現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【クルマだけではない水素社会を広げるために】ホンダCR-V e:FCEVから読み解くホンダの未来

ここから本文です

【クルマだけではない水素社会を広げるために】ホンダCR-V e:FCEVから読み解くホンダの未来

掲載 5
【クルマだけではない水素社会を広げるために】ホンダCR-V e:FCEVから読み解くホンダの未来

「究極のクリーンエネルギー」と呼ばれている水素

2024年7月、ホンダは新型燃料電池車『CR-V e:FCEV(シーアールブイ イーエフシーイーブイ)』を発売した。ちょっと読みにくい車名だが、ミドルクラスSUVのCR-VをベースにしたFCEV(燃料電池電気自動車)で、しかも日本の自動車メーカーとしては初めて、外部から充電可能なプラグイン機能を持つFCEVだ。

【画像】カーボンニュートラル社会の切り札 画像はこちら 全43枚

つまり、PHEV(プラグインハイブリッド電気自動車)と、FCEVのいいとこ取りをしたような、利便性の高いクルマなのだが、そもそも「燃料電池って何?」、「水素を燃料にするって、水素エンジンとはどう違うの?」、「水素じゃなくて、ただのBEV(バッテリー電気自動車)じゃダメなの?」といった、さまざまな疑問が生じてくる。

そんな疑問に対して、CR-V e:FCEVのパワーユニット研究開発責任者の菊地剛氏に伺った話を基に解説していこう。

カーボンニュートラル社会の実現に向け、各自動車メーカーはさまざまな研究・開発に取り組み、多様なエネルギーを選択肢としている。その中でも『究極のクリーンエネルギー』と呼ばれているのが、水素=H2だ。

水素はそのものを燃焼させることでエネルギーを生み出すこともできるし、CR-V e:FCEVのように燃料電池システムによって発電することもできる。しかも、水素は使用時にCO2(二酸化炭素)を排出することはなく、風力・太陽光などの再生可能エネルギーを活用すると、製造工程においてもCO2の排出をおさえることができる。

水素エンジンと燃料電池の違いは?

まず、水素エンジンとはガソリンや軽油の代わりに水素を燃料とするエンジン(内燃機関)だ。炭素を含まない水素ガスを燃焼させるから、燃料由来のCO2は発生しない。大気中の窒素と反応して燃焼時にはNOx(窒素酸化物)が発生するが、ガソリンエンジンよりは少ない。

BMWが2006年に限定発売した『ハイドロジェン7』、ほぼ同時期にマツダが発表した水素ロータリーエンジンなどがあるが、ガソリンエンジンよりは出力が低く、航続距離も短かった。

現在、水素エンジンに積極的なのはトヨタだ。水素エンジン搭載車の市販を目指しており、スーパー耐久などのモータースポーツに参戦して開発を進めている。現在では液体水素を燃料にハイブリッドシステムを組み合わせたスポーツプロトタイプのレーシングカーも発表しているが、市販化への道は険しい。

それゆえ、トヨタもFCEVのミライやソラ(日野のバス)、フォークリフトなどを発売し、水素エンジンと並行して研究・開発に取り組んでいるようだ。

ホンダは、水素をエンジンではなく燃料電池のエネルギーとして開発している。それは、クルマだけではない水素社会を広げるため。クルマ以外のさまざまなモビリティや定置型の発電システムとしても燃料電池は最適だとホンダは考えている。

燃料電池とは、燃料の水素と大気中の酸素を化学反応させて発電するシステムだ。そのシステムについて詳しく解説するのは、かなりの理系知識を必要とするためここでは省略する。

こちらも20世紀末ごろからメルセデス・ベンツやトヨタなど多くのメーカーが開発を進め、ホンダも1998年にプロトタイプを発表した。現在の日本では、トヨタ・ミライとクラウン、ヒョンデNEXO、そして今回のCR-V e:FCEV(リースのみ)が発売されている。

FCEVは走行時には水(H2O)以外は発生しない、ZEV(ゼロエミッションビークル)だ。しかも、同じ燃料を用いる水素エンジン車より効率は高い。モーターで駆動するため低速域からトルクフルで加速力は強く、しかもエンジン音などはないから極めて静かに走ることができる。

同じモーターで駆動するBEVに対して、燃料補給はエンジン車並みの充填時間で済むから、BEVのように充電のために時間を費やされることはない。また、航続距離も長い。次世代エネルギー自動車の主役は、FCEVになるのではと思う人も多かった。

コンパクトなFCEVを作ることは難しい?

