この記事をまとめると
■ポルシェは2020年に550スパイダーをモチーフにした「ヴィジョンスパイダー」を公開した
落札予想価格「10億円」の凄いポルシェが姿を現した! ミュージアムでも見られない世界に4台しかない「550クーペ」とは
■「ヴィジョンスパイダー」には550スパイダーやその進化形の550/1500RSスパイダーの面影を感じる
■リヤビューにはエキゾーストシステムが見当たらず、BEVとして企画されていたのかもしれない
現代的解釈による伝説的モデルの復活を目論んでいた?
それは2020年のこと。ポルシェは「Porsche Unseen」とのタイトルを掲げて、これまで製作されたものの表舞台には登場することのなかった15台ものコンセプトカーを一挙に公開するというイベントを開催した。
多くの自動車メーカーが、世界各国にデザインスタジオを設けているのとは対照的に、ポルシェはコンセプトカーや、それからアイディアを得たプロダクションモデルのデザインを、ヴァイザッハで集中して行う。さらに、コンセプトカーに関しては、常にひとつだけのプロジェクトがスタジオでは進行しているのだというのが、このイベント時での説明だった。
ここで紹介するのは、「ヴィジョンスパイダー」と呼ばれる、コンパクトで軽量なスポーツコンセプト。そのプロジェクトの目的は、過去のモデルにインスピレーションを得た最新のモデルをどこまで魅力的にデザインすることができるのかに挑戦すること。
そして、将来そのディテールを、ポルシェのプロダクションモデルに利用できるかどうかの可能性を探ることも大きな課題とされていた。
デザインチームがその目的のためにインスピレーションを得たのは、1953年のパリサロンで発表された「550スパイダー」だった。1498ccの水平対向4気筒4カムシャフトエンジンを、110馬力の最高出力でミッドに搭載すると同時に、車名の由来ともなった550kgの乾燥車重を実現した550スパイダーは、1954年末からわずかに100台ほどが市販された。
そのカスタマーのなかには、4台が割り当てられたアメリカ仕様の1台を手にした俳優、ジェームズ・ディーンの名前があったことは有名な話である。
彼は自身の550スパイダーに「Little Bastard」(小さな悪魔)というニックネームを与え、レースを含めてその走りを楽しんでいたが、わずか1年も経たないうちに、一般道でこの550スパイダーをドライブ中に不慮の事故で死亡している。
生産化されていればヒットしたこと間違いなし
ヴィジョン・スパイダーに話を戻そう。実際にそのスタイリングを見ると、550スパイダーのような独特な丸みはややその傾向が薄れてしまってはいるものの、全体的なプロポーションや、リヤフェンダーからテール部にかけての絞り込み、あるいは低いフロントウインドウスクリーンからは、550スパイダーやその進化形である550/1500RSスパイダーの面影を感じ取ることもできる。
ちなみにリヤのライセンスプレートにある「Little Rebel」とは、ジェームズ・ディーンが出演した「Rebel without a Cause」(理由なき反抗)と前述の「Little Bastard」からなるもの。ドアに描かれる「131」の数字は、ジェームズ・ディーンが自身の550スパイダーに掲げていたゼッケン、「130」を受け継ぐものと考えてよさそうだ。リヤフェンダー上にある「551」のロゴも、550との関連性を物語る。
ポルシェからは実際に、このヴィジョンスパイダーに関する技術的な発表は行われなかったが、リヤビューからエキゾーストシステムが確認できないことを考えると、あるいはこのモデルは、BEVとしての可能性を模索したモデルであったのかもしれない。
シンプルで機能的なインテリアは、やはり550スパイダーのそれを想起させるもの。
エアロダイナミクスの優秀さも、エクステリアの造形を仔細に観察していけば、それが徐々に明らかになる。個性的な角型ヘッドライトやリヤのロールケージも、このヴィジョンスパイダーのディテールでは大きな見どころ。
もしもその生産化が実現していれば、それも550スパイダーのように破格なプライスでの販売が行われていれば、それはポルシェにとって大ヒット作となったことは間違いない。
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みんなのコメント
あくまで、グランツーリスモ用モデルは明らか。
記者のセンスと知識を疑う