誰もが慕う東北660選手権の大ベテラン
軽自動車だけで争われるレースとして人気の「東北660シリーズ」。新規格NA(自然吸気エンジン)搭載車で争われる東北660選手権に参戦する、ベテランの大塚 猛選手のマシンを紹介します。軽自動車用以外の車種からもパーツを流用しているという、マシンメイクの秘密に迫ります。
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シルビアからパーツを流用するなど技ありメイクが光る
公式レース経験者やプロショップのオーナーも多く参戦する、東北660選手権の最高峰であり改造できる範囲も広い1クラス。2024年シーズンは若手が何名かステップアップし、過去にないほどの盛り上がりをみせている。
そんなチャレンジャーを待ち受けるベテランのひとりが、プロショップ「オートモディファイ・タク」の大塚 猛選手だ。トヨタ「スターレット」や「ヴィッツ」などのワンメイクレースで活躍し、東北660選手権の初参戦は2015年で2クラスからスタート。2018年から1クラスへ上がり還暦を過ぎた今も、当初からの相棒であるダイハツ「エッセ」と第一線に立ち続けている。
豊富な経験に基づいた老練なレース運びや接触を避ける安全なドライビングはもちろん、細部まで徹底的に作り込まれたレースカーも多くのエントラントから目標とされている。
エンジンは耐久性が高いとされるVE1(KF-VE型)と呼ばれる初期型で、内部はレギュレーションに沿って純正流用パーツのみで構成する。注目すべきは自分で製作したワンオフの吸気系だ。パイプを作るくらいの話はほかのクラスでも聞くが、大塚選手は日産「シルビア」などに搭載されるSR20ターボ用のスロットルに目を付けた。エッセ純正のφ42mmに対しφ50mmと圧倒的に大きく、アダプターを自作しなんとかドッキングさせたという。
大きく増えた吸気量はエアクリーナーの変更も余儀なくされ、試行錯誤を繰り返しながら作ったパイピングはなんと5セット。空気が溜まる部分の位置や大きさを見極めつつ、テーパー形状に絞っていくことで流速を高め、効率よく空気をエンジンへ送り込むスペシャル品だ。
当然ながら出口であるマフラーも市販品では合わない。メインパイプはφ50mm、出口はφ60mmで製作し、できる限り薄い部材で軽量化にもこだわった。レギュレーションで定められた排ガスの基準をクリアするため、キャタライザーはバイク用をサイレンサーの前に取り付けている。
そして制御系はリンクECU。1クラスに参戦した当初はHKSのFコンVプロを使っていたが、軽自動車に限らずお客さんの選択肢を増やすべくイチから勉強し、今や1クラスのライバルたちからもセッティングを依頼されるほど。
そして大きな武器となっているのがトランスミッションだ。1速と2速はノーマルで3速と4速が「ストーリアX4」純正、5速は廃盤となり中古もほぼ見つからない「RSマッハ」だ。タイヤの外径にもよるが、現在のレブリミットである9000rpmに対してはもっとも戦闘力が高く、エンジンのポテンシャルを引き出せると考えている。
ボディの軽量化が走りを激変させた
2023年シーズンからの大きな変更点はボディ。すでにボンネットやリアゲートは軽量タイプに交換していたが、車両規則の緩和により条件つきでリアドアの変更が可能となったため、大塚選手は早速ハートビート製のFRPドアを導入。左右で20kgものダイエットに成功したという。
シェイクダウン前は重量の前後バランスが崩れるかと危惧していたものの、実際にサーキットを走らせると足まわりのセッティングは以前と一緒で、逆にナーバスなところもあったリアの挙動が落ち着いて驚いたと話す。
スポーツランドSUGOでハードブレーキングが必要なバックストレートエンド、そしてスピードをギリギリまで上げておかないと失速する最終コーナーの進入は、リアが安定したことにより純正ドアのときより格段に走りやすくなったそうだ。
大塚選手が感じた変化は如実に成績へと反映されており、今年の開幕戦では練習/予選/決勝とトップを譲らず、圧倒的な速さで見事ポール・トゥ・ウィンを決めた。未達成の1クラスのチャンピオンに向け、大きな一歩を踏み出したといっていいだろう。
2024年シーズンは冒頭で述べたようにステップアップ組が多く、1クラスは予選落ちが出そうなほどの激戦区となっている。マシンメイクにせよドライビングにせよ若者にとっての手本であると同時に、いい意味での「ラスボス」として東北660選手権に君臨し続けてほしい!
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みんなのコメント
裏山鹿
シルビアのパーツはかの岡山トゥデイも採用しているなど軽レース界で人気。
目の付け所が違いますなぁ。