商品の概要説明に登壇したのはアウディ ジャパンの新社長に就任したばかりのフィリップ・ノアック氏。ノアック社長は2004年にアウディAGに入社。日本をはじめアジアパシフィック地域における販売ディレクターや、ベントレーモーターズの欧州販売ディレクターを務めた経歴をもつ。冒頭の就任の挨拶では「ドイツ本社で長く日本を含むアジア太平洋地域を担当してきました。今回は家族とともに来日することができ、日本での生活をとても楽しみにしています。日本での初仕事がA8の発表であることに胸が高鳴っており、日本でさらにアウディを発展させることを目指していきます」と述べた。
A8は1994年に初代モデルが登場したアウディのフラッグシップだ。量産車初のオールアルミボディ「ASF(アウディスペースフレーム)」を採用し、その後も代を重ねるごとにナイトビジョンシステムや、マトリクスLEDヘッドライトなど、「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」をスローガンに掲げるアウディらしい先進装備の数々を搭載してきた。
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そして4代目となる新型は、昨年7月に欧州で量産車として世界初の自動運転「レベル3」を実現したと発表し、大きな話題を呼んだ。「トラフィック ジャム パイロット」という名の機能で、ドライバーの監視義務を伴わずに、60km/h以下の渋滞時に同一車線内で自動運転を行うというものだ。
発表会後の会見では、記者から自動運転に関する質問が殺到したが、「トラフィック・ジャムパイロットは、国際的な技術認証や各国の道路交通法の関係でまだいずれの市場でも導入されていません」とノアック社長は話した。
昨年、ドイツが世界で初めてレベル3を想定し、道路交通法を改正したが、実は認証制度がまだ整備されていないのが現状だ。各社のテスト車両を除けば、レベル3の自動運転車は世界中のどこを探しても存在しない。ノアック社長は実現に向けてどうすべきかという問いに「大事なのはグローバルでコンセンサスを取ることです。認証や法整備など世界各国が同じ方向に向かうべきだと考えています。現在、我々も法律家などを交えてどのように対応していくべきかを検討しています。昨年にあえてA8のレベル3を発表したことが世界に向けた一つの刺激になっていると思います」と答えた。
ちなみにレベル3の自動運転を可能にした最新の安全技術の一つが、量産車初のレーザースキャナー「LiDAR(ライダー)」だ。赤外線を照射して対象物までの距離や形状を3次元で把握するという。これに加えて5つのミリ波レーダー・5つのカメラセンサー・12基の超音波センサーの合計23個ものセンサーを搭載、これらから得た膨大な情報を統合的に分析して制御を行うセントラルドライバーアシスタンスコントローラー(zFAS)の採用によって、現在のレベル2であってもより人間の感覚に近い、遅れの少ない挙動を実現しているという。
また、パワーユニットにはアウディ初の48V電圧をいかしたマイルドハイブリッドドライブシステムを搭載。減速時には22km/h以下でアイドルストップを、55~160km/hの範囲でアクセルをオフにすると、エンジンを停止するコースティング走行をして燃費を稼ぐ。
A8がアウディの技術的ショーケースとしての役割を担っていることは、初代から新型まで変わることがない。日本でも2020年のオリンピック・パラリンピックにタイミングをあわせて自動運転の環境整備が進められているが、法整備などにはそれなりの時間を要するだろう。A8が本領発揮できる日を心待ちにしたい。
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