現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > サイドブレーキって進化しているのか? 最近主流の電動パーキングブレーキの落とし穴とは?

ここから本文です

サイドブレーキって進化しているのか? 最近主流の電動パーキングブレーキの落とし穴とは?

掲載 更新
サイドブレーキって進化しているのか? 最近主流の電動パーキングブレーキの落とし穴とは?

 何気なく使っているサイドブレーキですが、最近では手動ではなく、スイッチひとつで作動・解除する電動パーキングブレーキが増えてきました。

 なぜ電動パーキングブレーキが増えてきたのでしょうか? 昔ながらのサイドブレーキではダメなのでしょうか? 

群馬のスバルディーラーが作った380馬力のSTIコンプリートカー、TC380を徹底試乗!

 電動パーキングブレーキは、なんとなく止まった感じがしないのと、押すのか引くのか時々わからなくなったりで、イマイチ慣れないと思っている人も多いのではないでしょうか?

 そんなサイドブレーキにまつわる最新事情を、モータージャーナリストの高根英幸氏が解説します。

文/高根英幸


写真/ベストカーWeb編集部、Adobe Stock

■駐車時の固定装置、サイドブレーキは便利だけど問題点も多かった

 サイドブレーキは、停車中にクルマが不用意に動かないために後輪を固定しておく装置で、ほぼどんなクルマにも装備されている駐車装置だ。そもそもは後輪が固定力の強いドラムブレーキだったクルマが多く、フットブレーキの液圧とは異なるワイヤーでドラムブレーキを作動させて、駐車時にクルマを固定するために利用していたものだ。

 クルマの変速操作がコラムシフトだった頃は、コラム下に装備されたステッキ式だったことからハンドブレーキと呼ばれていたが、フロアシフトが一般的になりドライバーの側方にレバーが備えられたことからサイドブレーキと呼ばれるようになった。

 今ではパーキングブレーキと呼ばれることが多い。それは足踏み式で解除はダッシュ下のノブを引くタイプが増えてきたことや、作動も解除もスイッチのオンオフで行なう電動式が登場したからだ。

 そのためダッシュ下、あるいはセンターコンソールやシフトレバーのすぐ横など、車種によってパーキングブレーキのスイッチ位置が違うので、我々自動車雑誌関係者はさまざまなクルマを乗り換えて取材する機会も多いことから、乗る度にパーキングブレーキのスイッチを探し、押して作動か引いて作動か確認する必要がある(シフト操作もそうですが)ほどだ。

■電動パーキングブレーキの位置もクルマによってまちまち

 自動車メーカーや開発を担当するチーフエンジニアによって、ユーザーが使いやすい位置、インテリアのデザインなどからパーキングブレーキのスイッチ位置を決めているが、それが車種によってまちまちなのだ。

 カーシェアリングなど、状況によっていろいろな車種を利用するユーザーも多くなっていることから、今後はこのあたりの操作方法もメーカー間で統一してもらった方が、使い勝手という点については確実に高まりそうである。

 またATのP(パーキング)レンジをブレーキと勘違いする人も多く、Pレンジだけでクルマを止めてしまう人もいる。これはATが普及するにつれて増えてきたようで、ズボラな運転をするドライバーが増えてきたため(そもそもAT自体が、そういうユーザーを獲得するためのものだったのかもしれないが)、変速機メーカーはPレンジでしっかりと変速機内部をロックできるようにするだけでなく、サイドブレーキをしないユーザーのために、ロック機構の強度や耐久性を高める努力も行っているのだ。それでも手荒な操作はATの寿命を縮めるだけに、確実で丁寧な操作をしたいものである。

 電動パーキングブレーキ(EPB)になってからは、Pレンジにシフトすると自動的にパーキングブレーキも作動する賢いクルマも増えてきた。

 従来のサイドブレーキは手でレバーを引っ張ったり、足でペダルを踏んだりすることで作動させるのだが、特に手で引っ張るサイドブレーキは力を入れて引っ張る必要がある上に、引きすぎるとワイヤーが伸びていってしまう。

 2、3ノッチ引けば十分に利くのだが、勢いよく引いてしまうためについつい多めに引いてしまうユーザーも多いのだ。するとワイヤーが伸び続け、ついには切れてしまうこともある(ラリーやドリフトなど競技用のマシンはフットブレーキと同じ液圧式のブレーキにして利きと耐久性を高めているものもある)。

 またサイドブレーキは戻し忘れて走行を続けてしまうことによってブレーキを焼いてしまって、最悪は車両火災を起こす原因にもなってしまうこともある。EPBは、そうした従来のサイドブレーキが抱えていた問題点を解決しているのだ。

■電動パーキングブレーキはディスクとドラムブレーキで構造が大きく異なる 

 EPB(電動パーキングブレーキ)は、構造によって2種類に大別することができる。1つは従来のサイドブレーキのワイヤーを電動モーターで巻き取るようにしたタイプ。これはEPBを作動させた時にウィーンとワイヤーを巻き取るモーターの音が聞こえると同時にリアサスが引っ張られて若干沈み込む(リアサスのピボット位置とパーキングブレーキの巻き取り&ブレーキ位置の位相から起こる)のも、この形式の特徴だ(とはいえ車種によって差はある)。

