2022年にフルモデルチェンジを行い、クラウンのDNAである「革新と挑戦」をリアルに体現した16代目クラウン。
新たに登場を控える「クラウンスポーツ」はどのようなモデルなのでしょうか。
16代目クラウンは、当初クロスオーバーのみの企画だったと言いますが、このモデルがある程度カタチになった頃、豊田章男社長(現・会長)からこのような提案があったそうです。
【画像】乗り味も良いが…デザインもカッコいい!スポーツとクロスオーバーの違いを見る!(71枚)
「セダンも考えてみないか?」
クラウンを担当するMSカンパニーの中嶋裕樹プレジデントは「正直言うと、耳を疑った」そうです。
ただ、それと同時に「セダンの呪縛が解けた今だからこそ、新たな発想でセダンを作りなさい」と言う問いかけに聞こえたそうです。
開発チームは「それならば、皆が求めるクラウンを更に提案しよう! キーワードは、トヨタのフラッグシップに加えて、あなたのフラッグシップだ!」とスポーツ/エステートの企画が生まれたそうです。
豊田氏はこの4台のクラウンを見て、開発チームに「ちょっと調子に乗りすぎていない? でも、これは面白いね!!」と語ったと言います。
そして試験車両のステアリングを握り「これぞ、新時代のクラウンだね」と。
つまり、どのモデルも正真正銘「クラウン」なのですが、多様性が求められる時代に合わせて単品ではなく「群」としての提案と言うわけです。
この辺りは手法こそ異なりますが、基本的な考え方は、ヤリスシリーズ/カローラシリーズと共通なのです。
今回紹介するのは、クラウンシリーズの中で最もエモーショナルな存在である「スポーツ」になります。
2023年秋に発売予定と発表されていますが、それに先駆けてプロトタイプに短時間ですが試乗してきました。
エクステリアはすでに公開済みですが、実車を間近で見るのは初めてです。
最新トヨタデザインのアイデンティティの一つ「ハンマーヘッド」をより強調としたフロントマスクはスポーティさと先進性が上手にバランスされています。
実はヘッドライトはバンパー内に設置されており、上部のLEDはデイライト&ウインカー用となっています。
サイドはクロスオーバーよりも短い全長/ホイールベース、前後オーバーハングを活かした凝縮感あるデザインはFF横置きベースを忘れてしまうくらいのプロポーションバランスです。
リアフェンダー周りの立体感はトヨタ車史上最大と言っていいレベルで、欧州のスーパーSUVも顔負けのセクシーさです。
リア周りはトレンドの横一文字ではなく薄型ながらも左右独立4灯のリアコンビランプを採用していますが、これは歴代クラウン・アスリートがモチーフになっているそうです。
ボディカラーは複数用意されていますが、今回の試乗会ではレッド、ホワイト、そしてマットブラックの3色を展示。
ボディカラーで雰囲気がガラッと変わり、レッドはより妖艶さ、ホワイトは知性的な雰囲気が際立つような感じがしました。
ちなみにマットブラックはチョイ悪な雰囲気ですが、当初は公道テストでの偽装用だと言います。
インテリアは基本的なデザイン・操作系はクロスオーバーと同じ、つまり雑多なレイアウトのセンターコンソール周りやアニメーションを含めてガッカリなインフォテイメントはそのままですが、スポーツ専用アイテム(シート、ステアリング、シフトノブ)に加えてアシンメトリーのカラーコーディネイトでパーソナル感が演出されています。
個人的にはエクステリアデザインとのマッチングと言う意味ではクロスオーバーよりも良く感じましたが、欲を言えばスポーツ専用メーター表示といった「プラスα」で差別化があっても良かったかなと
シートはクロスオーバーよりも数値的にはヒップポイントが高められていますが、パッと座った印象はほぼ同じ。リアシートはウィンドウ面積が小さいので閉塞感はあるものの、居住性に不満は感じませんでした。
足元スペースはホイールベース短縮(-80mm)の影響はありますが、170cmの筆者がフロントシートのポジションを取った状態で拳2.5個以上の余裕があるので十分でしょう。
ちなみにシートバックがクロスオーバーよりも立ち気味に感じましたが、これはラゲッジの容量を稼ぐためなのでしょうか。
ラゲッジは左右にゴルフバック用の“エグリ”が設けられていますが、上下左右、奥行き共にかなり割り切られています。この辺りはデザイン優先の結果だと思いますが、逆を言えば「ラゲッジスペースが欲しかったら、エステートをどうぞ」と役割が明確なので、筆者はネガには感じませんでした。
■新型クラウンスポーツ、クルマの「走る・止まる・曲がる」という基本性能は?
