少々旧聞となるが、登録車の2019年8月度の販売台数はトヨタのコンパクトミニバンである「シエンタ」が8745台を販売し、初の販売台数トップに躍り出たことが話題となった。1位から5位は以下の結果で、
1位 トヨタ シエンタ 8745台
2位 日産 セレナ 7714台
3位 日産 ノート 7709台
4位 トヨタ アクア 7484台
5位 トヨタ ルーミー 7474台
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路上でもよく見るクルマが並ぶ。
そのなかで注目したいのは、登場から間もなく8年が経過するアクアが、4位にしぶとく入っていることである。
アクアは2019年1月から6月の販売台数でも約6万台を販売し、ノートに続く2位、2019年1月から8月までの販売台数の合計でも約7万7000台、月平均約1万台と好調な販売をキープしている。
全般的にコンパクトカーのフルモデルチェンジサイクルは長期化しているのだが、それにしても立派な成績。当記事では「なぜアクアが今でもこんなに売れているのか?」を考察してみる。
文/永田恵一
写真/TOYOTA、編集部
【画像ギャラリー】いまだに販売好調なアクアの詳細を紹介!
■実はライバルに対してアドバンテージは少ない
はじめにアクアについて簡単に紹介しておくと、アクアは東日本大震災の甚大な被害で日本が暗い雰囲気となっていた2011年に登場した、ヴィッツベースのハイブリッド専用のコンパクトカーである。
アクアは登場時先代プリウスほどではなかったものの、発売後1カ月で当時の月間販売目標台数の1万2000台の10倍となる約12万台を受注し、大人気車となった。
登場後も燃費やボディ剛性の向上、スポーツグレードのG’SやGRスポーツ、最低地上高を上げたクロスオーバーなどの追加、自動ブレーキの設定と性能向上といったマイナーチェンジや改良を何度も施されているが、大規模な変更というのは受けていない。
筆者の実家には2012年12月登録の初期型アクアがあり、実家に帰った際にはよく乗っているので、自動車メディアではアクアに詳しいほうだと思う。
アクア自体の印象をクルマ好きの視点でまとめると、「クルマの質については乗り心地など不満が多々あり、特に安いということもなく全体的に普通」といったところだ。
さらにノートe-POWER、フィットハイブリッド、デミオディーゼルといった燃費向上のための飛び道具を持つコンパクトカーと比べてみると、広さではノートe-POWERとフィットハイブリッドに完敗、速さや楽しさといったパワートレーンについてもノートe-POWERとデミオディーゼルに完敗、アクアだけ4WDがないなど、ライバル車に対するアドバンテージを見つけるのは難しい。
アクアは、初期型から着実に進化はしているが、大きくテコ入れしてことがない。e-POWERを投入したノートなどに比べて、武器が少ない印象だ
■幅広い層を取り込んでいるアクア
では普通にクルマを使う、買う人の視点でアクアがいまだに売れている理由を考えてみると
[1] いい意味で万人向けのクセがなく、飽きないスタイルをしている。
[2] リッター20kmが確実な燃費は、普通にクルマを使う人や長年使ったクルマから乗り換えた人には未だに強烈なパンチがある。
[3] ノートもそうなのだが、売れているクルマだけに原色系の明るいものを含めボディカラーが豊富なこと、前述したバリエーションの拡充や改良、2018年には後付けも可能な「踏み間違い加速抑制システム」の設定といった、時代の変化に合わせたアップデートもそれなりに行われており、普通の人には古さを感じさせない。
現行モデルでは、12色のボディカラー(特別仕様車を除く)を揃えるアクア。パステル系はないが、男女問わず受け入れられやすいカラーを採用している
[4] アクアはトヨタ自動車東日本の岩手工場で生産されている。これは筆者のかなり強い私見であるが、このことを知った人のなかに「復興の支援になれば」という気持ちでアクアを買っている人も少なからずいるのかもしれない(アクアに文句ばかりを言っている筆者も、この点だけは誇りに思っている)。
[5] 日産とホンダのディーラーが日本に2000店程度なのに対し、アクアはトヨタ全ディーラー扱いなので約5000店の店舗で売っており、全国どこでも買えて直せるという絶大な安心感がある。
[6] トヨタの万人向けのコンパクトカーという実に無難なクルマなのに加え、ハイブリッドカーを自分のものにしたことがない普通の人にとっては、いまだに新鮮であるという相乗効果。
[7] アクアが登場した頃は、アクアのトップグレードが185万円、先代プリウスのベーシックグレードが217万円だったため、装備内容や広さなどを含めた車格といった実質的な差額も考えると「プリウスを買った方がいいのでは?」という議論もあった。しかし、現在は同じ見方で50万円もの差額があり、結果的に両車の棲み分けが明確になったことが、アクアにとっては追い風になっている。
といったことが浮かぶ。
そこに書籍や音楽などを代表に日本人のモノの選び方でよくある「多くの人が持っているものなら間違いないだろう」という心理が働くと、アクアのように売れている商品はもっと売れるという好循環が起こり、アクアが未だに売れているのも、クルマが基本的には大衆商品なのを考えれば大いに納得できる。
少なくとも日本市場では大成功を納めたアクアも、さすがにフルモデルチェンジがそう遠くないだろう。
■次期型アクアではさらに進化
次期型もヴィッツ(車名は輸出名のヤリスに変わるようだ)がベースと思われるが、次期ヴィッツは評価の高いTNGAプラットホームのコンパクトカー用を使うだけに、次期アクアも一気にいいクルマ度を高めるに違いない。
10年目となる、2021年末にフルモデルチェンジすると予想されているアクア。最新のプラットフォームであるTNGAと、新世代THSを組み合わせて燃費性能と質感を向上させそうだ
また次期アクアには、次期ヤリスとの差別化や燃費向上のための空気抵抗といった折り合いもあると思うが、現行アクアの弱点のである乗降性の悪さや室内が広くはないことも改善してもらい、現行アクアユーザーが乗り換えてくれる無難なモデルチェンジを期待したいところだ。
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