2011年12月に発売した初代N-BOXは、2017年9月1日に2代目(現行型)へとフルモデルチェンジする直前まで売れまくった。すでに新型の発売が公式に発表されていた2017年7月の時点で月販台数1万4503台を売り上げ、車種別販売ランキングで1位を獲得。モデル末期でもまったく衰えない売れ行きを示した。
また最近では、スズキ ジムニーが実に20年ぶりとなるフルモデルチェンジを控えており、その報道にともない現行型が大きく販売を伸ばしている。ジムニーは1970の年デビュー以来、3度しかモデルチェンジしておらず、また、それぞれのモデル末期でも好調な売れ行きを示した1台だ。
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モデル末期になっても売れ行きが鈍らなかったクルマは、N-BOX、ジムニーのほかにも存在する。ここではそんな11台のクルマたちをみながら、「売れ続けるクルマ」の条件について考えてみたい。
※本記事は2017年5月のものをベースにしています。
文・写真:ベストカー編集部
車両解説:永田 恵一
初出:ベストカー2017年5月26日号
「モデル末期でも売れる」クルマの条件
先代N-BOXがモデル末期にもかかわらず売れ続けた要因としては、クラスナンバーワンの居住性、使いやすさといった実用的な面でのよさと、世代、性別を問わず受け入れられやすい普遍的なデザインのよさなどが挙げられるだろう。
本企画で以下に紹介しているクルマたちも、マメに年次改良が続けられ「モデルチェンジが近くても現行車で十分」だと判断でき、デザインに古さを感じさせなかったクルマが多い。これが人気が長続きするための重要なポイントなのかもしれない。
そういう意味では、自動車ジャーナリストの渡辺陽一郎氏は「スバル車はモデル末期まで売れることが多い」と指摘する。
スバルは車種数が少ないため、モデル末期まで改良を繰り返し、また販売現場でも手を緩めると販売総数が激減するため、きっちりと売り続ける。下記では先代インプレッサを挙げたが、レガシィの歴代モデルも年数が経ても売れ行きが落ちないクルマが多かった。
もうひとつ渡辺氏が指摘するのが「モデルサイクルが長くなってから、末期まで売れるクルマが増えた」ということ。かつて4年ごとのモデルチェンジが通例とされていた時代にはあまりなかった傾向で、今後もその流れは続きそうだ。
以下、これらを踏まえて、モデル末期まで販売が落ちなかった、むしろ加速していったクルマたちを紹介したい。
NISSAN
ティーダ
2012年6月に生産を終了し、国内では初代かぎりでモデルが消滅となったティーダは、コンパクトで広い室内、手頃な価格と売れる要素が揃っていたクルマだけに終了が近づくほどに売り上げを伸ばした。実質的な後継車はノートが担い、ティーダの生産中止から3カ月後にその新型車も登場したが、その前にティーダの駆け込み需要が発生。最後は在庫整理のための値引きも拡大し、実用的なクルマが欲しい層に大きくアピールした。ティーダは海外では3代目が活躍中。日本でも復活を求めたいものだ。
NISSAN
先代セレナ
先代セレナもマーチと同様に万人受けするスタイルやベンチシートとキャプテンシートのよさをあわせ持つ2列目シートなどを理由に好調に売れていたところに、ライバルに先駆けて緊急自動ブレーキを設定。さらにフルモデルチェンジ寸前は値引きも強烈で、最後まで売れ続けた。
NISSAN
先代エクストレイル
先代エクストレイルは悪路走破性や使い勝手などSUVに求められる要素をバランスよく備え、売れる理由の揃ったクルマだった。モデル末期はガソリン車に加え、モデルチェンジ後も継続販売したディーゼル車も大幅に値下げしたうえ、現行型のコンセプト変更も追い風になり最後まで売れた。また、初代も息の長い人気車だった。
SUZUKI
先々代スイフト
