トヨタのコンパクトSUVのライズが人気で売れまくっている。2020年1月は1万220台を販売して小型/普通車の販売トップに躍進。売れすぎてオーダーストップがかかったほどだ。
その大人気のライズの売れ方の特徴として特筆すべきは、残価設定ローンの利用率が非常に高いことだ。長らく日本に根付かないと言われていた残価設定ローンが人気の要因は何なのか? ライズだけに限った特別な現象なのか? 渡辺陽一郎氏が考察する。
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文:渡辺陽一郎/写真:TOYOTA、DAIHATSU、LEXUS、平野学、佐藤正勝
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2020年1月に小型/普通車の販売1位に輝いたライズ
ライズは全長3995×全幅1695×全高1620mmの5ナンバーサイズだからコンパクトカーからの乗り換え組でも不安なく運転できる
トヨタのコンパクトSUV、ライズが絶好調で売れている。2019年11月に発売されると、小型/普通車販売ランキングの上位に喰い込み、12月はカローラシリーズに次ぐ2位となった。
そして2020年1月は、小型/普通車の1位を奪い取っている。
1月は正月休みによって販売店の稼働日数が大幅に減るが、それでもライズの登録台数は、2019年中の契約が多かったから1万台を超える1万220台をマーク。2位のカローラシリーズは8480台だから、大差を付けている。
SUVは人気のカテゴリーだが、小型/普通車の販売1位になることは珍しい。2017年4月にC-HRが1位になったことがあるが、その後はプリウスに抜かれている。
ライズは価格の割にインテリアの質感が高いのもユーザーに人気がある要因のひとつ。SUVだから車高も高いのでアイポイントも高く快適性が高い
日本で残価設定ローンの利用率が上昇中!!
ライズの売れ方について販売店に尋ねると「残価設定ローンを使うお客様が多い」と返答された。
残価設定ローンの利用率は販売店によって異なるが、おおむね「50~60%」と返答する店舗が多く、「ライズは80%に達した」という情報も聞かれる。
残価設定ローンは、トヨタに限らず、各メーカーとも利用率を上昇させている。
2019年12月に発表され1月から販売を開始した新型ハスラーも期間限定ながら残価設定ローンの金利が優遇されているため利用者は多いという
理由は複数あるが、まず月々の返済額を安く抑えられるからだ。
通常ローンは車両価格の全額を返済して最終的にユーザーの所有になるが、残価設定ローンは違う。数年後の残価(残存価値)を設定して、残価を除いた金額を分割返済する。
例えば車両価格が200万円で、3年後の残価が40%だとすれば、残りの60%に相当する金額を支払うわけだ。
ライズは価格設定も安めとなっているため買いやすさも人気のポイント。1Lターボは98psとパワフルではないが、車重が軽いので動力性能にも不満は出ない
見方を変えると、使用期間中に価値が減る金額を支払うことになるから、カーリースに似たローンともいえるだろう。返済期間を終えても車両は自分の所有にならないが、月々の返済額は安い。
返済期間を終えた時には、車両の返却、再びローンを組んで乗り続ける、残価を支払って車両を買い取る、という選択のできるタイプが多い。
残価設定ローンはメーカーと販社に好都合
メーカーと販売会社にとって都合がいいのは、今まで使ってきた車両を返却して、改めて別の新車で残価設定ローンを組んでもらうことだ。そうなれば定期的に新車が売れて、高年式の下取り車も手に入る。
残価設定ローンであれば、返済期間の終了時に新車を売り込む絶好のチャンスが訪れるから、積極的に推奨している。
そして残価設定ローンの月々の返済額を安く抑えるためには、残価を高く設定して、金利は安く抑えることが必要だ。3年後の残価が40%なら3年間で60%を返済するが、3年後の残価が55%に高まれば、返済額は45%に減るからだ。
3年後の残価率は販売会社によって違うが、人気SUVのRAV4が45%程度ということを考えるとライズの残価率が優遇されているのがよくわかる
