モータージャーナリスト津々見友彦が語る「日産MID4 II型」の衝撃
今でこそミッドシップと4WDの組み合わせはアウディR8、ランボルギーニ・ウラカン、ホンダ現行NSX、ポルシェ918スパイダーなど、数多の例がある。だが、1980年代では日本メーカーは言うに及ばず、イタリアやドイツでも市販モデルは存在しなかった。そんな折り、日産はV6をミッドに搭載した4WD「MID4」を開発していた。結果先に市販されることはなかったが、その技術はのちの日産スポーツに継承されていった。MID4は大きく分けて2バージョンしたが、大幅なモディファイを受けた「II」型を、モータージャーナリスト津々見友彦が当時テストしていた。津々見友彦による、当時のインプレッションをお伝えしよう!
「ミッドシップ+4WD」という先進的すぎるパッケージに驚く
1985年にフランクフルトショーにデビューした日産の「MID4」は衝撃的だった。4WDのスポーツカー。しかも低いボディに3ℓのV6エンジンのミッドシップという本格的なもの。ミッドシップそのものは既にトヨタMR2が前年に登場し珍しくはないが、大排気量でしかも4WDとなるとリヤエンジンのポルシェ959ぐらいで、ミッドシップ4WDとしてはユニークな存在だった。 2年後、日産の追浜テストコースでついに、より進化した2シーターのMID4-IIをドライブできた。 リトラクタブヘッドライト。フェラーリ・ディーノのようなリヤルーフから後端までのサイド処理のクーペスタイル。当時としては群を抜いて迫力のあるスポーティなエクステリアだった。試乗車は左ハンドル。コクピットに収まるとエクステリア同様すぐにでも市販に入れるような完成度の高さだ。
スポーツカーらしいタイトなコクピット
ナセルに包まれたメーターは大型のタコとスピードメーターが並び高速でも一見して確認できる。シートも大きく3つのブロックに分かれた座面のバケットタイプ。座ると低いボディのためにスポーツカーらしい低い位置からの独特の視線で、やはりスポーツカーを感じる瞬間だ。エンジンスタートさせると力強く滑らかなV6のエンジンサウンドが背後から迫る。ミッドシップ独特の“楽しさ”だ。 5速MTを1速にシフトして発進。スロットルを開くとV6サウンドが心地よく響く。6気筒エンジンはすでにフェアレディZが搭載しているので珍しくはないが、V6のミッドシップ、4WDはユニークなのだ。II型になりエンジンはインタークーラー、ツインターボでパワーアップされたVG30DETTの330psと格段に強化。
4WDらしい特性で常に弱アンダーな特性だった
鋭い動力性能はこのパワーをもちながら4輪で受け止めるため無駄がなく、フル加速しても、ホイールスピンなくロケットスタート。そしてコーナリングは4WDとしては癖がなく、ナチュラルだった。ただ、やはり4WDの特性で、常に弱アンダーな性格。安定して走れるが、Zのようにリヤを流すダイナミックな走りはしにくい。が、その代わりパワーを安全に使い切る効率のよい走りが可能。今思えば後のGT-Rの原点はこのMID4だったのだ。
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