マツダのコンパクトSUV「CX-30」に乗って、神奈川県から長野県へと走った印象は? 小川フミオがリポートする。
快適性とファン・トゥ・ドライブの両立
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幅広い層へのアピールが功を奏し、セールス好調というマツダ「CX-30」。SUVよりも背が高めの、ハッチバックの新しい解釈といったほうがいいかもしれない。“クロスオーバーSUV”というマツダの定義が納得いくスタイルだ。
CX-30は万能選手であるという。たとえばロングドライブにも充分使える性能である、とするマツダでは、300kmほどのツーリングを企画してくれた。横浜にある同社のR&Dセンターから、長野県松本市を目指す旅である。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiこれまでCX-30には首都高速道路と市街地でしか試乗する機会はなかった。「ロング・ツーリングに使ってもらって、もっと一般的な目線で評価してもらえたら(より真価が味わえる)」という開発者の意向に従い、観光地に立ち寄りながらのドライブを体験したのだ。
もちろん、こういうコロナ禍の時期だから、いたるところでいわゆる“三密”回避の努力がなされていた。例をあげれば、食事はシールドを立ててとり、現地ではあまり地元のひとと接触しないように、というぐあい。
最初に乗ったのは、1997cc直列4気筒ガソリン・エンジンに4WDシステムを組み合わせた「20S PROACTIVE」。ラッキーなことに、といえばいいのか、以前から興味を持っていたマニュアル変速機搭載モデルだった。そのあと、1756cc直列4気筒ディーゼルターボエンジンと前輪駆動、それにオートマチック変速機を組み合わせた売れ線の組合せである「XD Lパッケージ」に試乗した。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiCX-30は、「CX-5」や「CX-8」といったマツダのほかのモデルと比較すると、だいぶスタイリッシュに仕上げてある。Aピラーがかなり寝ているし、リアのハッチゲートも傾斜角はだいぶ寝かされている。おかげでSUVかもしれないものの、クーペ的な雰囲気すら生まれているのだ。
とはいえ、かたち優先のクルマかと思うと、けっしてそんなことはない。115kW(156ps)の最高出力と199Nmの最大トルクを発揮するガソリンエンジンは、実用上充分な力を発揮する。くわえて、反応がよくしっかりしたステアリングやフラットな乗り心地など、快適性とファン・トゥ・ドライブがうまくバランスされているのが特徴だ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiさらに、「理想の歩きかたをしているときの背骨の立ちかたと、シートに体をあずけているときの背骨の立ちかたが、おなじになるようにを意識した」と、デザイナーが強調するシートも、疲労感をやわらげてくれるものだった。300kmぐらいのドライブをしたあとにクルマから降りて、「ああ、からだを伸ばしたい!」と思わずにすんだ。
つけ加えておくと、6段マニュアル変速機はけっこういい。シフトフィールがカチッとしていて、バランスもよく、ちょっと押してやるようにすると、すっと吸い込まれるようにゲートに入っていく。
最大トルクが4000rpmで発生するだけあって、「SKYACTIV G」エンジンはどちらかというと高回転型であるものの、2000rpm以下でもしっかりと力を発揮する。いまの水準からすると、199Nmの最大トルクはけっして数値的には目覚ましいとはいえないものの、使い勝手上はこれでも充分と思える。
Hiromitsu Yasui古い街並みによく合うCX-30
最初の目的地は、中山道の奈良井宿(ならいじゅく)。江戸時代に開発された宿場で、1968年にはじまった街並み保存運動地域のおかげで、むかしの雰囲気がうまく保存されている。
全長1kmにおよぶ街並みは、1978年に、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。車道と歩道の区別がなく、電線は地下に埋設されている。基本的にクルマは乗り入れ禁止なので、散策を楽しめる場所だ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiダークな色調の天然木を使い、2階を少しせり出した出梁(だしばり)造りが並ぶなかで、CX-30は意外なほど映えて見えた。マツダの広告宣材では、たいてい欧米の街中で、という映像が多いように思うものの、日本の伝統的な景色のなかでも調和を見せていた。
同様のことは松本市内でも感じる。たとえば中央通りという「土蔵づくり」の建物が並ぶ場所では、背景となった白壁にCX-30はよく似合っていた。ボディサイズは大きすぎず、車高は高すぎず。松本市内ではやたらマツダ車が多いのも(実際に長野県内の販売は好調だそうだ)、美しい町に暮らす住人の美意識にマツダのクルマがかなっているからなのか?
Hiromitsu YasuiCX-30は、インテリアも魅力的である。マツダの上級車種に通じる高品質感は、造型と素材と色調とのうまいバランスによるものだ。プラスチック感をみごとに排除している。
「カーナビゲーションのモニター画面が小さい」と、不満を持つ向きもあるようだ。けれど、大きなサイズになると造型美が破壊されてしまうのと、多くのユーザーが自身のスマートフォンを使うのが実情ということでもあるので、審美性を優先したマツダの決断は、それはそれでアリであると思う。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui“ファミリーカーはこれがいい”
ディーゼルエンジンにオートマチック変速機の組合せを持つ「XD」もまた、よく出来ていると感心した。さきに触れたように、1600rpmから発生する270Nmの最大トルクによって、発進でも中間加速でも、力はしっかり感じられる。
ターボチャージャーと吸気システムの間で起きる”息つぎ”(一瞬パワーが落ち込む領域)もほとんど感じられない。ターボチャージャーによるトルクの積み増しも自然なフィール。ノンターボの領域からスムーズにつながる。エンジニアが丁寧に調整したるのだ。
Hiromitsu Yasui個人的には、操作感がよく、運転の楽しさをより強く感じられるマニュアル変速機モデルがイチオシだ。これはガソリンエンジン車にしか設定がないので、今回の「20S PROACTIVE」は勧められるモデルとなる。
今回は乗れなかったけれど、「新世代ガソリンエンジン」とマツダが呼ぶ「SKYACTIV X」の搭載車にもMTは設定されている。SKYACTIV Xは、燃費とパワーの両立をはかった希薄燃焼/圧縮着火を採用しつつ、132kW(180ps)とよりパワフルなガソリンエンジンとモーターを組み合わせる。これに乗ってからでないと、ベストのCX-30は選べないかもしれない。
Hiromitsu Yasui価格は、「20S PROACTIVE」が297万円、「XD Lパッケージ」が306万5000円。競合をみると、トヨタ「ハリアー」(299万円~)や日産「キックス」(275万9900円~)など、ハイブリッド・クロスオーバーSUVのジャンルに新型車がいろいろ投入されている。
どのモデルもパワーがあるし、操縦安定性が高い。なかなか悩ましい選択になりそうだ。個人的には、とりわけキックスのワンペダル走行を含めた走りが、街中での使いやすさにおいて新鮮で、気に入っている。
Hiromitsu YasuiCX-30はパワートレインの多様性と、作りのよさで群を抜く。ドアの開閉音ひとつとっても、ていねいに作りこまれている点ではCX-30は際立つ。
「新しいファミリーカーを作りたい。しかも”ファミリカーならこれでいい”でなく、“ファミリーカーはこれがいい”と選んでもらうクルマにしたかった」。開発主査の佐賀尚人氏は、ドライブの目的地である松本市内のホテルで語ってくれた。納得のいく言葉である。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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