2022年3月には、中古車のオートオークション運営会社で最大手のUSSでの2月の成約車両単価、すなわち1台あたりの平均落札価格が100万6000円を記録。集計を始めた1999年4月以降初めて100万円を突破し、中古車相場が高騰とニュースとなった。
しかし、翌月となる3月の平均落札価格が91万1000円と下落すると、さまざまなメディアは、ロシアのウクライナ侵攻によって輸出がストップしたことが影響していると報じた。
ロシアへの経済制裁は関係なかった!!? 上昇傾向だった中古車価格が下落に転じた真相
この平均落札価格の下落は本当に制裁によるものなのかを、オートオークションにも足を運んでいる中古車販売店に取材をして検証してみた。
文/萩原文博
写真/TOYOTA、DAIHATSU、MITSUBISHI、NISSAN、SUZUKI、AdobeStock(トップ画像=shashamaru@AdobeStock)
■一部報道で取り上げられたが、ロシア制裁の影響はほとんどなし!
中古車価格が下落に転じた理由をロシアへの経済制裁の影響と見る向きもあったが、実際は少々異なるようだ(bluebullet0315@AdobeStock)
まず、記事のリソースとなっているUSSの月次データからチェックしてみる。中古車の価格は新車のように定価がないため、オートオークションなどでの落札価格などによって相場が形成される。
その中古車相場は、需要(中古車が欲しいユーザー)と供給(市場に流通する中古車)のバランスによって上下に変動するのだ。例えば、SUVの中でも人気の高いトヨタ ハリアーはハリアーを欲しい! というユーザーは多くいるものの、中古車が市場に少ない。
この結果、需要が供給を上回るため、中古車相場は上昇するのだ。1980年~1990年代の国産スポーツカーの値上がりも同様だ。
これを踏まえてUSSの月次データを見てみると、平均落札価格が100万円を超えた2022年2月の出品台数は23万3948台(前年比96.6%)、成約台数15万5225台(前年比99.2%)となっている。
続いて平均価格が91万1000円となった2022年3月の出品台数は28万8270台(前年比105.8%)、成約台数は19万2736台(前年比102.8%)と出品台数、成約台数ともに3月のほうが上回っているのだ。その結果、成約率は2月の63.4%から3月は65.4%へと上がっているのだ。
仮にロシアへの輸出がストップしたことで、中古車相場が値落ちしているとしたら2月より3月のほうが成約率で上回るのだろうか。ロシア向けの中古車の輸出は全体の約10%あり、仕向地別では一番シェアが高かった。
もし、ロシアへの輸出がストップしたことで中古車相場が下落したのであれば、成約率がロシアへの輸出分の10%減にならなければ説明がつかないはずだ。データでは成約率が下がるどころか上昇している。これだけ見ても、ロシアへの輸出ストップが中古車相場の下落による影響はほとんどないと考えられる。
■むしろ警戒されるさらなる中古車の値上がり! 今後はどうなる!?
新車の納期次第では、中古車相場が今後さらなる上昇を招いても不思議ではない(xiaosan@AdobeStock)
では、2月に最高値を記録した平均取引価格が3月には下がったのか。そもそも3月というのは中古車が1年を通じて、最も売れる大需要期だ。新卒や就職、転勤などで多くの人のライフスタイルが変わるタイミング。さらに、現在はコロナ禍により中古車の人気高まっている。
一般的に中古車販売店は3月の大需要期に向けて品揃えを充実させようと、1月~2月に中古車を仕入れるため、オートオークションの平均落札価格は上昇するのだ。
そして、今回の平均落札価格が最高値を記録した要因は、流通している中古車の中身だと考えている。世界的な半導体部不足によって新車の納期遅延が発生しているのはご存じのとおり。
しかし2月当時、軽自動車の新車販売台数No.1となったホンダ N-BOXをはじめとした、スーパーハイトワゴン系の未使用中古車が大量に発生し、市場に流入していた。実際、中古車の最高値を記録した記事を読んでみると、中古車の相場が上昇していると書かれている。
価格の高い高年式の未使用中古車が大量に中古車市場に流入すれば、一時的に中古車の平均価格は上昇する。2022年2月の平均落札価格最高値の要因のひとつはこの軽自動車の未使用中古車の大量発生の影響といえる。
また、これまで輸出されていた低価格帯の中古車をレンタカーやカーシェアリングの車両として使用する業者が増えてたことで、低価格の中古車が市場に出回りにくくなったこともの平均落札価格に影響を与えたことも間違いない。
オートオークションでクルマを仕入れたり、出品したりしている中古車販売店に聞いてみると、実際には新車の納期遅延の影響で、中古車相場は高止まりしているという。特に高年式の未使用車や高品質車を中心に値上がり傾向となっているそうだ。
平均落札価格は下がっているようだが、現場ではまったくそのような肌感覚はない。それどころか、新車の納期遅延が長引けば、買い取りや下取りされる予定だった中古車の流通が滞り、さらなる上昇の可能性もあるのではないかと戦々恐々としていた。
中古車のグローバル化が進み、人気の高い日本車は様々な国へ輸出されている。日本から直接ロシアに輸出できなくても、UAEなどを経由して輸出が止まることはない。というのが賢明な考え方だろう。
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みんなのコメント
中古車価格の上昇のし過ぎ
その反動でしょう