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【ヒットの法則424】13代目トヨタ クラウンは半世紀の時を経て世界一級のスポーツサルーンになっていた

掲載 更新 6
【ヒットの法則424】13代目トヨタ クラウンは半世紀の時を経て世界一級のスポーツサルーンになっていた

2008年2月、トヨタ クラウンがフルモデルチェンジされて登場した。先代ゼロ クラウンから4年、「感動性能を追求した」という13代目はどんなモデルに進化していたのか。Motor Magazine誌では、さっそく販売が開始されたロイヤルとアスリートの試乗テストを行っている(ハイブリッドは遅れて5月販売開始)。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年5月号より)

安心感が漂うエクステリアデザイン
初代モデルの誕生は1955年と、すでに半世紀以上という数ある日本車の中でも屈指の歴史を持つクラウン。そんなクラウンが新型へとフルモデルチェンジした。初代モデルから数えて13代目という世代数の多さは、世界でも珍しいものだという。

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ボディ骨格にシャシ、エンジンなどなど、すべてのメカニカルコンポーネンツを一気に新たなるアイテムへと世代交代させたことから「ゼロ クラウン」と称していたのが2003年にリリースされた従来型。今度のモデルはそんな従来型が用いた各種のユニットをリファインすることが求められた。

その新型のボディサイズは、全長と全幅が従来型に対してそれぞれ30mm、15mmとわずかずつ大きくなったものの、それは厳しさを増した歩行者保護性能への対応などが目的で、実際には「サイズは従来型と同等を当初から目指していた」という。

今や中国など海外に向けての販売量も急増はしているものの、それでも開発の軸足は明確に日本市場。「日本のための日本のモデル」であるクラウンにとって、無闇なサイズの拡大はこれまで打ち立ててきた名声を一気に失ってしまう危険性をもはらんでいるはずだ。

「クラウンらしさを表現する」という歴代モデルに求められる大命題を、今回はそうした基本的に手が加えられなかったディメンジョンの下で実現させる必要があったことも影響をしてか、見た目の雰囲気がこれまでのモデルと大きく変わっていない。

新型のエクステリアデザインは誰がどんなアングルから目にしても「クラウンそのもの」である。率直に言ってそこに新鮮さは薄いが、一方でいかにも安心して目にできるルックスでもある。

インテリアは、そんなエクステリアに対しては少しだけ大きな飛躍が感じられる。アッパーとロワーのつながり部分にひさし状の段差を残し、センターパネルはそこを「貫通」するというモチーフを用いたダッシュボードの造形はなかなか新しい。クラウンらしさを演じつつ新しい試みにトライをしたという点では、むしろエクステリア以上のエネルギーが感じられるのがこちらインテリアだ。

逆に、今回も「遅れたまま」だったのはパーキングブレーキ。作動が足踏み式で解除がレバー式というのはいかにも旧態然だ。

新型クラウンの構成は、基本的に「ロイヤル」と「アスリート」の2種に大別。前者が2.5Lと3Lエンジン。後者が2.5Lと3.5Lエンジンを搭載するという点でも従来型の場合と同様だ。そうした中から、今回は主に3.5Lのアスリートと3Lのロイヤルサルーンをテストドライブ。従来型実績でも、それぞれのシリーズの過半を占めるのがこのエンジンであるという。

最新の直噴テクノロジーを用いつつも、主に低回転時の扱いやすさを確保しながら高回転時の高出力にも対応するためにポート噴射も併用しているのが、3.5Lエンジンの大きな特徴。すでにレクサス系をメインに搭載実績を持つこの2GR-FSE型ユニットは、軽く300psを超える最高出力を発揮。そのため実はおそらく誰もが想像し得ないほどに強力な加速力をアスリートに与えている。

フルアクセルのシーンでは、まさに一級スポーツカーばりの絶対加速力を発生。同時に6速ATとのマッチングが抜群である点も見逃せない。トルコン式ATでありながらアクセル操作に対する加減速のダイレクト感がなかなか素晴らしく、一方でタコメーターの針の動きを追っていなければ変速に気づかないほどの滑らかさも売り物だ。

HDDナビ装着車では、その地図情報からコーナーや交差点に対応したダウンシフトを行う制御が従来から採用されていたが、さらに今回は高速道路の本線合流/離脱時により適した加速力やエンジンブレーキ力を得る目的でアップシフトを抑制する新制御も採用。ちなみに、そうした本線への合流離脱は、バックカメラが路面の白線を確認することで判断しているという。

熟成著しいフットワークの仕上がり
そんな動力性能面ばかりに感心してはいられない。というのも、実はこのモデルの走りの最大の見所は、むしろ従来型に対して熟成著しいそのフットワークの仕上がりでもあるからだ。

