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実質逆転!? 常勝ヤリスを抜いたアクアの躍進 どこが凄い?

 2021年7月19日にデビューした新型アクアは、現在まで堅調に売れている。同クラスには、これまで販売台数でトップに君臨するヤリスがいるが、アクアの人気はすでにヤリスを超えているように感じるのだ。

 デビュー当時は、少々盛り上がりに欠けた2代目アクアだが、じわじわとその魅力が浸透したのか、ヤリスの地位を脅かす存在となった。

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 日本自動車販売協会連合会が新車販売台数を発表しているが、ヤリスのデータはヤリスハッチバックとSUVのヤリスクロスを合算した数値だから、アクア単独と比べると販売台数はどっちが上になるのか気になるところ。

 本企画では、ヤリスをも超えていくアクアの魅力はどこにあるのか、元トヨタディーラー営業マンが、アクアの魅力を紹介するとともに、ヤリス、アクアの棲み分けについて考えてみたい。

文/佐々木 亘
写真/トヨタ、ベストカーweb

[gallink]

■じわじわと人気が高まってきたアクア! 売れ行きはどう変化している?

トヨタ アクア。販売台数でトップのヤリスをとうとう追い抜いた

 アクアのモデルチェンジ前、販売台数はヤリスが圧倒的に上だった。2021年1月の販売データでは、ヤリスが8180台(ヤリスクロスを含まず)に対してアクアは3033台と、大きな差がついている。

 新型アクア発表直前の2021年6月まで、ヤリスは毎月1万台前後の販売台数で推移するなか、アクアは2000~3000台を行ったり来たりだった。

 しかし、新型アクアのデビュー以降、ヤリスとアクアの立ち位置は逆転する。2021年8月にはヤリス7680台(ヤリスクロスは1万310台)に対して、アクアは9442台の販売を記録した。

この月の販売台数ベスト20(普通乗用車)では、1位ルーミー(1万347台)、2位ヤリスクロス(1万310台)に続き、アクアが3位(9442台)、ヤリスが4位(7680台)となっている。

 アクアは、2021年9月に1万1137台を販売し、普通乗用車販売台数でトップに躍り出ると、10月も半導体や部品不足で生産ラインが停止する等の影響を受けながら、7643台を堅調に売り上げる。一方、ヤリス(ヤリスクロスを含まず)は、9月に5800台、10月は4980台と、勢いが落ち始めた。

 ヤリスハッチバックとヤリスクロスが合算されている自販連の乗用車ブランド通称名別順位では、2021年10月は1位ヤリス(1万596台)、2位アクア(7643台)とかろうじてヤリスがトップを維持している。しかし、ヤリスクロスを除いたヤリス単独では、アクアに太刀打ちできない状況となっているのだ。

 新型コロナウィルスの影響で、納期遅延や工場の稼働停止など、暗いニュースが多かった昨今。アクアのデビューは、こうした暗い情報にかき消されてしまったが、混乱が落ち着きつつある今、じわじわとその高い実力が知れ渡ってきている。

■アクア発売(7月19日発売)以降のヤリスとアクアの新車販売台数

●7月/ヤリス:1万1750台、アクア:7902台
●8月/ヤリス:7680台、アクア:9442台
●9月/ヤリス:5800台、アクア:1万1137台
●10月/ヤリス:4980台、アクア:7643台

※ヤリスの販売台数はヤリスクロスを含まない

■アクアはハイブリッドを突き詰めたハイブリッド専用車

アクアのマルチインフォメーションディスプレイでは走りの傾向や燃費を確認できる

 プラットフォームやパワーユニットは共通、ボディサイズはほぼ同等だが、若干アクアの全長が長い。これによりアクアの後席空間や荷室空間には、ヤリスよりも若干の余裕があるが、その差はわずかだ。数値上での違いが少ない両車だが、ハイブリットの制御面では、明らかな差を感じる。

 走行時のモーター制御はアクアが上手だ。同型のパワーユニットなのだが、走行フィールは、アクアの方が自然に感じられる。EV走行可能速度域が広く感じられるのもアクアだ。新開発のバイポーラニッケル水素電池が、良い働きをしているのだろう。

 ハイブリッド車は燃費を伸ばすために独特のアクセルワークを必要とする。発進時には大きめにアクセルを踏み込み、十分に加速したら一度アクセルの入力をゼロ付近まで戻す。

 するとEV走行に切り替わるので、アクセル踏み込み量をコントロールして、運転者自らがEV走行の状態を長く保つように運転するのだ。こうすれば、ハイブリッドの高い燃費性能を十分に引き出すことができる。

