登場から7年が経つも絶大な人気を誇るSUV「ホンダ・ヴェゼル」
いまや世界的に人気のジャンルとなったSUV。ホンダ・ヴェゼルはSUVブームの初期段階となる2013年に市場投入された、コンパクトSUVである。もともと人気の高いフィットをベースとしたことで、走りや使い勝手に優れ、また日本市場にピッタリのサイズ感で販売も好調。それではヴェゼルについて詳しく見ていきたい。
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■デビュー直後から爆発的人気を誇る「ヴェゼル」とは?
ヴェゼルは「新しい時代のスペシャルティカーをつくりたい」という志のもとで生まれたコンパクトSUVだ。発売当時は1.5リッターのNAエンジン、1.5リッターNAエンジン+モーターというハイブリッドの2種類のパワートレインで展開。それぞれにFFと4WDモデルを揃えた。ハイブリッドはツインクラッチ機構の7速トランスミッションにモーターを備えたi-DCD。その後、2019年に、1.5リッターターボエンジンを搭載するヴェゼル・ツーリングを追加。こちらはFFのみだが、現在は3つのパワートレインが選択可能だ。
それぞれの基本スペックは以下のとおりとなる。
●共通スペック
全長:4330mm(RS系とツーリングは4330mm) 全幅:1770mm(RS系とツーリングは1790mm) 全高:1605mm ホイールベース:2610mm FF車サスペンション形式:マクファーソン(F)/車軸式(R) 4WD車サスペンション形式:マクファーソン(F)/ド・ディオン式(R) ブレーキタイプ:ベンチレーテッドディスク(F)/ディスク(R)
●ハイブリッドのパワーユニット
エンジンタイプ:直列4気筒DOHC 総排気量:1496cc エンジン最高出力:97kW[132PS]/6600rpm エンジン最大トルク:156N・m[15.9kg-m]/4600rpm モーター最高出力:22kW[29.5PS]/1313-2000rpm モーター最大トルク:160N・m[16.3kg-m]/0-1313rpm トランスミッション:7速DCT
●ガソリン車NAのパワーユニット
エンジンタイプ:直列4気筒DOHC 総排気量:1496cc 最高出力:95kW[129PS]/6600rpm 最大トルク:153N・m[15.6kg-m]/4600rpm トランスミッション:CVT
●ツーリングのパワーユニット
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCターボ 総排気量:1496cc 最高出力:127kW[172PS]/5500rpm 最大トルク:220N・m[22.4kg-m]/1700-5500rpm トランスミッション:CVT
●グレード別の諸元と価格
・HYBRID Honda SENSING(FF) 車両重量:1270kg WLTCモード燃費:21.0km/L タイヤサイズ:215/60R16 車両本体価格:250万5555円
・HYBRID Honda SENSING(4WD) 車両重量:1350kg WLTCモード燃費:19.6km/L タイヤサイズ:215/60R16 車両本体価格:272万5555円
・HYBRID X Honda SENSING(FF) 車両重量:1280kg WLTCモード燃費:21.0km/L タイヤサイズ:215/60R16 車両本体価格:258万6018円
・HYBRID X Honda SENSING(4WD) 車両重量:1370kg WLTCモード燃費:19.4km/L タイヤサイズ:215/60R16 車両本体価格:280万6018円
・HYBRID Z Honda SENSING(FF) 車両重量:1320kg WLTCモード燃費:19.6km/L タイヤサイズ:215/55R17 車両本体価格:276万186円
・HYBRID Z Honda SENSING(4WD) 車両重量:1390kg WLTCモード燃費:18.4km/L タイヤサイズ:215/55R17 車両本体価格:298万186円
・HYBRID RS Honda SENSING 車両重量:1310kg WLTCモード燃費:19.8km/L タイヤサイズ:225/50R18 車両本体価格:286万2037円
・G Honda SENSING(FF) 車両重量:1180kg WLTCモード燃費:18.4km/L タイヤサイズ:215/60R16 車両本体価格:211万3426円
・G Honda SENSING(4WD) 車両重量:1270kg WLTCモード燃費:17.0km/L タイヤサイズ:215/60R16 車両本体価格:233万3426円
・X Honda SENSING(FF) 車両重量:1190kg WLTCモード燃費:18.4km/L タイヤサイズ:215/60R16 車両本体価格:220万5093円
・X Honda SENSING(4WD) 車両重量:1270kg WLTCモード燃費:17.0km/L タイヤサイズ:215/60R16 車両本体価格:242万5093円
・RS Honda SENSING 車両重量:1210kg WLTCモード燃費:17.8km/L タイヤサイズ:225/50R18 車両本体価格:252万833円
・TOURING Honda SENSING 車両重量:1360kg WLTCモード燃費:16.4km/L タイヤサイズ:225/50R18 車両本体価格:295万6800円
■単なるSUVにとどまらない! ヴェゼルの魅力とは?