先々代スイフトは登録車のイメージが極めて希薄だったスズキとしては欧州を強く意識するなど、「生まれ変わった」といえるくらい力の入ったコンパクトカーであった。そこに今やコンパクトカーのスポーツモデルの定番となったスイフトスポーツを継続したうえに、モデルサイクル中盤のビッグマイナーチェンジでは新エンジンへの換装やスイスポの細かな熟成を行うなど磨き続けており、モデル末期まで売れて当然のクルマだった。
NISSAN
先代マーチ
先代マーチはもともと堅実な販売実績を残していたクルマだったが、モデル末期の2009年に1.2Lで100万円を切る特別仕様車「コレット」を投入。当時はリーマンショック直後の不景気だったこともあり、低価格車のインパクトは大きく、人気を持続。個性的なスタイルも飽きられることがなかった。
SUBARU
先代インプレッサ
先代インプレッサは登場当初からアイサイト搭載車を設定し、全体的な質感の高さなど、売れる要素を多数備えたクルマだった。さらに登場翌年に並のSUV以上の悪路走破性を持つクロスオーバーであるXVを追加し、モデルサイクル後半にはハイブリッドや1.6Lのアイサイト付きといったバリエーションを拡充。そしてモデル最終年は大幅な値引きで乗り切るという作戦を展開し、常に満足度の高いクルマを提供し売れ続けた。
■まだあるこんな、モデル末期でも売れたクルマたち
NISSAN
180SX(1998年終了)
180SXが最後まで売れ続けたのは、ズバリS14シルビアが出来は悪くないものの肥大化し、コンパクトな180SXが好まれたため。S14の登場で廃止の予定がS15にフルモデルチェンジするまで生産されたほど売れた。
NISSAN
初代プリメーラ(1995年FMC)
ヨーロピアンなセダンだった初代プリメーラは堅実に売れたクルマだったが、モデル末期も2代目が初代のような個性を持たないクルマになるという情報が流れたこともあり、最後まで好調に売れた。
TOYOTA
3代目セルシオ(2006年終了)
3代目セルシオはコストパフォーマンスの高さに加え、後継モデルがレクサスになるのも微妙に影響した。「レクサスは整備でクルマを取りに来てくれない」という噂が出まわり、当時、まだなじみが薄かったレクサスよりも、サービスのいいトヨタディーラー扱いのセルシオのほうが安心というユーザー意識が働いたのだ。
MAZDA
歴代デミオ
SKYACTIVで方針転換を図った今とは異なり、かつてのマツダは値引き攻勢で販売を維持していた面がある。デミオもモデル末期には大幅値引きが出る常連。先代、先々代などはその効果もあって、モデル末期になっても一定の台数は稼いでいた。チラシ掲載で89万円なんていうのもよく見たもの。
TOYOTA
初代パッソ(2010年FMC)
初代パッソがモデルチェンジ直前のモデル末期まで売れた理由はズバリ「定番商品だから」。軽自動車やパッソのようなクルマは「故障などで必要になったから買う」という家電的な買われ方が多いこともあり、時期にそれほど影響されずモデル末期まで安定した販売が続くことがよくある。
※FMC…フルモデルチェンジの略。
【番外コラム】 モデル末期人気のKing of Kingはスバル 先代サンバー(2012年終了)
スバルオリジナル最後のサンバーがモデル末期に売れたのは当然だ。なにせスバルオリジナルのサンバーは軽トラながら「リアエンジンの4WDでスーパーチャージャー(おまけに軽で4気筒!)、悪路用のエクストラローを入れたら6速MT」という文字だけならポルシェ911のような個性溢れるスペックを持つクルマなのだから。そのうえプリミティブなクルマだけにMTなら走る歓びにも溢れまくっており、私は本気で最後のスバル製サンバーバンの豪華グレードのスーパーチャージャー、MT、4WDの黒の新車が欲しかったのだが、当時は貧困でとてもとても買えなかったという辛い思い出がある(永田恵一)。
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