 もう1つはディスクブレーキのキャリパーに直接モーターを組み込み、モーターでキャリパーピストンを駆動させてパーキングブレーキとしているタイプ。

 今ではコストダウンも進んだため、圧倒的にこちらのほうが多くなっている。ドラムブレーキは構造上、モーターを組み込むのが難しいので、EPBを採用する場合はワイヤー巻き取り式にする場合が圧倒的に多い。

 つまり、EPBは四輪ディスクブレーキの、どちらかといえば高級車向けの装備なのである。それでもドラムブレーキでもEPBを採用している車種があるのは、構造はともかく使い勝手を向上させたり、高級感を演出したいためだ。また日産リーフ(初代)のように「EVらしさをアピールするために、EPBを採用している。

■電動パーキングブレーキのメリットとは?

 EPBのメリットは、スイッチ1つで操作できるので、力がいらないことと、スイッチのレイアウトの自由度が高いこと。また作動させたまま走行してしまっても警告などが出るため、戻し忘れたまま走り続けるようなことはまずないし、最近はDレンジでアクセルを踏むと自動的に解除してくれる車種も増えてきた。

 さらにEPBは単にスイッチでモーターを駆動させてパーキングブレーキの作動と解除をしているだけじゃなく、いろいろな状況に応じて細かい制御の調整を行なっている。道路の傾斜をセンサーで検知して、確実に固定できるようブレーキの強さを調整してくれる。

 Pレンジに入れるだけでパーキングブレーキを作動させたり、前述のようにブレーキペダルを踏んだ状態でDレンジにシフトするとパーキングブレーキを解除し、さらに道路が傾斜していれば、坂道発進などでズルズル下がらないようにヒルホールドを作動。

 ヒルホールドなどの機能は電動パーキングとは別の、EBS(電子制御式ブレーキシステム)で液圧の制御により行なっているクルマもある。高級車ほど、様々な制御を複雑に組み合せて快適性と安全性を高めているのだ。

■電動パーキングブレーキの弱点は、いざという時にサイドターンが使えない?

 ではEPBに難点はないかというと、そんなことはない。最大の難点は「サイドターンが使えない」ということだ。

 別名スピンターンとも呼ばれるこのドライビングテクニックは、走行中に前輪に荷重を移すと同時にステアリングを切り、旋回モーメントが立ち上がったところでサイドブレーキを引いてリアタイヤをブレークさせ、一気にクルマの向きを変えるというもの。ジムカーナの180度ターンや360度ターンで使われるドラテクだ。

 別にジムカーナに出場する訳じゃないし、と思う人もいるかもしれないが、ドイツでは緊急回避のテクニックとしてクルマの向きを変えるサイドターンをドライバートレーニングなどで教える。欧州の寒冷地などでもステアリングが利かなくなった時にサイドブレーキで向きを変えてコントロールするテクニックは一般的だ。

 EPBでは車速が0の状態でなければ作動しないため、この技が事実上使えない。スイッチを作動させても警告音が出てキャンセルされるだけ、というクルマもある。最近は長押しすることで作動できる車種もあるが、この場合はワイヤーを手動で引くのとは異なり、かなり遅れて作動するので思うようにコントロールするのは難しい。

 BMWは走行中に長押しなどの操作をすると、ドライバーが急に体調不良となり助手席の乗員(エアバッグ用にシートにもセンサーがあり乗車の有無が判別できる)が操作したと判断すれば、緊急ブレーキとして四輪のブレーキを作動させるようだ。これは前述のEBSとEPBが連携しているからこそ、実現できる制御だろう。

 現時点でサイドターンが可能なEPBを採用しているのが確認できたのは、ポルシェだけだ。これもデフォルトの状態ではキャンセルされるが、スポーツモードを選んだ時には走行中でもEPBが使え、スイッチを作動させれば即座に制動力が立ち上がるので、サイドターンも可能になっている。

 最近のクルマはESC(横滑り防止装置)など、クルマの方で姿勢を制御する技術が盛り込まれているので、サイドターンを一般道で使うような状況は自動車メーカーは想定していないのだろう。

 しかし、最終的には運転の責任はドライバーが負うのであれば、危険を回避できる手段としてサイドターンが使える選択肢も残しておいてほしいものだ。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