だが、FCEVに欠点がないわけではない。まず、燃料電池システム(FCスタックと呼ぶ)や水素タンクはある程度の大きさが必要なため、小型車には採用できない。CR-Vでは従来型のクラリティのものより小型化されたが、それでもかなり大きい。水素タンクのために、ラゲッジスペースも多少犠牲になっている。

システムやタンクの小型化は進められてはいるが、小型車のZEVはBEVで、バスやトラックなども含めた大型車ではFCEVで、という棲み分けで当面は研究・開発が進んでいくことになりそうだ。

車両価格も、CR-V e:FCEVはリース専用だが809万4900円、ミライも726万1000円から(いずれも税込)と、BEVに比べてもまだまだ高価だ。

また、水素スタンドの数も不足している。FCEVの絶対数が少ないから、インフラ整備が追いついていないのは仕方ないのかもしれない。今後は高速道路のSAやPAに水素ステーションを設置するなど、ステーション不足を解消する傾向にあるようだが、まだまだ時間はかかりそうだ。

そう考えると、都市部では自宅や施設で時間をかけて充電して、郊外では水素を短時間で充填し、また給電してアクティビティを楽しむ、といった使い方のできるCR-V e:FCEVは、ひとつの最適解なのかもしれない。

燃料としての水素には、もうひとつメリットがある。それは日本国内で作ることができるから、原油のように世界情勢には影響を受けず、安定した供給が可能なこと。燃料代として考えても、水素はまだガソリンよりは少し割高だが、これも下がる傾向にはある。

ホンダでは、FCシステム活用のコアドメインをFCEV、商用車、定地電源、建設機械の4つに定め、他社との協業にも取り組んでいくという。クルマだけではない、社会全体のカーボンニュートラル化には、もはや燃料電池は外せないアイテムになっていることは間違いなさそうだ。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