-走行性能
ヴェゼルの走行性能は、「スマート&アクティブ」をコンセプトとして、走りの楽しさと上質感を併せ持つもとなっている。
その走りを支えているのが軽量かつ高剛性のボディだ。構造にはインナーフレームを採用。骨格を組み立ててから外板パネルを溶接するもので、継ぎ手部分の立体断面を確保したまま溶接し、さらに補強のために用いられるガゼットやボルトが不要となっていることで軽量化にも貢献する。加えて超高張力鋼板を骨格全体の21%に使用。フロントピラーには1500MPa、サイドシルに980MPaクラスのハイテン材を用いることで、高剛性で軽量、衝突安全性も高いボディにしている。
シャシーにも各部に工夫が見られる。フロントのストラットサスペンションには振幅感応型ダンパーを採用。これはメインピストンバルブとセカンドピストンバルブを備えるもので、小さい入力時には主としてメインピストンバルブが作用し、低い減衰力でコンフォート性を高め、大きな入力では両方のバルブが作用することで高い減衰力を発揮、スタビリティを確保するというもの。
加えてフロントにリバウンドスプリングを用い、伸び側のストロークを抑制することで、コーナリング時の安定性を実現している。
パワートレインは前述のとおり3種類を用意。まず1.5リッターNAエンジンだが、ホンダ自慢の可変バルブタイミング・リフト機構のVTECと、連続可変バルブタイミング・コントロール機構のVTCを採用し、全域に渡って十分なトルクが感じられるユニットとなっている。さらに高圧のマルチホールインジェクションで筒内に直接燃料を噴射し、燃焼室内で縦渦を作ることで、燃料効率を確保した。
ハイブリッド車は、1.5リッターのNAエンジンに、モーターを内蔵した7速DCTを組み合わせたパワーユニット。EV走行、ハイブリッド走行、エンジン走行と3つのモードを使い分け、高効率かつスムースな走りを実現する。また、世の中の多くのハイブリッド車が無段変速を採用するなか、7速の変速が可能となっており、SPORT HYBRID i-DCDの名に恥じないダイレクトな走行が楽しめるようになっている。システム全体の最高出力は152PS。
ツーリングに搭載される1.5リッターターボは、ライアンアップ中最強の172馬力/220N・mを発生するユニット。トランスミッションはCVTを組み合わせている。
走行性能はグレード別で差別化され、ターボ車のツーリングには、専用仕様のパフォーマンスダンパーを装備し、ボディ剛性も強化されている。さらに4輪のブレーキを独立して制御することで、正確なコーナリングを可能にするアジャイルハンドリングアシストも装備する。
また、ガソリンNA車に設定されるRSグレードでは、CVTを専用のセッティングにしている。アクセルペダル操作に対してダイレクトな走りが楽しめると共に、減速時にはトルコンATのようなステップダウンシフト制御が行われる。さらにRSグレード全般では、ステアリングの操作量に対しタイヤの切れ角が変化する可変ステアリングギヤレシオ(VGR)も採用した。
-外装、内装
ヴェゼルの外装は、「Dynamic Cross Solid」をコンセプトに、SUVらしい力強いロアボディと、クーペライクの洗練されたアッパーボディで構成される。
フロントフェイスはホンダ車に共通する「ソリッド・ウイング・フェース」をもとに、ヴェゼルらしい存在感を強調。サイドは後ろに向かって跳ね上がるキャラクターラインがスポーティなイメージを抱かせる。リヤビューはSUVならではのボリューム感のあるスタリング。一方でリヤウインドウを前傾させ、テールゲートスポイラーを装備することで軽快さも感じさせる。
走り系グレードであるRSは専用フロントグリル、ボディロアガーニッシュを装備。ツーリングは専用フロントバンパーロアーグリルを採用した。
ホイールは全車アルミが標準。グレード別に16インチ、17インチ、18インチが用意され、それぞれデザインが異なる。
内装は「Expansible Cockpit」がコンセプト。左右席で独立感をもたせつつ、広さを感じさせるデザインだ。とくに運転席は、ハイデッキセンターコンソールとドライバー側に傾けたセンターパネルにより、運転に集中できる空間となっている。
取り回しのしやすい比較的コンパクトなボディながら「Smart Cross Package」をコンセプトに、ミニバン並のリヤ席のニースペースを実現。大人4人であれば問題なく長距離移動ができるクルマとなっている。
ラゲッジは横1180mm×縦900mmの大開口部で、50インチテレビを立てたまま収納できる大きさ。開口部の地面からの高さも650mmと低く、重い荷物の積み降ろしも容易だ。容量は後部座席を立てたままでも404リットルと大きく、一般的なゴルフバッグが3つ入るサイズとなっている。
ー装備
装備面での注目ポイントを挙げていこう。まずLEDヘッドライトが全車標準。Xにはハロゲンフォグランプ、Z、RS、ツーリングはLEDフォグランプがそれぞれ標準装備となる。
SUVならではの嬉しい装備としては、Xの4WD車、Z、RS、ツーリングに運転席&助手席シートヒーターが標準装備されること。XのFF車に関してはメーカーオブションで装着可能だ。