コンチネンタル、車内の生体情報を検知する革新的ディスプレイ発表へ…CES 2025
コンチネンタル、車内の生体情報を検知する革新的ディスプレイ発表へ…CES 2025
レスポンス
[圧倒的燃費]と環境性能! [トヨタ・ヤリス]を超えるクルマってぶっちゃけある? 
[圧倒的燃費]と環境性能! [トヨタ・ヤリス]を超えるクルマってぶっちゃけある? 
ベストカーWeb
給与が高いスイスに拠点を置くザウバーは例外? ハースF1小松代表、FIAが検討する予算上限”優遇措置”に反論「皆反対している。シンプルなままでいい」
給与が高いスイスに拠点を置くザウバーは例外? ハースF1小松代表、FIAが検討する予算上限”優遇措置”に反論「皆反対している。シンプルなままでいい」
motorsport.com 日本版
日産「新型スカイライン」発売! 歴代最強「匠“手組み”エンジン」×旧車デザインの「特別仕立て」登場も「次期型」はもう出ない…? 「集大成」完売した現状とは
日産「新型スカイライン」発売! 歴代最強「匠“手組み”エンジン」×旧車デザインの「特別仕立て」登場も「次期型」はもう出ない…? 「集大成」完売した現状とは
くるまのニュース
実は大きく違う!? モータースポーツ総合エンターテイナー濱原颯道が開催した「クシタニライダー台湾人スクール」で感じた台湾人ライダーと日本人ライダーの練習環境の違いとは
実は大きく違う!? モータースポーツ総合エンターテイナー濱原颯道が開催した「クシタニライダー台湾人スクール」で感じた台湾人ライダーと日本人ライダーの練習環境の違いとは
バイクのニュース
旧車への憧れ、理由の1位は「デザイン」、人気車種は…旧車王が調査
旧車への憧れ、理由の1位は「デザイン」、人気車種は…旧車王が調査
レスポンス
いずれスポーツカー[バブル]は崩壊する!! その時あなたは買う勇気があるか!?
いずれスポーツカー[バブル]は崩壊する!! その時あなたは買う勇気があるか!?
ベストカーWeb
レゴとF1、パートナーシップを締結…2025年からクリエイティブな遊び提案へ
レゴとF1、パートナーシップを締結…2025年からクリエイティブな遊び提案へ
レスポンス
メルセデスが3セッション連続で最速! 終盤の赤旗中断で、アタック未完了のマシン多数……勢力図は不明瞭|F1ラスベガスGPフリー走行3回目
メルセデスが3セッション連続で最速! 終盤の赤旗中断で、アタック未完了のマシン多数……勢力図は不明瞭|F1ラスベガスGPフリー走行3回目
motorsport.com 日本版
ルノーがハイブリッド車に使ったF1直系の技術……って聞くとなんかたぎる! 「ドッグクラッチ」ってそもそも何?
ルノーがハイブリッド車に使ったF1直系の技術……って聞くとなんかたぎる! 「ドッグクラッチ」ってそもそも何?
WEB CARTOP
F1ラスベガスFP3速報|赤旗で消化不良に。ラッセルがトップタイム、RB角田裕毅は16番手
F1ラスベガスFP3速報|赤旗で消化不良に。ラッセルがトップタイム、RB角田裕毅は16番手
motorsport.com 日本版
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場? 22年ぶり復活で噂の「MT」搭載は? 「2ドアクーペ」に反響多数!海外では“テストカー”目撃も!? 予想価格はいくら?
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場? 22年ぶり復活で噂の「MT」搭載は? 「2ドアクーペ」に反響多数!海外では“テストカー”目撃も!? 予想価格はいくら?
くるまのニュース
WRCラリージャパン、SS12キャンセル原因は“無許可の車両によるステージ侵入”とFIA発表
WRCラリージャパン、SS12キャンセル原因は“無許可の車両によるステージ侵入”とFIA発表
motorsport.com 日本版
山脈貫通!「新潟‐福島」結ぶ国道が建設着々 “延長21km・トンネル15本”におよぶ大規模道路いつ開通?
山脈貫通!「新潟‐福島」結ぶ国道が建設着々 “延長21km・トンネル15本”におよぶ大規模道路いつ開通?
乗りものニュース
昭和の名車とワーゲンがぎっしり…茨城県の江戸崎商店街でホコ天イベント
昭和の名車とワーゲンがぎっしり…茨城県の江戸崎商店街でホコ天イベント
レスポンス
ドゥカティ現行車では唯一!? 空冷Lツインを搭載する第2世代スクランブラー「アイコン」の魅力
ドゥカティ現行車では唯一!? 空冷Lツインを搭載する第2世代スクランブラー「アイコン」の魅力
バイクのニュース
ホーナーの言うことは「信用できない」とウォルフ。妻に対するFIAの調査の際に不信感を募らせたことを明かす
ホーナーの言うことは「信用できない」とウォルフ。妻に対するFIAの調査の際に不信感を募らせたことを明かす
AUTOSPORT web
バスドライバーを疲れさせる「プルプル運転」とは何か? 自動運転時代の落とし穴! 過剰な安全対策が招く危険とは
バスドライバーを疲れさせる「プルプル運転」とは何か? 自動運転時代の落とし穴! 過剰な安全対策が招く危険とは
Merkmal

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

408.1583.4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

9.0451.0万円

中古車を検索
リーフの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

408.1583.4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

9.0451.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村