残価を高く設定できるのは、中古車市場で人気があり、高値で売却できる車種になる。そうなると残価設定ローンを利用するメリットが高いのも、注目されている新型車だ。
ライズZ・4WDの場合、トヨタモビリティ東京が設定する3年後の残価率(新車価格に占める残価の割合)は51%で、5年後でも35%に達する。
一般的な残価率は、3年後で40~45%だから、ライズは人気の新型車だけあって優れた条件が設定されている。
通常ローンより金利も大きく優遇
残価設定ローンの金利は、メーカーや販売会社にとってメリットの多いローンとあって、低めの設定だ。
販売会社によっては、車両価格の全額を返済する通常ローンの金利は年率13%近いのに、残価設定ローンは年率6%というケースもある。
このように通常ローンと残価設定ローンの金利格差が拡大すると、通常ローンのメリットは大幅に薄れてしまう。
レクサスNXバージョンLは税込み608万8000円と高額だが、残価設定ローンなら月々の支払額を抑えて乗ることができる
仮に5年間で車両価格のすべてを返済したいユーザーも、5年契約の残価設定ローンを組んで返済を続け、5年後に残価を支払うことで買い取った方が返済総額を抑えられる。
従って今では通常ローンを使うユーザーが減った。ローン利用者の80~90%は、残価設定型になっている。
金利の設定は販売会社によって異なる。ライズの残価設定ローン金利は、全般的に5~6%と低めだが、販売会社によっては3.9%の低金利も見られる。
販社によって損得勘定に差が生じる
ライズはすべてのトヨタの販売会社が扱うから、同じ条件を設定して、複数のトヨタ系販売会社から見積りを取るといいだろう。
値引き(ディーラーオプションのサービス装着なども含む)、残価設定ローンの残価率、金利の違いにより、販売会社に応じて月々の返済額に差が生じる。これを比較検討して、購入するディーラーを決めるわけだ。
さらに細かなことをいえば、同じトヨタ系販売会社でも、点検やオイル交換などの工賃が異なる。販売会社に応じて、さまざまな損得勘定に差が生じている。
いいことばかりではない
いずれにしろライズは、残価設定ローンと相性がいい。現時点で3年間の残価設定ローンを組み、返済期間満了時に車両を返却すれば、3年後だからライズの中古車流通量はまだ少ない。高値で売れるため、残価率を高めたり金利を抑えることが可能になった。
その結果、残価設定ローンでライズを購入するユーザーが増えたが、このローンには注意点もある。走行距離やキズの程度が規定の範囲に収まれば、残価は保証されるが、逸脱すると返却時に精算が生じてしまう。
特に問題になるのは、追突などの被害に遭った時だ。損傷が大きければ事故歴に該当して残価設定ローンの精算対象になるが、事故の相手方はそこまで補償してくれない。
クルマを運転していていると事故を100%避けることはできない。事故の可能性を下げるためにもライズを購入する場合、スマートアシストプラスを選びたい
対物賠償保険で補償されるのは修理費用のみだ。ユーザーに責任のない追突でも、精算による負担が生じてしまう。
この対策として、車両保険の新車特約(車両新価特約)に加入する方法がある。新車で買ったクルマの修理費用が協定保険価額の50%以上になった時、新車価格に相当する金額を補償するものだ。
これを原資にライズの新車を買えば、残価設定ローンの精算は防げるが、新車特約の保険料は高く、修理費用が協定保険価額の50%以上という厳しい条件も付く。
まとめ
残価設定ローンは手持ちの資金が少なくても新車を使える便利なローンだが、月々の返済額が少ないために、常に多額の債務を負担している。
車両を借りている心積りで大切に扱うことが求められ、なおかつ事故の被害に遭った時のリスク負担も小さくない。
対策として新車特約の付帯などを行えば、オトクといわれる残価設定ローンを利用するために、別の出費が生じることになる。
これらを踏まえた上で、損得勘定を総合的に判断したい。
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