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濃密な感覚を味わう ヴィーズマン・プロジェクト・サンダーボールへ試乗 EVロードスター 後編

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濃密な感覚を味わう ヴィーズマン・プロジェクト・サンダーボールへ試乗 EVロードスター 後編

最高出力の75%でも爽快に速い

クラシカルなスタイリングを持つBEVのロードスター、ヴィーズマン・プロジェクト・サンダーボール。発進は至ってシンプルにこなせる。

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小さなドアを開き、美しく仕立てられたスポーツシートに身体を納め、シートベルトを装着。ブレーキペダルを踏みながらスタートボタンを押し、センターコンソール上のDボタンを選ぶだけ。内燃エンジンのAT車と変わらない。

パワートレインのレイアウトは自由度が高く、コクピットにはゆとりがある。足もとは広々していて、ペダルのオフセット量も小さい。ボディの前後には、大きな荷室も用意されている。

ヴィーズマン社が指定した試乗ルートは、南フランスのコル・ド・ヴァンスという丘陵地帯。勾配の大きい素晴らしい道が広がり、初夏の気持ちいい太陽が燦々と照りつけている。ロードスターにうってつけだ。

ただし、まだ本領は発揮できない。冷却系が完成しておらず、駆動用バッテリーを温存する必要がある。680psという駆動用モーターも回生ブレーキも、最大値までは利用できない。

回生ブレーキを最強にすれば、ブレーキペダルを踏まずにアクセルペダルの加減で発進から停止までまかなえる、ワンペダルドライブも可能とのこと。パドルを弾いて、エンジンブレーキを掛けるように速度調整も容易だという。

少なくとも、最高出力が75%に制限されていても、サンダーボールは爽快に速い。トルクを分配するような四輪駆動ではなく、ロケットダッシュ級の加速力は得ていないが、むしろ公道には適している。

クルマの繊細な操縦性を味わえる

近年の高性能BEVのパフォーマンスは、瞬間的に発生する大トルクによる、息を呑むようなダッシュ力に注目が集まりすぎているように思う。確かに2.5t近くある車体をスーパーカーのように加速させることは、偉業だといえる。

だが、ドライビング体験の喜びはそれだけではない。クルマの繊細な操縦性を味わうことの方が、より充足感は高いはず。ローンチコントロールで暴力的に加速できたとしても、必ずしも長く幸せを感じるとは限らない。

プロジェクト・サンダーボールが搭載する、プリミティブな機械式LSDと後輪駆動というレイアウトでも、不満ない加速力を生める。さらに、これまで筆者が試乗したBEVには備わっていなかった、自然なアクセルレスポンスも実現させている。

ヴィーズマン社も最新のBEVとして、0-100km/h加速を誇示する必要はあったのだろう。だが、漸進的な中間加速もストロングポイント。このまま量産化されることを期待したい。

ステアリングやブレーキ、サスペンションは、パワートレイン以上に完成から距離があるということだった。E90型BMW M4譲りのエンジンを搭載するヴィーズマンMF4が達成していた、しなやかなまとまりには、まだ届いていなかった。

それでも、ステアリングの質感はとても印象的。重み付けは自然で、フロントタイヤの状態が手のひらへ鮮明に伝わってきていた。トラクションやスタビリティ・コントロールなしに、有り余るパワーを放っても大丈夫そうだ、という自信を与えるほど。

チャレンジングな道でも流暢に高速で操れる

メカニカルグリップが高く、意欲的にアクセルペダルを倒しても大丈夫。チャレンジングな道でも、すぐに流暢に高速で操れるようになった。

一方で、実力の111.9kg-mを発揮できたら、ここまでの親しみは感じなかったかもしれない。電子アシストなしのシングルモーター版と、電子アシストが機能したツインモーター版、どちらが楽しいのだろうと想像してしまった。

とはいえ、プロトタイプながら、大きな希望を抱かせてくれるロードスターだったことは間違いない。BMW M社由来のエンジンが放つ音響体験を楽しめないという事実はあるが、それはポルシェ・タイカンもまだ達成し得ない、新たなハードルといえる。

ヴィーズマン社がプロジェクト・サンダーボールで目指すものは、伝わる感覚の濃密さ。恐らく、安価に仕上がることはないだろう。だが、沢山の愛情が注がれるロードスターが誕生するのではないだろうか。

BMWのエンジンから電気モーターへの協力者

BMW社製のV8エンジンが前提で開発されたプロジェクト・ゲッコーのBEV化に向けて協力した、ロディング・オートモービル社。その創業者の1人で情熱的なギュンター・リードル氏にも、話を伺うことができた。

「電動のロードスターが、機能しない理由はありません。今のところ、完全に自動化された超知的な自動車を作ろうとは考えていません」

「ヴィーズマン社は、これまでも走りがいのある道のためのモデルを手掛けてきました。ステアリングホイール裏のパドルと、アナログのメーターを残した理由でもあります」。と話すリードルは、難しい課題へも果敢に取り組む。

ソフトウエアも、ヴィーズマン社と独自開発している。シートの座面を低く抑えながら、バッテリーモジュールをシャシーに搭載することも実現した。常に笑顔を振りまき楽しそうにしている彼の影響力は、素晴らしい結果を導いているようだ。

ヴィーズマン・プロジェクト・サンダーボール・プロトタイプ(欧州仕様)のスペック

英国価格:25万5000ポンド(約4156万円/予想)
全長:4440mm
全幅:2210mm(ドアミラー含む)
全高:1285mm
最高速度:−
0-100km/h加速:2.9秒
電費:6.0km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1700kg(予想)
パワートレイン:ツインモーター
駆動用バッテリー:83kWh(実容量)
最高出力:680ps
最大トルク:111.9kg-m
ギアボックス:シングルスピード・オートマティック

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