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トビアス・ムアースCEOが語るアストンマーティンの未来。大谷達也が独占インタビュー!

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トビアス・ムアースCEOが語るアストンマーティンの未来。大谷達也が独占インタビュー!

アストンマーティンの倒産を阻止すべく着任したトビアス・ムアース

メルセデスAMGの会長兼CEOだったトビアス・ムアースがアストンマーティンのCEOに就任すると聞いたとき、まず頭をよぎったのが「ムアースは、AMGからアストンマーティンとの関係を強化するために送り込まれたな」ということだった。

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アストンマーティンの各モデルに搭載されるV8エンジンがAMG製であることは広く知られているとおり。アンディ・パーマーが退任してローレンス・ストロールが会長に就任したアストンマーティンとの関係強化をAMGが期待していたとしても、何の不思議もない。いや、そのほうがムアースのCEO就任を自然に受け入れられるというものだ。

「それはまったくの誤解です」

イギリスと日本をリモートで結んだ個別インタビューの席で、ムアースCEOはそうした推測を言下に否定した。

「ローレンス・ストロールが私にアプローチしてきたのは昨年のことでした。彼は自動車産業界にいる知人と相談した際、数人が新CEOに相応しい人物として私の名前を口にしたそうです。彼と私はヒザを付き合わせて話し合い、『もしもあなたがアストンマーティンにやってくるなら、私はこの会社への支援を続けるが、もしもあなたが断るのであればアストンマーティンを倒産させるかもしれない』と私に伝えました」

アストンマーティンを持続的に成長できるカーメーカーへ

そこからふたりは「経営を健全化するにはどのくらいのキャッシュが必要か?」「今後に向けてどんな準備ができるのか?」などを議論。その結果、ムアースはストロールの申し出を受け入れることにしたという。

それにしても、26年間も勤め上げたダイムラーを辞めてアストンマーティンのCEOに就任することに、ムアースはどんな価値を見いだしたのだろうか?

「長い間、同じ会社に勤めていると『別のことを始めてもいいのではないか?』という思いに駆られることがあります。私はこれまでにもいくつかの企業にアプローチされたことがありますが、それらは適切なタイミングではありませんでした。それに、私の家族はドイツに住んでいるので、アメリカや中国の企業に勤めるわけにはいきません」

「一方でアストンマーティンは素晴らしいブランドで、過去に7回倒産しても復活するという力強さを秘めています。私の究極的な目標は、このアストンマーティンを持続的に成長できる自動車メーカーにすることにあります」

「そのためにポートフォリオを維持、管理し、新たなポートフォリオを生み出す。私がここにやってきたのはメルセデスのためではありません。アストンマーティンという企業とその株主のために、私は働いているのです。この点は疑う余地がありません」

新型V6エンジン開発を凍結した理由とは?

では、ローレンス・ストロール率いる新生アストンマーティンは、どんなポートフォリオを生み出そうとしているのか?

アンディ・パーマーはセカンド・センチュリー・プランで「7年間に7台のニューモデルを投入し、以降はそれらを1年ごとにモデルチェンジしていく」ことを謳っていたが、新経営陣はこの計画を一旦白紙に戻したうえで、ヴァルキリー、ヴァルハラ、ヴァンキッシュとつながる“ミッドシップ・スーパースポーツカー”を世に送り出すことを決めた。

これこそ、アストンマーティンがワークスチームとしてF1に復帰する最大の原動力でもあるわけだが、このミッドシップ・プログラムにも微妙な修正が加えられる。その最たるものは、ヴァルハラとヴァンキッシュへの搭載が予定されていた新しいV6エンジンの開発計画をキャンセルし、AMG製V8エンジンを搭載することになった点にある。

なぜ、ムアースはV6エンジンの開発を凍結したのか?