では、クラウンスポーツのメカニズムはどんなものでしょうか。
パワートレインは2タイプが用意されており、普及版がハイブリッド(HEV)、上級版がプラグインハイブリッド(PHEV)となっています。
ハード自体はRAV4/ハリアーと同じ2.5L+THSII+E-FOURの組み合わせですが、クラウンに見合った専用制御になっています。
今回はPHEVのみの試乗となりましたが、一言で表すと「見た目はチャラいが、中身は極めてジェントル」といった印象でした。
EVモードはドライバーのペダル操作に合わせて必要なだけ力強さが増していくフィーリングはRAV4 PHVと同じですが、より滑らか、より操作に忠実で、「スーっ」と走るような感じです。
HEVモードはRAV4 PHVと同じであればシステム出力306psだと思われますが、体感的には「おっ、力強い!」と言うよりも「おっ、余裕あるね」という印象で、よりリニアなパワートレイン制御だけでなく、アクセルを踏んだ時の車両姿勢の変化の少なさも寄与しているようです。
この辺りの印象は「クラウンの世界観」という意味では正しい方向だと思いますが、クラウンスポーツの“エモーショナル”な立ち位置を思うと、「見た目に対してちょっと大人しいかな!?」と感じたのも事実です。
個人的には時間限定/回数限定でいいので、モーターのパフォーマンスを最大限に活用して「おっ、クラスポ凄い!」と言わせるようなブースト機能があってもいいかなと。
今回HEVは未試乗ですがPHEVの印象を踏まえると、個人的には2.4Lターボ・デュアルブーストハイブリッドのほうがキャラクターは合っているような気がします。
フットワークはクロスオーバーをベース(プラットフォームはフロント・セダン用GA-K、リア・SUV用のハイブリッド)にしながらも、基本素性の違い(ホイールベース短縮/前後オーバーハング低減)を活かしたスポーツ専用チューニングが施されています。
具体的な話は未公表ですが、専用AVS(電子制御可変ダンパー)&専用DRS制御、235/45R21サイズのミシュラン・eプライマシー(クロスオーバーは225/45R21)などに加えて、TNGAとしての進化・熟成も盛り込まれていると言います。
その走りは、AWD制御(リアモーターを積極的に駆動力制御に活用)と四輪操舵(DRS)、更にはACA(アクティブ・コーナリングアシスト)などの相乗効果で駆動方式の概念を変える「コーナリング時の旋回姿勢」。
コーナリングの一連の流れに連続性の高さ、滑らかでスムーズなクルマの動きなど、「気負いなく高性能を味わえる」ハンドリングはクロスオーバーと共通ですが、スポーツはそれに加えて「より機敏」、「より俊敏」、「より曲がる」という形容詞がプラスされます。
過去のクラウンで例えるならば、クロスオーバーは「アスリートとロイヤルのいい所取り」ですが、スポーツは明確に「アスリートの後継」と呼べる味付けといえると思います。分類上はSUVですが、「走りはスポーツセダン」に近いと言っていいと思います。
■新型クラウンスポーツを…いざ試乗! どんな印象なのか?
乗り心地はハンドリングの印象からクロスオーバーよりも引き締められている方向かと思いきや、路面入力のまろやかな伝わり方、シットリした足の動き、少しだけ早めの吸収スピードなど、むしろ快適性はクロスオーバーよりも高く感じました。
この辺りはクロスオーバーよりもエアボリュームの高いタイヤや重心の低さ(バッテリー搭載の影響)もあると思いますが、恐らくクロスオーバーでやりきれなかった部分のブラッシュアップも効いていると思われ、将来クロスオーバーにもフィードバックされるのは間違いないと思います。
ただ、ここもクルマの進化としては正しいと思いますが、パワートレインと同じくクラウンスポーツの“エモーショナル”な立ち位置を思うと、「見た目に対してちょっと大人しいかな!?」と感じたのも事実です。
例えば、現状のドライブモード・スポーツは「クラウンの世界観の中」でのスポーツですが、個人的にはそこを飛び越えても良かったかなと思っていますが、この辺りはGRモデルのために残してあるのかもしれません。
今回スポーツに乗って改めて分かったことは、「16代目は“群”で見ないと本質は解らない」と言うことです。
今回2台を見て・触れて感じた事は、スポーツ/クロスオーバー共に「革新と挑戦」と言う根っこは不変ですが、クロスオーバーは「生きる価値」、スポーツは「生きる喜び」の部分にそれをより色濃く感じました。
まさに左脳ではなく右脳で楽しめる「エモいクラウン」の誕生と言えるでしょう。
カスタマイズに関しても、車高やタイヤ&ホイール、エアロパーツなどなど、伸び代もあるので、今後のサードパーティの頑張りにも期待大です。
ちなみに今まではクラウンの複数所有は基本的にはあり得ない事でしたが、16代目は「それもアリかな」と思っています。
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みんなのコメント
これも時代の流れなんやろうけど。
70年代生まれには理解できないカタチ。