CO2を使って合成燃料を作るプラントが爆誕! だから気にせずガソリン車にいつまでも乗れる……とはならなそう
CO2を使って合成燃料を作るプラントが爆誕! だから気にせずガソリン車にいつまでも乗れる……とはならなそう
WEB CARTOP
【ハイテク機能を搭載した帰国子女】ホンダCR-V e:FCEV試乗記
【ハイテク機能を搭載した帰国子女】ホンダCR-V e:FCEV試乗記
AUTOCAR JAPAN
FFスポーツ実験は大成功! ホンダCR-X シビック 2台の「Si」(1) タイプR誕生前夜
FFスポーツ実験は大成功! ホンダCR-X シビック 2台の「Si」(1) タイプR誕生前夜
AUTOCAR JAPAN
トヨタが液体水素エンジンのボイルオフガスを有効活用する技術コンセプトを発表、実現に向けて開発仲間を集う…スーパー耐久 第7戦 富士ファイナル
トヨタが液体水素エンジンのボイルオフガスを有効活用する技術コンセプトを発表、実現に向けて開発仲間を集う…スーパー耐久 第7戦 富士ファイナル
レスポンス
ホンダCR-X シビック 2台の「Si」(2) 現代人へ理想的なデトックス 熱くなれる92ps!
ホンダCR-X シビック 2台の「Si」(2) 現代人へ理想的なデトックス 熱くなれる92ps!
AUTOCAR JAPAN
トヨタの「スゴいカローラ」登場! さらに進化する? 液体水素エンジンでの新たな挑戦とは
トヨタの「スゴいカローラ」登場! さらに進化する? 液体水素エンジンでの新たな挑戦とは
くるまのニュース
新時代のホンダ「モトコンポ」誕生か? “電気自動車への電力供給”&“ラストワンマイルの移動手段”を両立!? 北米での「見逃せない特許」とは?
新時代のホンダ「モトコンポ」誕生か? “電気自動車への電力供給”&“ラストワンマイルの移動手段”を両立!? 北米での「見逃せない特許」とは?
VAGUE
元町工場の意味は原点を大切にする「もと町工場」だった! エンジン車もハイブリッドもEVもFFも4WDも同じラインで生産する「現在より未来」を見据えた取り組みに感動
元町工場の意味は原点を大切にする「もと町工場」だった! エンジン車もハイブリッドもEVもFFも4WDも同じラインで生産する「現在より未来」を見据えた取り組みに感動
WEB CARTOP
海外で話題を集めた「クルマの流行」 おしゃれなアイテムから悪趣味なものまで 34選 前編
海外で話題を集めた「クルマの流行」 おしゃれなアイテムから悪趣味なものまで 34選 前編
AUTOCAR JAPAN
ホンダの“3代目”「和製スーパーカー」はいつ登場!? ついに究極の“静音”マシン化か? 待ち望まれる新型「NSX」はどうなるのか
ホンダの“3代目”「和製スーパーカー」はいつ登場!? ついに究極の“静音”マシン化か? 待ち望まれる新型「NSX」はどうなるのか
くるまのニュース
【AT限定でトラックに】日産「アトラス」にAT限定普通免許対応モデル 運送業界の課題解決へ
【AT限定でトラックに】日産「アトラス」にAT限定普通免許対応モデル 運送業界の課題解決へ
AUTOCAR JAPAN
日産の「901活動」から生まれた! 7代目 B13型「日産・サニー」とは
日産の「901活動」から生まれた! 7代目 B13型「日産・サニー」とは
バイクのニュース
ロータスのハイパー電動SUV「エレトレR」が体現する近未来のクルマ造り
ロータスのハイパー電動SUV「エレトレR」が体現する近未来のクルマ造り
@DIME
611psでサーキットへ最適化! メルセデスAMG GT 63「プロ」へ試乗 圧巻のパフォーマンス
611psでサーキットへ最適化! メルセデスAMG GT 63「プロ」へ試乗 圧巻のパフォーマンス
AUTOCAR JAPAN
海外で話題を集めた「クルマの流行」 おしゃれアイテムから悪趣味な改造まで 34選 後編
海外で話題を集めた「クルマの流行」 おしゃれアイテムから悪趣味な改造まで 34選 後編
AUTOCAR JAPAN
トヨタが「超スゴいハイエース」実車公開! ホワイト&ブルーボディに「画期的システム」搭載!? 「H2×HEV」仕様とは
トヨタが「超スゴいハイエース」実車公開! ホワイト&ブルーボディに「画期的システム」搭載!? 「H2×HEV」仕様とは
くるまのニュース
日産キャシュカイ:市場へ巨大な影響 トヨタ・カローラ:ファミリーカーの伝説 ヴォグゾール・コンボ:積載量マックス 誇らしきUK製モデル(2)
日産キャシュカイ:市場へ巨大な影響 トヨタ・カローラ:ファミリーカーの伝説 ヴォグゾール・コンボ:積載量マックス 誇らしきUK製モデル(2)
AUTOCAR JAPAN
「ホンダはEVでもNo.1を目指します」初の電動スポーツ車を25年に市場投入!ホンダの最新二輪EV戦略を電動領域担当者に聞いた
「ホンダはEVでもNo.1を目指します」初の電動スポーツ車を25年に市場投入!ホンダの最新二輪EV戦略を電動領域担当者に聞いた
モーサイ

みんなのコメント

5件
  • クムクム
    未来なんかないでしょう。
    現在も危ないのに!
  • sor********
    リース販売は、何処の店でも
    クルマのメンテナンスに出していいのではなく、
    決められた店にしか出せない縛りがある。

    つまり門外不出の状態に等しく、
    どちらかと言ったら、こういうクルマも
    作れますよというアピールが目的でしょう。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

809.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

28.0438.2万円

中古車を検索
CR-Vの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

809.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

28.0438.2万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村