「もしもV6エンジンがすでにできあがっていたら、ヴァルハラやヴァンキッシュへの搭載を見送ることはなかったでしょう。しかし、私が着任して判明したのは、あのV6はまだコンセプトエンジンの段階で、これを完成させるまでには巨額な投資が必要になるとの事実でした。今年、来年と、私たちには電動化やポートフォリオの更新など、様々なプログラムに着手しなければなりません。そうしたなかでV6エンジンを新たに開発する余裕はありませんでした」

メルセデスAMG製V8エンジンをベースにしたミッドシップ・プログラム

ただし、だからといって既存のAMG製V8エンジンをそのまま採用するわけでもないらしい。「私たちはAMG製V8エンジンをベースとしながら、私たち自身の手で開発したプラグインハイブリッド・システムを組み合わせてミッドシップ・プログラムに活用します」

AMGとの協力関係は維持しながらも、アストンマーティンらしさを強調するためにはシステムの自社開発も厭わない。これが、ムアースCEO率いるアストンマーティンの新しい戦略と見て間違いなさそうだ。

もっとも、彼らの新戦略はきたるべきミッドシップ・プログラムの投入だけに留まらない。既存ラインナップのマイナーチェンジやバリエーションの追加などを積極的に行っていく考えであることを、今回ムアースCEOは教えてくれた。

「まずは既存モデルのフェイスリフトに取り組みます。ヴァンテージにはフェイスリフトを実施したうえで、2種類のバージョンを用意します。DB11もふたつのバージョンが登場する予定です」

DBXのプラットフォームを用いる新型モデルを確約

筆者との個別インタビューに先立つ今年4月に行なわれたグループインタビューの席で、ムアースCEOはDBSやDBXへのフェイスリフトにも言及していたので、既存モデルはすべてマイナーチェンジを受けると見て間違いないだろう。また、DBXについてはバリエーションの追加も予定されていて、ひとつは今年の第4四半期、もうひとつは来年の第2四半期に登場するという。

さらにDBXに関しては野心的な計画を立てているようだ。「DBXには専用に開発されたプラットフォームが用いられており、これが卓越したハンドリングを生み出しています。私たちは、このプラットフォームを活用して新たなラグジュアリーモデルを生み出すべきと考えています」

つまり、ミッドシップ・プログラム、DB11に代表されるフロントエンジン・モデルのフェイスリフトとバリエーション追加、そしてDBXのプラットフォームを用いた新モデルの投入が、今後のアストンマーティンを構成する3本柱となるのだ。

PHVを順次採用、ヴァンテージのMTはディスコン

これ以外にもムアースCEOは様々な可能性について教えてくれた。たとえばAMGが先ごろ発表したP3と呼ばれるPHVパワートレインを採用する見通しであること。フロントにV8エンジンを、リヤにギヤボックスやモーターなどを搭載するこのパワートレインはDBXのハイパフォーマンスバージョンに採用されるとの見方が有力だ。

また、現在はAMG製を流用しているドライバーズ・インターフェイスは遠からずアストンマーティン自製に置き換わること。そして間もなく実施されるフェイスリフトでヴァンテージからMTモデルが脱落すること。ただし、DB11などに用いられている現行プラットフォームやV12エンジンは今後もできる限り「長生きさせる」ことなどが明らかになった。

そしてその先には本格的な電動化計画が待っている。「アストンマーティンには2030年までに90%のモデルを電動化する計画があります」とムアース。「全ポートフォリオのおそらく45~55%はフルEVとなり、40~45%はPHVとなるでしょう。基本的にミッドシップ・プログラムはPHVとなると考えていただいて結構です」

サーキット専用モデルで新しいラグジュアリーを提案

ここから読み取れるのは、フロントエンジン・モデルの大半が将来的にフルEVに置き換わるということだ。では、電動化されない残る10%のポートフォリオは、どのようなものになるのか?

「おそらく8~12%のアストンマーティンは内燃機関を積んだサーキット専用モデルとなります。これはラグジュアリーの新しい形になると考えています」

こうした内燃機関モデルには、eフューエルと呼ばれるサステナブルな合成燃料が使われる可能性についても言及したムアースCEO。果たして、アストンマーティンの未来は安泰と考えていいのだろうか?

「それについては絶対の自信があります。すべてが予定どおりに進めば、私たちは素晴らしい企業になるはずです。私がCEOに就任してからの過去9ヵ月間にも信じられないような変化が起きました。私は、アストンマーティンに明るい未来がやってくると固く信じています」

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)

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