「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、日産 セレナ Sハイブリッドだ。
日産 セレナ Sハイブリッド(2012年:車種追加)
従来型のセレナは、セルモーターを使わず、オルタネーターによりベルト駆動で再始動させる「ECOモーター」という独自の方式を用いた、アイドリングストップシステムを搭載していた。今回採用された「Sハイブリッド」は、その発展形と言えるものだ。
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システム自体は、いたってシンプル。より回生発電量を増やし、補助的に駆動力にも使えるようECOモーターの容量を大きくするとともに、起こした電気を多く蓄電するためサブバッテリーを増設。ハイブリッドシステムがコンパクトなので、エンジンルーム内に収まるのも特徴。価格も、売れ筋のハイウェイスターの2WD車で、仕様向上分を除くとわずか8400円の上昇にとどまる。
これについて、とにかく「ハイブリッド」ありきで帳尻を合わせたような言われ方もしているが、そうではない。本当に有益なことを、あまり販売価格の上昇を招くことなくやろうと開発者らが試行錯誤した結果の産物であり、それがたまたまハイブリッドと呼べるものに仕上がった、というニュアンスが正しい。
実際、これによりJC08モード燃費は従来比で1.0km/L向上し、クラストップとなる15.2km/L(2WD車)を達成。エコカー減税では従来の75%減税からクラス唯一の〝免税〞となった。金額にして約3万円の負担減となる。
実際に運転してみると、従来モデルと何か大きな違いがあるわけではない。ECOモーターを採用した従来型セレナのアイドリングストップのマナーは、エンジン停止も再始動も驚くほどスムーズで素早かった。振動や音が非常に小さく、いわゆるアイドリングストップの概念を崩したほどだが、今回のSハイブリッドも同様で、何かがとくに変わった印象はない。相変わらず本当にスムーズだ。
エンジンの停止時間をより延ばす制御に変更
「ハイブリッド」と呼べるものにもピンからキリまであるが、Sハイブリッドはエンジンを止めてEV走行ができるとか、エンジンとモーターの出力がミックスされて強力にダッシュするといったシーンはない。あくまで走行はエンジンが主体で、条件が整った際にモーターの出力が若干上乗せされるのだが、体感するほどではない。
ただし、アイドリングストップする頻度が上がり、またストップした際に、より長い時間ストップするようになっているとのこと。これは新旧を厳密に比べないと感じにくい部分。しかも試乗時の気温は摂氏34度前後という状況で、エアコンをフル稼働させていた。アイドリングをストップするにはかなり厳しい条件だったため、残念ながら今回はエンジンが停止する頻度や時間が明らかに増えたという差は実感できなかった。
パワートレーン系は、さらなる燃費向上に向けて、従来よりも変速比の制御が若干ワイドに振られている。つまり走り出しの加速性を上げ、速度が乗るとハイギアードにして燃費を稼ぐという設定。このおかげで加速フィールはよりリニアになった。ちなみに車両重量は、カタログ値で30kg増となっている。
それ以外の変更点では、サスペンションのセッティングには変更はないが、タイヤは銘柄が変わり、指定空気圧が少し高められた。これによりやや当たりに硬さが見受けられたものの、全体としては定評あるセレナの乗り心地を損なうものではない。
一方、オーテックが手がけたライダー パフォーマンススペックには専用の足まわりが与えられているが、こちらも乗り心地を損なわない中で、ロールを抑えた、一体感のある走りを身に着けている。高速巡航時の落ち着きもよい。走りにこだわるユーザーには、こちらをオススメしたい。
日産 セレナ ハイウェイスターG Sハイブリッド 主要諸元
●全長×全幅×全高:4770×1735×1865mm
●ホイールベース:2860mm
●車両重量:1600kg
●エンジン:直4 DOHC+モーター
●総排気量:1394cc
●最高出力:108kW(147ps)/5600rpm
●最大トルク:210Nm(21.4kgm)/4400rpm
●モーター最高出力:1.8kW(2.4ps)
●モーター最大トルク:53.6Nm(5.5kgm)
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:横置きFF
●燃料・タンク容量:レギュラー・60L
●JC08モード燃費:15.2km/L
●タイヤサイズ:195/60R16
●当時の車両価格(税込):279万9300円
[ アルバム : 日産 セレナ Sハイブリッド はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
このクラスとしては初のハイブリッド]と言うべきだ。