タイヤの前後位置交換(ローテーション)は、一般的には同じ位置のままずっと長期間使用していると偏摩耗を起こすため、その予防のためにやったほうがいいと言われる。しかし、そもそもなぜ定期的に実施したほうがいいのか、そのスパンやFFとFR、4WDなど駆動方式などについても違うのか、プロドライバーからの視点で語ってもらった。
文/ハル中田、写真/ベストカー編集部、ホンダ、AdobeStock(タイトル写真:fotoduets@AdobeStock)
アナタはやっていますか? タイヤの前後ローテーションを定期的にやったほうがいい3つの理由
■なぜタイヤのローテーションをすべきなのか?
タイヤのローテーションをしないことが怖い車種も存在すると筆者は指摘する(kelly marken@AdobeStock)
タイヤのローテーション。いいですね、これはやはり愛車のタイヤを大事にするための基本のキです。しかし、実際にタイヤのローテーション、皆さんはしていますでしょうか?
スタッドレスタイヤに履き替える方はその時にローテーションをすることでしょう。しかし、冬タイヤへの履き替えをしない方はどうでしょう? タイヤを買ってからずーーーっとそのままになっていませんか? 実はタイヤの点検すらも疎かになっていませんか?
今回はローテーションをすべき理由としないことの怖さ、そして特にすべき車種タイプについて書きたいと思います。
■ローテーションをすべき理由
タイヤを長持ちさせるためにもまずはローテーションを実践しておきたい
まずは何よりも、「タイヤが長持ち」します。前後左右に4本付いているタイヤはどうしてもそれぞれ摩耗する早さが違います。「右後ろのタイヤはまだまだバリ山なのに、左前タイヤだけツルッツル……」なんてことになるケースもあります。
ツルツルのタイヤは雨で滑りやすいし、乗り心地も悪いし、音もうるさいし、落ちている釘などでパンクもしやすくなります。ほかのタイヤは溝が残っているのに、ツルツルな1本のみのために4本全部交換交換して出費がかさんじゃう、そんなことも防げます。
「じゃあツルツルになったタイヤだけ交換すればいいのでは?」
う~ん、悪くはありませんが一般的にはオススメできません。履いているタイヤのなかで古いのと新しいのが混じると、経時劣化度合いの違いで4つのタイヤ間でグリップが違うことになってしまいます。そうなると操縦安定性のバランスが崩れてしまい、いざという時に車両挙動が不安定になることも。
■逆に問題ないケースとは?
レンタカーなど日常的に長距離を走行するクルマの場合は、古くなる前にタイヤを交換するケースが多いのでさほど問題にはならないとか(Hanasaki@AdobeStock)
それは年間走行距離が非常に多く、古くなる前にタイヤを交換していく場合です。摩耗したタイヤから履き替えても結局そこまで新旧の差がないので問題になりません。毎日、長距離の通勤をされる方や、営業車やレンタカーなどもこれに当てはまります。
しかし、その際は「可能なかぎり同じ銘柄のタイヤを選ぶ。すでに売られてない場合はできるだけ近しいタイヤを選ぶ」ということを心がけてください。4輪でバラバラ銘柄のタイヤだと、結局4輪のグリップが異なり、不安定になってしまいます。
一度レンタカーで、4輪すべて別銘柄のタイヤを履いた個体に当たったことがあります。摩耗した場所から変えて、さらにはパンクしたりなどでその都度安いタイヤを履いた結果、そうなったのでしょう……できれば銘柄は揃えて欲しいところです。
以降は副次的なメリットになりますが、ふたつ目は「タイヤのトラブルに早期に気づける」こと。
タイヤのローテーションをすると、必然的にタイヤを外して内側も見ることができます。外から見ただけではわからなかった内側の偏摩耗や異常摩耗、ピンチカット(サイド部の損傷や膨らみなどの異常)などを発見することができ、走行中の大事故を未然に防ぐことができます。外側から見るだけでは大丈夫でも案外内側はそうでないケースもあるのです。
3つ目は「サスペンションの不調=アライメントの狂いに気づける」こと。タイヤに偏摩耗や異常摩耗があるということはアライメントが狂っていることが多いのです。使用に伴う経時変化、強い段差乗り越えによる衝撃、ブッシュの劣化などアライメントが変化する要因はいろいろ。
それを放置すると、これも高速走行時に不安定になったり、タイヤノイズが大きくなったり、何よりタイヤが無駄に早期摩耗してしまいます。アライメントを正しく修正することでクルマがより元気に快適に安全に走ることができるのです。
■特にタイヤローテーションが必要になる車両とは?