ハイブリッドモデルは全車プラズマクラスター技術搭載の左右独立温度調整可能なエアコンを採用。ガソリンエンジン車系も、左右独立ではないもののプラズマクラスター技術が搭載されるため、快適な室内空間を保つことが可能となっている。
ー安全性能
ヴェゼルは先進安全装備のHonda SENSINGが全車標準装備されている。Honda SENSINGに含まれる内容は以下のとおり。
・衝突軽減ブレーキ(CMBS) ・誤発進抑制機能 ・歩行者事故提言ステアリング ・路外逸脱抑制機能 ・ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール) ・LKAS(車線維持支援システム) ・先行車発進お知らせ機能 ・標識認識機能
加えて、全車に標準装備されている安全装備は以下となる。
・運転席用i-SRSエアバッグシステム&助手席用SRSエアバッグシステム ・VSA ・モーションアダプティブEPS ・EBD(電子制御制動力配分システム)付きABS ・エマージェンシーストップシグナル ・ヒルスタートアシスト機能 ・フロント3点式ロードリミッター付プリテンショナーELRシートベルト ・フロントアジャスタブル・シートベルトアンカー ・リヤ3点式ロードリミッター付ELRシートベルト(左右席) ・i-Sizeチャイルドシート対応ISOFIX下部取付金具(リヤ左右席)+トップテザー取付金具(リヤ左右席) ・頚部衝撃緩和フロントシート ・イモビライザー ・セキュリティアラーム ・電子制御パーキングブレーキ ・オートブレーキホールド機能
ー燃費
ヴェゼルは全モデル燃費もいい。装備としては、全グレード標準でアイドリングストップシステム、エコアシスト機能(ECONモード、コーチング機能)が採用される。
燃費でとくに優れるのはやはりハイブリッドで、WLTCモードで18.4~21.0km/Lという数字。ガソリンのNAは17.0~18.6km/L、ターボのツーリングは16.4km/Lだが、ターボといえどレギュラーガソリン仕様なのでお財布に優しい点が嬉しい。
■ヴェゼル・モデューロX
ヴェゼルには、ホンダ・アクセスのブランドであるモデューロの名を冠したコンプリートカー「Modulo X」がラインアップされる。
ベースとなるのは、ツーリングとハイブリッドで、それぞれ「VEZEL TOURING Modulo X」、「VEZEL HYBRID Modulo X」という名称。
モデューロXシリーズは、走行性能を高めたモデルであり、ヴェゼルでは専用スポーツシート、各種エアロパーツ、専用サスペンションなどを装備。エアロは「実効空力」と呼ばれ、単なる見た目だけでなく操縦安定性に効果のあるものとなっている。
■現行モデルから予想する新型ヴェゼルのラインナップ
具体的なフルモデルチェンジの話は出ていないが、ホンダは現在、SPORT HYBRID i-DCD、i-MMD、SPORT HYBRID SH-AWDという3つのハイブリッドシステムをもっているが、これは今後統一されていく可能性が高い。
残るとされるハイブリッドシステムは、2モーターを搭載し、一部クルージング時の低負荷領域のみエンジンが直接駆動するが、基本はモーター駆動となるi-MMD、現在の名称でe:HEV(イーエイチイーブイ)となる模様だ。
実際ヴェゼルは3代目フィットをベースに作られたSUVである。フィット自体が4代目となり、ハイブリッドがi-DCDからe:HEVに変更されているため、ヴェゼルはそうなる目算が高いだろう。
そうなると気になるのがガソリンモデル。2020年末にフルモデルチェンジを行った日産ノートはe-POWERと呼ばれるシリーズハイブリッドのみになり、またライバルとなるSUVのキックスもe-POWERだけで勝負している。
ではヴェゼルに関してはどうか? あくまで予測でしかないが、ガソリンモデルは残ると考えられる。ヴェゼルは2013年12月に登場しており、いまだ高い商品力を保っているとはいえ、8年目に入っている。まもなくフルモデルチェンジを行っても不思議ではない。
ホンダは日本市場でいえば、レジェンド、アコード、インサイトのセダンラインアップとNSXが電動車両のみとなっている。ただし、NSXは特別なスーパースポーツであり、その他3つのモデルは、正直なところ日本であまり台数が出ていない。それゆえ電動車のみの展開も可能だが、ヴェゼルは売れ筋のコンパクトSUVである。モデルチェンジのタイミングが将来的なものではなくまもなくであることを考えても、2020年に登場した4代目フィットが、ガソリン車とハイブリッドをラインアップしたことから、ガソリンモデルは残るであろう。
■まとめ
コンパクトSUVとして高い人気を誇るヴェゼル。前項でフルモデルチェンジが近いであろうと書いたが、現行モデルをあえて選ぶという手法も面白い。ハイブリッド限定の話となるが、恐らく7速DCTにモーターを組み込んだシステムのi-DCDは、この先どのクルマにも搭載されない。このシステムは、ハイブリッドでありながらダイレクト感の高い走行フィールをもっているため、走り好きの間では評価が高いのだ。気になるのであれば、ぜひ一度、今のうちに試乗してほしい。
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さようならホンダ。