4輪の接地感は常に色濃く、操舵感が自然な一方でキックバックなど不要な情報はしっかりと遮断をする電動パワステを通じて、ドライバーの掌へ路面とのコンタクト感を確実にフィードバック。と同時に、速度にかかわらずフラットな姿勢を保つボディコントロール性も優秀。正直、クラウンでここまでやってくれるとは思っていなかった。そんな走りの好印象を味わわせてくれる一方で、後席に大切なゲストを招くにも何の抵抗もないしなやかな乗り味にも感心した。

ゼロ クラウンでは「走りは良いけど乗り心地が」という声が少なからずあったというが、そこのところをしっかりと補正したのが新型だ。さらに今回、このモデルが採用する電子制御の可変減衰力ダンパーAVSには、高速道路走行時に段差の位置を記憶し、次回走行時にはそこでの減衰力を最適にコントロールするという学習機能までが設けられている。これもまた、先のシフト制御同様に「日本ベスト」の設計ゆえの成果だ。

ところで実は今回、幸か不幸かヘビーウエットのワインディングロードを駆け回るという機会にも遭遇。が、そこで感心させられたのはこのモデルが備えるシャシの基本性能の高さでもあった。統合制御されたESP(トヨタ名VSC)、TRC、ABSなどから成るVDIM(車両統合制御システム)や、車速感応式の可変ギア比ステアリングVGRSなど、最新テクノロジーによる数々の先端メカニズムを標準装備とするこのモデルだが、前述のようなシビアな走りのシーンでも、それらは簡単には介入をして来ない。すなわちそれは、そうした電子制御のサポートシステムが介入する以前の、基本的な走りのポテンシャルが相当に高いことを示している。このモデルは、そんなサポートシステムを当てにしたヤワなモデルではない。

もはや「世界一級のスポーツサルーン」と声を大にしてアピールのできるそんなアスリートに比べると、ロイヤルの走りの印象が多少インパクトの弱いものであったのは否めない。しかしそれは言ってみれば「比べる相手が悪かった」ということ。なぜならばこちらロイヤルシリーズの走りの実力もまた、絶対的には決して侮れない水準に達しているからだ。それは先のアスリートの場合と同様、雨のワインディングロードで証明されている。すなわち、こちらもまた、クラウン ロイヤルというモデルに相応しいとは思えないほどのハイペースでそうした条件の中を駆け回っても、VDIMの介入を容易に必要としたりはしなかったのだ。

路面凹凸への当たり感は、アスリートに対して確かにワンランクほどマイルド。一方で、そうして拾った振動の減衰は、アスリートよりもやや時間を要するという印象の違いもあった。が、それでも一般には「ロイヤルの方が乗り心地は上」と評する人は多いだろう。タイヤが発生するパターンノイズや空洞音の類がアスリートよりも小さく、静粛性により長けている。2.5Lと3Lという495ccと41ps差のある2タイプのエンジンを搭載するロイヤルだが、ここはできれば3Lユニットを選びたい。確かに2.5Lモデルでも必要にして十分な動力性能は確保されるが、「クラウン」というブランドに相応しい余裕感やフル乗車時のことを考えると、イメージ的にもよりピタリと来るのは3Lモデルの方だ。

クラウンという誰もが知る古くからあるブランド。しかし、それが誕生以来半世紀を越えた今でも時代遅れなモデルとなっていないのは、常々の新陳代謝に対する努力が行われてきたからこそだろう。そして、そうした勢いは間もなくリリースされるクラウン初のフルハイブリッドモデルによってさらに加速されるに違いない。

「日本のための日本のクルマは、今やミニバンと軽自動車しかない」と言われかねない現在、メルセデス・ベンツとBMWという両巨頭にも一矢を報いる内容を秘めた新型クラウンは、真に日本という国が誇りとすべき一台かも知れない。(文:河村康彦/Motor Magazine 2008年5月号より)



トヨタ クラウン 3.5 アスリート 主要諸元
●全長×全幅×全高:4870×1795×1470mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:1650kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3456cc
●最高出力:315ps/6400rpm
●最大トルク:377Nm/4800rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速AT●車両価格:487万円(2008年

トヨタ クラウン 2.5 アスリート 主要諸元
●全長×全幅×全高:4870×1795×1470mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:1600kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:2499cc
●最高出力:215ps/6400rpm
●最大トルク:260Nm/3800rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:374万円(2008年)

トヨタ クラウン 3.0 ロイヤルサルーンG 主要諸元
●全長×全幅×全高:4870×1795×1470mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:1630kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:2994cc
●最高出力:256ps/6200rpm
●最大トルク:314Nm/3600rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:528万円(2008年)

[ アルバム : 13代目トヨタ クラウン はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

6件
  • このタイプのロイヤルサルーンGを乗ってた。
    アンチにはいろいろと言われるけど、装備の豊富さや満足は日本人にとって良い車。
    でもスポーツサルーンでは無い。
  • この程度で世界一級のスポーツサルーンとは。
    世界も堕ちたものだ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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