言わばパリダカマシンのレーサーレプリカ、ワークスレーサーDR-Zと並行開発されたDRビッグ
当記事は1998年、スズキのビッグオフローダー「DRビッグ」の誕生背景と進化の経緯について、開発スタッフにうかがったインタビューである。
パリダカレーサーのDNAを受け継ぐオフロードモデルとして登場したDRビッグだが、800へと排気量を拡大した後は市場の声を反映してオンロード志向を強めていった。つまり、今で言う「アドベンチャーモデル」的な立ち位置になっていったのだ。
そして現在の目で見ると興味深い事実が。インタビュー後半、デザイナーの宮田さんの言葉に注目してほしいのだが、1998年の時点でVストロームの原型とも言える構想があったように思われるのだ。
【画像ギャラリー5点】パリダカマシンDR-Zから、DR750S、DR800Sまでの系譜を見る
操安テスト担当:粕谷泰治さん
1998年当時、スズキ株式会社二輪設計部第2グループ係長。DRビッグで操安テストを担当したほか、DR系モデルの全般に関与。オンモデル、オフモデルを問わず操安関係に関わり、スクーターのラブ、GSX-R400、スカイウェイブ250/400も担当した。
デザイン担当:宮田一郎さん
1998年当時、スズキ株式会社二輪事業部商品企画デザイン部デザングループ係長。DRビッグでは造形デザインを担当、最新型Vストローム1050の開発チームにも加わっている。DR系モデルのDR350、DR650、DR250Rなどオフロードモデル全般の造形デザインに関与したほか、コンセブトモデル「XF5」なども手がけた。DRビッグオーナーズクラブの名誉会員でもある。
粕谷さん●DRビッグが登場したのは1988年ですが、その開発はワークスマシンのDR-Z(ジータ)とほぼ並行して行われていました。当時は元スズキワークスの125ccのモトクロスGPチャンピオンで、パリダカの1984年、1985年のチャンピオン(マシンはBMW-GS)だったガストン・ライエが、再びスズキに乗るというので、話題になりました。要するに、ワークスマシンに乗るイメージリーダーもいて、市販車でもイケるという状況だったんです。
宮田さん●80年代半ばころから、パリダカではBMW-GSやホンダのNXRなど2気筒マシンが活躍し始めましたが、当社としてなぜビッグシングルを選んだのかは、欧州での市場調査の結果だったと思います。先に出ていたDR600Rが割と好評だったというのもあるし、それよりももう少し速いバイクが、いいという要望もあつたので、シングルで排気量を上げた新作エンジンにしようということになったと思います。
粕谷さん●シングルならコンパクトに造れるというのもあったし、安くて高性能なものがいいという当社の考え方も入っていると思います。コンセプトとして「砂漠の王者」とか、「ツーリングできるラリー車」とか、いろんなものがあったと思います。いわば、オールラウンドな性能ですよね。これは、突き詰めた性能、ピュアな性能とは相反する部分もあるので、ある意味難しかったです。とはいえ、ちょっとジャンプしただけで底着きしてしまうような性能にはしたくなかったから、ちゃんとオフでも楽しめる造り込みはしてます。しかもシングルエンジンによって、ビッグオフの割にスリムかつコンパクトにできています。
宮田さん●当時自分もモトクロスをやってたんですが、大きいからといってダートでライディングしにくいマシンにはしたくなかった。幅とかスタンディング時のホールドのし具合とか、タイトにできるようにデザインしました。
粕谷さん●ダート車としては、確かに重い。けれど、基本である前乗りができるような幅に仕上げられてます。腕のある人間ならば、重いけれどドリフトもしやすいと、そんな設定にしてあります。
宮田さん●当時のほかのパリダカマシンを見て、ロードモデルの足を長くしただけじゃないかという印象を持ちました。オフモデルにはオフに要求される空力性能があり、スタイリングもあるんじゃないかと。そうやって生まれたのが、あのクチバシのようなアッパーカウルです。またそれが自然にタンクのラインとつながるようにデザインしました。クチバシは油冷エンジンの冷却性、そしてダウンフォースを発生させて安定性を高める意図もあり、かなり有効だったと思います。
粕谷さん●あのデザインはインパクトがあったし、機能性も優れていた。また車体のレイアウトという面でも素性のよさがありました。1988年だったと思いますが、私はワークスレーサーのセッティングでテネレ砂漠を走りましたが、同行していたガストンが「乗りやすい、BMWでは3年かかったセッティングがDRでは既にできている」と喜んでいたのを思い出します。DR-Zは、足の長さとかアライメントの変更、若干の補強などを除けば、じつにDRビッグと共通の部分が多かったと思います。
宮田さん●オフでの戦闘力とか整備性も高めるため、タンクを低重心化して左右分割とするなど、凝った造りにもしています。印象深いモデルですね。
粕谷さん●市販車は、その後750ccではまだパワーが物足りないということで、排気量を上げ、さらに後期型ではマフラー容量を稼ぐなどして若干の出力向上を図っていますが、オフでのピュアさでは初期モデルのほうに分があったと思います。
宮田さん●市場のニーズがよりオン指向になり、材料着色の樹脂パーツでなくABS樹脂に塗装して高級感を出すとか、そういった方向へ行ってしまったんですね。ピュアなオフ車を造ることが多かった私としては、初期のコンセプトのほうが魅力でしたが……。
粕谷さん●馬力は稼げても、それ以上に後期型は重くなってしまった(乾燥179kg→194kg)。それがオフ性能という意味では若干魅力が薄れた点でした。今後ビッグオフモデルという市場がどうなるのか、正直言ってわかりません。少し前までは、速さを求めると結果的に、排気量も車体も大きくなってしまっていました。しかし、バイクはカタチが変わってないように見えて、エンジンの進歩はすごく大きいんです。昔よりも小さなエンジン排気量で、同じレベルかそれ以上の性能が可能になってしまったんですから。
宮田さん●市場からは、DRビッグのスタイルを踏襲し、Vツインで造ってほしいという要望があるみたいですから、それもやってみたいですけどね。
粕谷さん●オフの好きな操安テスト担当としては、もう750とか800とか1000とか大きなエンジンのオンオフモデルにはそんなに魅力を感じません。ツインでもTL1000などのエンジンは大きすぎて、オフモデルに載せて走る気になりません。今ならばSV650などのエンジンを載せた、ビュンビュン走るオンオフを造りたいですね。オンロードモデルに比べればマスの小さい市場だと思いますが、基本的にピュアなモデルを造っていきたいという気持は変わりません。まあその通過点として、DRビッグは非常に印象深かった作品のひとつと言えるかもしれませんが……。
まとめ●阪本一史 写真●郡 大二郎/スズキ 編集●上野茂岐
*当記事は『別冊モーターサイクリスト1999年1月』の記事「国産ビッグオフロードモデルの現在」を編集・再構成したものです。
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