■大阪府警のパトカーが中国警察に押収!?
白と黒にカラーリングされたトヨタ「クラウン」といえば、誰もがパトカーを思い浮かべます。その白黒パトカーが中国の現地警察に押収されたといいますが、なぜ日本のパトカーが中国の警察に押収される事態となったのでしょうか。
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子どもの頃は憧れの的だったパトカーも、大人になってクルマを運転するようになったらちょっと苦手な存在になってしまった人もいるかもしれません。
パトカーに嫌な思い出がある人のほとんどは、実際に交通違反などで検挙された経験があるのではないでしょうか。
街を走るパトカーの多くは「交通取締用無線車」としておもに交通機動隊によって運用され、市民に交通ルールの遵守を徹底してもらうために、日夜巡回しています。
交通違反を取り締まるパトカーは、当然のことながら交通ルールを徹底して守ります。緊急時にはサイレンを鳴らして、赤信号を通過することもありますが、それらもきちんと道路交通法に決められた範囲内で運用されています。
そんな「交通ルールの化身」ともいえるパトカーですが、そのパトカーが警察に押収されたというニュースがSNSで話題になりました。
そのクルマには、なんと「大阪府警」の文字があり、しかも押収された場所は中国の広東省だということです。いったいどういうことなのでしょうか。
中国の現地警察に押収された「大阪府警のパトカー」は、クラウン(S200系)をベースにしていると見られます。
しかし、フロントグリルやリアコンビランプの形状を見ると日本仕様ではなく、中国の自動車メーカーである第一汽車とトヨタの合弁企業で、2012年から2015年まで生産されていた中国仕様のクラウンであることがわかります。
また、ナンバープレートも中国のものが装着されており、「粤A」という識別記号から広東省最大の都市である広州市のクルマであることが明らかです。
実はこのクルマ、中国の日本愛好家が独自に製作したカスタムカーのようです。現地のSNSによると、中国ではパトカーと類似したカラーリングを使用することは法律で規制されているため、今回押収されることとなってしまったとのことです。
赤色灯がなかったりホイールが換装されていたりと、よく見れば本物でないことがわかりますが、フロントグリルの「桜の代紋」や側面の「鶴見01」という管理記号などを見ると、なかなか芸が細かく、ミラー越しに見るとギョッとしてしまうかもしれません。
ちなみに、日本では、車体色を白と黒に塗り分けるのは合法ですが、「〇〇県警」といった文字を入れることや、赤色灯を鳴らすことはもちろん設置することも違法であるため、パトカーを真似たクルマを製作するとしても、せいぜいクラウンをベースにした白黒のクルマにしかならないというのがオチです。
■中国では警察車両に「C-HR」を採用!?
押収されたパトカーが巧妙に作られたレプリカだということはわかりましたが、なぜ中国で日本のパトカーのレプリカが登場したのでしょうか。
実は、中国では若年層を中心に日本のアニメやマンガの人気が非常に高いという背景があります。
とくに、広東省をはじめとする南部かつ沿岸部の地域は、北部や内陸部の都市に比べて新しい文化に対して寛容とされており、諸外国の文化を積極的に採り入れてきました。
日本に対しても同様で、広東省最大の都市である広州は、世界の主要都市のなかでももっとも日本人が住みやすい街のひとつといわれています。
実際に、日本の自動車メーカーでも広州を拠点としているところも多く、トヨタや日産、ホンダといった主要メーカーが広州付近に工場を構えています。
中国からの留学生を受け入れている日本語学を専門をするある大学院では、近年留学を希望する中国人の多くが、アニメやマンガを日本語学習のきっかけやツールにしているそうです。
そのため、留学当初には教科書的な表現よりも、いわゆるネットスラングであったり日常会話的な表現が優れているといいます。
自動車関連では漫画「頭文字D」の影響が大きく、前述の通り日系の自動車メーカーも多いことから、とくに広州付近では日本車のカスタムカーもしばしば見かけます。
ただし、日系パーツメーカーの幹部によると「車検不適合のものや品質に難があるものも少なくないため、これまで以上に純正パーツの提供が求められている」と話します。
今回の「大阪府警パトカー押収事件 in 中国」の背景には、行き過ぎた日本文化の盛り上がりがあったということでしょうか。
中国のパトカー関連では、もうひとつトピックがあります。
北京に近い天津市の警察車両として、トヨタ「イゾア」が正式に納入されました。
イゾアは、第一汽車とトヨタの合弁企業によって生産される中国版の「C-HR」です。従来のパトカーより後部座席が狭いという不安も指摘されているようですが、新型車両の配備に地元は賑わっているようです。
日中関係は常に緊張を極めていますが、「政冷経熱」という言葉があるように、経済・文化面での交流は常に盛んであることも事実です。
日本の自動車メーカーの多くは中国を主戦場にしていることから、日中関係は自動車メーカーの経営に対しても大きく影響を及ぼすため、互いに良い関係を築いていきたいものです。
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