 しかし、全てのユーザーがこのような走りをできるわけではない。実際に筆者がプリウスや先代アクアの販売に従事していた際、「ハイブリッドなのに燃費が悪いぞ」というユーザーの声を多く聞いてきた。

 現役営業マンの時には、こうした声をいただくお客様一人一人と試乗車でドライブへ出かけ、ハイブリッド独特のペダル操作を伝えて回ったものだ。

 30系プリウスや初代アクアでは、特にこのテクニックが必要で、販売側としてはハイブリッドの取り扱いに苦労した思い出がある。50系プリウス以降は、EV走行域が拡大され、旧モデルよりは扱いやすくはなったが、テクニックが必要な点は変わらない。

 ヤリスも同様に、ハイブリットの魅力を最大限に引き出すのなら、繊細なアクセルワークが必要になる。

 対するアクアは、格段にEV走行が行いやすくなっている。煩雑にアクセルを操作しても、EV状態がキープされ、特別な操作がなくても燃費を十分伸ばすことができるのだ。

 また、モーターの出力制御が細かくなり、アクセル&ブレーキ操作で感じる違和感が少なくなっている。ハイブリッドは好きになれないと、敬遠していたユーザー層でも、純ガソリン車と同じように操作すればいい。アクアなら純ガソリン車と同じような運転方法で、ハイブリットの良さを感じ取ることができるはずだ。

 ハイブリッドの利点を感じやすく、ハイブリッド感を感じさせないのがアクアの魅力である。特徴が削られて丸くなったことで、多くのユーザーの支持を得やすくなった。

■クラスを超えた静粛性と乗り心地の良さは一級品

アクアはヤリスと比べて不快な振動や騒音が少なくなっている。上級クラスにも劣らない乗り味だ

 アクアは振動や音といった走行中の不快要素を、ヤリスよりも少なく感じる。ヤリスは良くも悪くもコンパクトカーを感じる乗り味で、俊敏で軽快なのだが、振動や音の処理は、クラス相応の質感だろう。取り立てて悪いわけではないが、上位セグメントと戦えるかと言われると疑問が残る。

 対するアクアは、ヤリスと同じプラットフォームとは思えないほど、静かで乗り心地がマイルドだ。2クラス上のミドルサイズのセダンに乗っているような乗り味である。

 実際にアクアを購入する層は、コンパクトユーザーからセダンユーザーまで幅広い。ヤリスには見向きもしなかったユーザーが、アクアには強い興味をもっていると、販売現場からは驚きの声が上がっている。

 アクアは初代モデルほどの爆発的な売れ行きではないが、じっくりと存在が知れ渡っていくうちに、段々と支持層が広がっているようだ。人気がじわじわ高くなるクルマは、ロングセラーとなることが多く、今後もアクアの人気は高い次元で維持されていくものと予想される。

■ヤリス、アクア双方の棲み分けポイントはココ!

ヤリス車内。一人で運転を楽しむにはヤリスが適している。後席は長時間乗車には少し窮屈に感じるかもしれない

 筆者は、ドライバー1人だけで使うケースが多い場合にはヤリスを、2人以上でクルマに乗ることが多い場合にはアクアをおすすめする。

 クルマを操縦する楽しさを感じるのはヤリスだ。アクアは同乗者に優しいクルマであり、広さはもちろんだが、乗り心地に角が無くスマートである。心地良さを感じるフィールドが違うので、ユーザーの使い方に合わせて、選び分けると良いだろう。

 販売面で考えれば、売りやすいのは圧倒的にアクアであろう。装備が充実し、走行フィールが広く好まれるアクアは、多くの人が「良い」と感じるクルマになった。

 アクアの仕上がりの良さは、アフターフォローのしやすさにもつながる。クルマに対して、ユーザーからの不満が出にくく、良好な関係性が維持できるのだ。売り手としてはヤリスよりもアクアを強く勧めたい気持ちがあるだろう。積極的に売っていけるアクアの方が、今後の販売台数も伸びやすい。

 ユーザーはもちろん、販売側からの支持も厚いアクア。かつて軽自動車を含めた新車販売台数で1位を獲ったクルマの実力は伊達じゃない。2代目となり大人のコンパクトカーへ変身したアクアの勢いは、今後も増していくだろう。また記録的な販売台数を叩き出す日も近いかもしれない。

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