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新型アルファードも「ナット式」 なぜ日本車はドイツで主流の「ボルト固定式」が少ないのか

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新型アルファードも「ナット式」 なぜ日本車はドイツで主流の「ボルト固定式」が少ないのか

 ドイツ車のホイール固定方法は、ほとんどがボルト固定式ですが、日本車はナットで固定する方式が主流です。日本車でも、トヨタ「クラウンクロスオーバー」やレクサス「IS」や「NX」、「RX」など、ボルト固定式を採用するモデルも出始めていますが、先日フルモデルチェンジとなった新型「アルファード」/「ヴェルファイア」はナット固定式と、同じトヨタ圏内でも固定形式は統一されていません。なぜ日本車はボルト固定式が少ないのでしょうか。

文:吉川賢一
アイキャッチ画像:Adobe Stock_Rares
写真:TOYOTA、LEXUS、写真AC、Adobe Stock

新型アルファードも「ナット式」 なぜ日本車はドイツで主流の「ボルト固定式」が少ないのか

ボルトサイズが同じならば、剛性に大差はない

 ホイール固定方式については、「欧州は最高速度が高いため、剛性を重視したボルト固定式を採用しており、国産車はメンテナンス性を重視してナット固定式を採用している」といわれることがありますが、ボルトサイズが同じであるならば、ナット固定式が、剛性や強度面でボルト固定式に劣るということはありません。

 たとえば、国産メーカーが使っているナットは、普通乗用車クラスだとM12サイズ、軽自動車クラスだとM10サイズです。メーカーによってピッチ(ネジ歯の山の距離、トヨタホンダマツダ三菱ダイハツ系は1.5、日産スバルスズキは1.25)は若干異なりますが、車両生産工場での作業性や、ディーラーなどでのサービスなど、長い間使われ続けた慣習によって、M10サイズ、M12サイズで統一されています。

 一方、昨今のドイツ車が使用しているラグボルトはM14サイズ(ピッチは1.5)と、ボルト径が大きくなっているために剛性や強度が高く、標準的な締結トルクも上がります。例えば、M12のナット固定だったレクサスISのホイールの規定トルクは103N·m(10.5kgf·m)でしたが、2020年10月のマイチェンでM14のラグボルト固定となったあと、140N·m(14.3kgf·m)まで約36%も増えています。タイヤが強い締結力でがっちりと固定されることで、高速領域でのブレーキングやハンドリングでの足回りの剛性感が高まります。

 レクサスISがラグボルト式に変えたときのプレスリリースでは、「締結力の強化と、質量の低減を図ることで、気持ちのいいハンドリングとブレーキングを実現」とあります。締結力の強化は、ボルト太さをM12からM14へ変えていることが理由であり、ナット固定式とボルト固定式の決定的な差ではないのです。

国産メーカーが使っているボルトサイズは、普通乗用車クラスだとM12サイズ、軽自動車クラスだとM10サイズとなっている(PHOTO:写真AC_ふもみん)

ドイツメーカーがボルト固定式なのは、さまざまな面で都合がいいから

 では、なぜドイツメーカーではホイール固定が面倒なボルト固定式を使い続けるのでしょうか。ひとつは日本と同じで、M14のラグボルトを長年使い続けたことで業界スタンダードとして根付いていることが考えられます。修理パーツも含めてこのサイズで統一されていますので、いまさら変えるのも、というのがあるのでしょう。

 また、ナット固定式だと、ハブ+ボルト、ボルト+ナットの2か所で締結されるのに対し、ボルト固定式はハブとボルトの1か所と、少ない部品で締結しているほうが都合がいいということも考えられます。このように、強度や剛性が同じだとしても、設計検討のしやすさや、故障した際の交換部品の種類が少なくて済むこと、低コストで済むなどの理由で、ドイツメーカーではボルト固定式を採用しているのでしょう。工業製品の構造として賢い設計だといえるのではないでしょうか。

 なお、クラウンクロスオーバーやレクサスIS、NX、RXは、ドイツ車と同じM14のラグボルト(長さや頭の形状は異なる)を採用していますが、冒頭でナット固定式を採用したとした新型アルファード/ヴェルファイアもM14サイズでのナット固定式です(先代はM12ボルトだった)。やはり剛性を高めたいならば、ボルト固定でなくとも、ナットのサイズをM14にすればよいのです。また、「ランドクルーザー」や「センチュリー」、レクサスの「LS」「LC」「LX」、ホンダの「シビックタイプR」、日産「GT-R NISMO」なども、M14サイズのナット固定式となっているようです。

ISがレクサスで初採用したボルト固定式。ホイールの規定トルクはM12ナット固定時代の103N·m(10.5kgf·m)から、M14のラグボルト固定で140N·m(14.3kgf·m)まで、約36%も増えた

治具さえあれば、ボルト固定式の作業性は、それほど悪くはない

 ボルト固定式のネックであるホイール取り付けの手間も、ハブ側へ10cmほどのスチール棒をガイドとして差し込み、その上からホイールを通してはめ込む「ホイールセッティングボルト」があれば、さほど苦労はしません。筆者もひとつ持っていますが、あるのとないのとでは、時間と疲れ方が全く違います。

 もちろんナット固定式のほうが、ホイールセッティングボルトを装着して、取り外す手間がないぶん早く終わりますが、ボルト固定式のドイツ車に乗っている方には活用していただきたいアイテムです。

ホイールセッティングボルトがあれば、ホイール固定作業は劇的に楽にできる(PHOTO:Adobe Stock_sugiwork)

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