ノーマルのシビックFF車。前輪駆動車(FF)は特にローテーションが必要になってくるという
基本的にタイヤは、「走る」「止まる」「曲がる」の力がかかり、かつ大きな重量を支えるほど摩耗しやすくなります。
現代の一般的な乗用車は大半が前輪駆動車(FF)になりますが、フロントタイヤが「走る・曲がる・止まる・支える」の大部分を支えており、「ほぼ付いているだけ」なリアタイヤよりも圧倒的に摩耗が早いのです。なので、前輪駆動車(FF)は特にローテーションが必要になります。
次に後輪駆動車(FR/MR)。曲がる止まる支えるはフロントタイヤもある程度受け持ちますが、「走る」をずっと負担し、エンジンブレーキによる「日常的な軽く止まる」も受け持つことで後輪の摩耗が早くなります。
4輪駆動はその方式によりさまざま。例えば、常に4輪が繋がっているフルタイム4WDは比較的4輪が綺麗に摩耗しますが、生活4WDとも呼ばれる小出力のモーターで簡易的に4駆になっている場合やパートタイム4駆は、主となる駆動輪から摩耗していくことになります。
■スポーツ系のモデルやミニバンは要注意!
新型シビックタイプR。ミニバンと並んでタイヤの偏摩耗には注意したいモデルだと筆者は指摘している
駆動方式以外でいうと、スポーツタイプの車両。
高い運動性を実現するためにネガティブキャンバーやトーインが強めに付いていることが多く、偏摩耗がしやすくなります。特に外からは見えない内側が摩耗することが多いため、よくよく確認しローテーションする必要があります。
日本を代表するかつての某スポーツカーも、無理のあるディメンション×タイヤサイズ設定をカバーするために前は超トーアウト、その後ろは超トーインで恐ろしいほど早くタイヤが摩耗する、なんてこともありました。
「ああ、クルマでなんとかできなかった部分を最後はアライメントで強引に辻褄合わせたんだな」なんて開発の裏事情が透けて見えちゃったりして(苦笑)。
あとは重く重心高も高いミニバンも偏摩耗しがち。
リアの安定性を確保するためにリアタイヤのネガティブキャンバーやトーインが強めになっている車両もありました。また、重心高が高いとロールが多いことから、ショルダー部が強く摩耗することも。そんな時もローテーションが有効になります。
さらにトリビアレベルですが、一部の外車では左側が摩耗しやすいので左右か、クロスローテーションが必要になることも。
もともと右側通行に合わせて開発されたタイヤはその右下がりの路面カントに合わせて作られています。左側通行で左下りカントの日本では「まっすぐ走っているのに左に流れてしまう」ため、常にハンドルを右に切った状態で保持する必要があります。
もしくは、見た目上ハンドル真っすぐで走れるようにアライメントをあえてアンバランスな「右に流れる」状態に設定したりも。
いずれにせよ「常に右に曲がるよう力がかかっている」状態になるので、結果的に左右でアンバランスな摩耗になってしまうのです。
■ローテーションをすべき時期は?
駆動方式ごとにタイヤのローテーションについては異なるが、することでより安全で快適なカーライフにつながると筆者は指摘する(Mono@AdobeStock)
走り方や走行環境、クルマによって摩耗のしかたが大きく異なるので「〇〇走ったらローテーション!」とはいちがいに言えないのが実情です。
冬タイヤと夏タイヤの入れ替えが習慣になっている方はその際にローテーションを。装着位置による違いは確実にあるはずです。そうでない方は定期的にタイヤの摩耗状況確認をするようにし、「4輪で摩耗のしかたに違いがある、もしくは異常摩耗がある気がする」と感じられたら、その都度ローテーションをしてもらうのがいいと思います。
ここまで「ローテーションをすべき理由」と「車両タイプによる違い」、「ローテーションすべきタイミング」を書いてきました。ローテーションは「しないと即事故につながる!」ものではありませんが、それをすることでより安全で快適なカーライフにつながります。ぜひ、タイヤの日常点検と併せて適切なローテーションをしてあげてください。
それではいいカーライフを!
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みんなのコメント
例え出来たとしても15000キロ位しか持たないから全交換ですわ。