、それともモデルYみたいなインテリアがワールドスタンダードとなるのか……、個人的な正直な気持ちは、いままでどおりのままがいい。新しいワールドスタンダードができあがってほしくないところだ。
自動車メーカーが作ったコナと新しい価値観を持つテスラ
実際に試乗してみるとインテリアで感じた差が走りにも表れていた。コナは良い意味でBEVらしくなく、これまで内燃機関車やハイブリッド車に乗っていた人でもスグに馴染んで運転しやすいはずだ。
各種操作系のフィーリングも特出した部分がなく、違和感が少ない。BEVにありがちなモーター音の演出もなく、車内の静粛性も高い。BEVで重量があるため路面のギャップでユサユサと揺られる印象はあるものの、突き上げ感はなく角が取れている印象で乗り心地は比較的良好だ。
また、パドルシフトで回生ブレーキを操作できて、一番強くするとワンペダル走行になるのも良い。内燃機関車ユーザーの気持ちをわかったような操作系だ。
対するテスラは先進性や新しい価値観を全面に押し出したような乗り味だ。モードを選択すれば鋭いスロットルレスポンスを見せるし、2トン近い車重を軽々と加速させる。ただ、足まわりは固い味付けになっていて、正直コンフォート性能に関しては疑問を感じたし、足まわりのバタつき感も気になる。ただ試乗車がスタッドレスタイヤを装着していたことはお伝えしておきたい(しかしながらサマータイヤでもコンフォート性能はコナのほうがいいだろう)。
また、メーター類がないため速度などもセンターパネルに表示されるが、視線の移動が多くなってしまうことには個人的にはネガティブに感じた。ここまで先進性をアピールするならばヘッドアップディスプレイを装着してほしいところだ。
「自動車メーカーが作ったBEV」と「新興メーカーが新しい価値観を提案するBEV」という違いを感じる試乗となった。個人的にはコナの完成度に驚かされたところだ。日本やヨーロッパの老舗自動車メーカーもウカウカしていられないのでは……と思ったほどであった。
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