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著者 :増田 真吾
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わずか197台の生産にもかかわらず、現在でも伝説的な人気を誇る“ケンメリGT-R”。生産台数が少なかった理由として、ネガティブな説が挙げられることもありますが、実際は最後のS20型エンジン車として後に進化を遂げたモデルです。今回は希少車“ケンメリGT-R”の魅力について詳しく紹介します。
ハコスカで登場したGT-Rはケンメリに受け継がれたGT-Rは、3代目のスカイラインである通称“ハコスカ”から追加された最上級グレードです。4代目スカイラインの“ケンメリ”にも、GT-Rのグレードは引き継がれました。
大衆受けを狙ったベース車両とは方向性が異なったものの、見事に伝統を受け継ぎ、ケンメリGT-Rはスカイラインの新たな伝統を生み出したモデルへと進化を遂げます。
ベースとなった4代目スカイライン当時大ヒットした3代目“ハコスカ”の次モデルとして登場したのが、4代目C110型スカイライン、通称“ケンメリ”です。1972年9月に登場したケンメリは、高性能化を目的として骨太に作られたハコスカとは対照的に、大衆受けを狙ったクルマとして開発されます。
“ケンメリ”という愛称の発祥であるCMのキャッチコピー「ケンとメリーのスカイライン」に象徴されるようにソフトなイメージで売り出され、歴代最多となる約67万台を売上げました。
4ヶ月遅れで発売されたGT-RケンメリGT-Rが登場したのは、ベース車両発売から4ヶ月後の1973年1月。大衆受けを狙って開発されたグレードとは異なり、KPGC110型ケンメリGT-Rはその称号にふさわしく、ベース車両とは大きく差別化が図られました。
オーバーフェンダーやダックテールスポイラー、フロントグリルといったGT-R専用設計の外装パーツを備え、ベース車両と大きく異なる印象に仕上げられています。
ハコスカからの進化を遂げたケンメリGT-RKPGC110型ケンメリGT-Rの生産台数は、わずか197台と言われています。(生産台数には諸説あり)ベースである4代目スカイラインの大ヒットを考えると、当時としてはかなり少ない台数です。しかし、限られた生産台数や条件のなかでも、ケンメリGT-Rは先代から大幅に進化を遂げています。
特に大きな影響を受けたのは排ガス規制による同型エンジンの採用です。厳しい時代を背景に、ケンメリGT-Rがどれだけ魅力的なクルマに仕上げられていたかを紹介します。
余り部品の寄せ集めではない限定197台となった理由を「先代"ハコスカ”で余った部品で組み上げたから」とする説もあります。しかし、ケンメリGT-R専用に開発された外観部品はもちろん、エンジンやサスペンションなど型番が共通の部品もケンメリ用として生産されました。
シャシーの見直しも含めて専用の部品開発も行われており、スカイラインGT-Rとしてしっかりと進化しています。
排ガス規制の中で模索したスペックアップ新たに設けられた排ガス規制をクリアできなかったことが、ケンメリGT-Rをわずか4か月という短命に終わらせた要因だと言われています。新たな開発費を投じることができず、規制をクリアする新しいエンジンを搭載することが叶わなかったのです。
ハコスカから受け継いだ同型のS20型エンジンは最高出力160㎰、最大トルク18.0kgmを発生し、数値上のスペックに変更はありません。しかし、中速域重視のセッティングを見直し、補器類はケンメリ用にアレンジされて、型式とスペックが同様ながらも進化を感じられるよう手が加えられました。
また、シャシーやサスペンションの徹底的な見直し、ブレーキにマスターバックを導入するなど高いハンドリングとコントロール性能を手に入れています。
GT-Rらしいスパルタンな内装性能や外観だけではなく、乗り込んだ際に感じるインテリアの特別感もGT-Rの魅力の1つです。ケンメリGT-Rは、先代のハコスカ以上に内外装でベース車両との差別化が図られています。
ダッシュボードには、横一列にメーターが並べられたインストパネルにアルミパネルが取り付けられ、よりスパルタンな印象に仕上げられています。その中には240km/hまで表示されたスピードメーターと、10,000rpmまで刻まれたタコメーターが組み込まれています。
ほかにも、表皮やデザイン、ヘッドレストまで一新された本格的なバケットシートや本革巻きのステアリングなど、“走り”と“特別感”を意識したGT-Rらしい内装に変化しました。
「ケンメリGT-Rならでは」の魅力が詰まっているからこそ希少車としての価値が高い旧車で販売台数の少ない希少車ともなれば、確かに価格は高騰しがちです。しかし、クルマとしての魅力がなければ買い手がつきません。
ケンメリGT-Rが、余りものの寄せ集めやただ排ガス規制に翻弄されただけのクルマであれば、現在の人気はなかったでしょう。厳しい条件のなかでも妥協することなく、“GT-R”にふさわしいクルマ作りをしたことが現在の人気につながっているのです。
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