現行型インプレッサやクロストレックなどに設定されている2Lのマイルドハイブリッドe-BOXER。ハイブリッドとしては中途半端なイメージもあるが、ベーシックなガソリン車STとの違いはどうなのか、実際に試乗して確かめてみた。
文/永田恵一、写真/ベストカーWeb編集部、ベストカー編集部、スバル
燃費さえよければ文句ない!? インプレッサ「e-BOXER」はガソリングレードよりも存在価値があるのか?
■e-BOXERの存在意義とは?
2LDOHCを搭載したインプレッサのベーシックグレードであるST。その価格はFF車で229万9000円
2023年4月にフルモデルチェンジされ、6代目モデルとなったインプレッサで密かに注目されているのが、ベーシックグレードで純エンジン車(2L水平対向DOHC)となる「ST」である。
その大きな理由は価格で、後述するように装備内容という要素はあるが、STはFFなら229万9000円だ。この価格は2Lエンジンのミドルクラスということや、最近はコンパクトカーどころか軽乗用車でもこのくらいの価格のクルマが珍しくないのを考えれば、注目されるのもよくわかる。
しかし、インプレッサは比較的簡易なハイブリッドとなるe-BOXERが主力となるのもあり、STは自動車メディアが撮影などに使う広報車両がなく、おおげさに表現すれば正体不明の存在であった。しかし、スバルが2023年8月末に行ったレヴォーグレイバックのプロトタイプ試乗会にSTの用意があり、試すことができた。
「見ている人は見ている」ということなのか、最新情報ではインプレッサの販売比率において28%を占めているというSTに乗ってわかったのはST自体の魅力に加え、e-BOXERにも思っていた以上の存在意義があるということで、ここではそれぞれの持ち味や選び方などを考えてみた。
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■ベーシックなガソリン車のSTって乗るといったいどうなの?
インプレッサSTが搭載する2L水平対向DOHC。軽量なSTにとってその最高出力は154psと必要にして充分
全体的にはベーシックグレードでも(というよりベーシックグレードだけにだろうか)、現行インプレッサの魅力であるいい意味でのオーバークォリティなよさを味わえるといったところだ。
具体的に見ていくと、動力性能はこのクラスとしては平均的で、ごく普通だ。しかし、e-BOXERはかつてのホンダIMAのような13.6psという小さなモーターによるアシストはあるが、純エンジン車のSTに対して150kg重いため、全開加速などの絶対的な動力性能はSTのほうが速いだろう。
STは乗り心地やハンドリングも上質で、走行用バッテリーがないためラゲッジスペース下のサブトランクも大きい。STは一見インプレッサのベストチョイスに感じるのもよくわかった。
■STは本当にベストなインプレッサなのか?
果たしてSTグレードが本当にインプレッサにとってベストなグレードだと断言できるのだろうか?
しかし、STに乗ると「必ずしもSTがインプレッサのベストチョイスでもないのでは?」と感じたのも事実だった。
その理由を走行性能から挙げると、絶対的にはSTのほうが速そうと書いたが、乗用域では小さいながらモーターのアシストがある分、ドライバビリティ(乗りやすさ)はe-BOXERの勝ちだからだ。
筆者の師匠である国沢光宏氏もインプレッサSTに実際に試乗してみて高い評価を与えていた
乗り心地も車両後方に走行用バッテリーを積む分、e-BOXERのほうが落ち着いており、その点でもSTよりe-BOXERのほうが上質なクルマに感じた。
また、実用燃費もe-BOXERはSTに対し、カタログ値の約+20%はよくないとしても、10~15%ほどは向上していそうな印象だ。
ちなみにインプレッサのFF+e-BOXERで高速道路を大人しく走った際には18km/Lほど走り、「こんなに燃費のいいスバル車があるのか」と驚いた(笑)。
■e-BOXERとの価格差は約51万円だが……実質は23万円ほどか?
インプレッサの2Lマイルドハイブリッド、e-BOXERは最高出力145psのエンジンに13.6psのモーターを組み合わせている
そして熟考したいのが価格だ。というのはFFで229万9000万のSTに対し、e-BOXERの標準グレードとなるST-Gは281万6000円と、価格差は51万7000円と確かに安い。
しかし、STからST-Gに加わる装備を見ると1サイズ大きい17インチブレーキローター、フォグランプ、革巻きのハンドルとシフトノブ、キーレスアクセス&プッシュスタート、大型モニター、リアシート用のUSBポート、後側方警戒支援システムなどと数多い。
これらの装備品をメーカーオプションで揃えられる範囲で揃えると、STは254万6500円(STには後側方警戒支援システムはメーカーオプションの設定がなく、この点は大きな不満だ)となり、後側方警戒支援システムも加味すると、STとST-Gの価格差は実質23万円程度に縮まる。
インプレッサe-BOXERモデルの走り。燃費だけでなく、ドライバビリティや乗り心地はSTを上回っていると筆者は指摘する
このくらいの価格差であれば、ST-Gは他社ほどではないにせよe-BOXERによる燃費とドライバビリティの向上や乗り心地が上質になるというメリットに加え、「メーカーオプションを付けるとこの価格差になるなら、初めから上のグレードを買ったほうが」という気持ち的なものも総合すると、単純にSTがいいとも言い切れないのではないだろうか。
しかし、筆者はSTが設定されていることは歓迎すべきことだと思っている。
というのもSTにメーカーオプションで設定される装備もみんながみんな必要という訳ではなく、例えばカーナビやモニターは市販品のディスプレイオーディオとバックカメラで安くすませるという考えもある。
また、「全体的に質の高いインプレッサを価格優先でリーズナブルに乗りたい」という人もいるだろう。
つまり、現行インプレッサにSTがあることで選択肢が増え、自分好みの仕様が選びやすくなっているという点が、STの存在意義や大きな魅力なのではないだろうか。
■2025年登場予定の次世代e-BOXERに期待!
筆者が試乗会に用意されていたインプレッサSTに乗って改めてe-BOXERの存在意義が確認できたという
今回、インプレッサSTに乗って得た収穫のひとつは比較的簡易なe-BOXERながら、燃費に加えドライバビリティの向上など、それなりの存在意義があるということだった。
しかし、やはりというか他社のハイブリッドに比べると絶対的な燃費をはじめとしたインパクトやメリットの大きさに乏しいというのも事実である。
そのあたりを総合すると、つなぎと思われていたe-BOXERがもう10年も頑張ったことやCAFE(企業別平均燃費基準)、さらには他社との競争などを考えると、2025年の登場と言われているトヨタのシステムを使った次世代e-BOXERが、スバルらしい魅力を持ったうえで少しでも早く登場することを期待したい。
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