現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 燃費も操縦安定性も抜群!! プリウス19インチタイヤ 衝撃の中身

ここから本文です

燃費も操縦安定性も抜群!! プリウス19インチタイヤ 衝撃の中身

掲載 38
燃費も操縦安定性も抜群!! プリウス19インチタイヤ 衝撃の中身

 新型プリウスの上位グレードには、なんと19インチタイヤが装着されている。まるでスポーツカーのようでかっこいいのだが、ある程度燃費も重要なハイブリッド車には似合わないサイズのように思える。ところが、この19インチタイヤには、燃費と操縦安定性を両立する秘密が詰まっていたのだ。この大径タイヤの狙いを解説する!

文/斎藤聡、写真/トヨタ、ベストカー編集部

燃費も操縦安定性も抜群!! プリウス19インチタイヤ 衝撃の中身

■大径タイヤが採用された理由とは?

プリウスに採用されたブリヂストン エコピア。タイヤサイズは195/50R19

 プリウスがついに19インチタイヤを装着! 大径すぎないか? ついにプリウスはドレスアップに走ったのか? なぜ19インチ? 高性能化? ハイブリッドの燃費の良さは捨てるのか?

 いろんな疑問が浮かんできますが、タイヤをよくよく観察すると、ブリヂストン装着車はエコピアで、さらに「ologic(オロジック)」というロゴが刻まれています。そう、BMW i3に装着されて当時話題になったブリヂストンの次世代低燃費タイヤ技術であるologic搭載した低燃費タイヤなのです。

 発表は2013年3月、ジュネーブモーターショーでのことでした。ここでラージ&ナローコンセプトタイヤとして発表したのがologicです。

 下記は当時のブリヂストンのニュースリリースからの引用です。

「今回開発に成功した技術は、タイヤサイズをこれまでなかった狭幅・大径サイズ化(タイヤサイズを狭幅化、タイヤ外径を大径化)するとともに、使用空気圧を高内圧化へと変更、~中略~従来とは別次元の技術イノベーションによる転がり抵抗の低減とウエットグリップ性能の向上を実現しています」

 当時、タイヤにまつわる状況はどんなだったかというと、欧州でタイヤラベリングが始まったのが2011年、国内では一足早く2010年からタイヤグレーディングが始まっています(タイヤに貼られている転がり抵抗、ウエットグリップを示した例のアレです)。

 その数年前から世界中のタイヤメーカーは転がり抵抗の低減とウエットグリップ性能の両立に関する取り組みや研究が本格化していました。

 2012年頃から転がり抵抗/ウエットグリップ=AAA/aというタイヤがサイズ限定で登場し始めたころでもありました。

 そんな渦中にologicが発表されたわけですが、発表から1週間も経たないうちに他のタイヤメーカーからも次々と同様のコンセプトを謳った低燃費タイヤ技術が発表され、タイヤ業界は瞬間的ではありますが騒然としたのでした。

 まあ、そのくらいインパクトがある発表であり、またどのタイヤメーカーのエンジニアも、タイヤの走行抵抗を低減させ、かつウエットグリップを落とさない方法としてラージ&ナローコンセプトを温めていたのかもしれません。

 ちなみにこのologicは翌年発表されたEVのBMW i3とi8に装着されデビューしたのでした。

■19インチタイヤの狙いと利点

ブリヂストンタイヤには「ologic(オロジック)」の表記がある

 ologic技術は狭幅化、大径化、それに高空気圧が3つのポイントになっています。さらに狭幅化することで、空気抵抗の低減と転がり抵抗の低減が得られます。

 走行中のタイヤの空気抵抗は意外に大きく、タイヤを細身にすることで、効果的に空気抵抗を低減することができるのです。特に近年ではクルマのハイパフォーマンス化が進んだことで、タイヤサイズもワイド化が進んでいました。

 しかし、タイヤが太くなると接地面が広がりますから、転がり抵抗が大きくなり、またウエット路面では、細身のタイヤと比べ接地面圧が低く(車重が同じ場合)なりますから、ウエット性能は不利になります。 それを解消する方法がタイヤの大径化なのです。

 タイヤを大径化してタイヤ外径を大きくすることで接地長を長くとることができます。もちろんこれにはタイヤプロファイル(断面形状)も関わってきますが、基本的にタイヤ外径が大きくなれば接地長は増えます。
※大径化で前後方向にタイヤの接地面積が増えるためにグリップが向上する。

 じつは接地長を長くとると、クルマは操縦安定性が良くなるのです。絶対的なグリップ性能は接地面積が大きく効いてきますが、操縦安定性(≒クルマの落ち着き感、安定感)に関しては接地長の拡大で補えるのです。

 またタイヤの大径化は、接地部分の変形を少なくすることになるので、転がり抵抗を低減する効果があります。これは高内圧化とも密接に関わっています。空気圧を高くすれば接地面部分のタイヤの変形が少なくなるので、大径化と合わせて転がり抵抗を少なくする効果が増すわけです。

 一般的なタイヤでも指定空気圧よりも高くすると燃費が良くなりますが、これも同様の効果があるからです。

 ただ、タイヤを細身にするとタイヤの負荷能力(≒ロードインデックス)は少なくなりますから、50→60といった具合に偏平率を低くしたり、あるいは高内圧化することでロードインデックス不足を補う必要があります。
※ロードインデックスが小さいとタイヤが耐えられる負荷が少なくなる。

 つまりタイヤを細身で外径を大きくして空気圧を高くすると、転がり抵抗が少なくなるとともに接地面積が小さくなるので燃費が良くなり、接地面圧が高くなるのでウエット性能も期待できると、いいことづくめの技術というわけなのです。

■あまり普及しなかった大径燃費タイヤ

技術の進化によって19インチタイヤはプリウスの燃費と走りを高いレベルでバランスさせている

 ただ、ologicが発表されてから約10年経過しましたが、その技術的なメリットから考えるほどには普及しませんでした。その決定的な理由があります。それはコストです。

 タイヤを細身にし、かつある程度タイヤに厚みを持たせる必要があることから、車重や重心高などクルマのディメンションとのマッチングが重要になってくるのです。

 単に細身大径のタイヤに付け替えるだけでは、燃費とウエットブレーキを向上させつつ、操縦安定性を確保するのは難しいのです。量産に向かないタイヤということです。専用設計かそれに近い作りにしないと最適値は引き出せないということなのです。

 プリウスのタイヤサイズは195/50R19です。ちなみにi3(初期型)のタイヤサイズ(19インチ)は前155/70R19、後175/60R19でした。プリウス用とi3用を比較してみると、プリウス用はタイヤが太くなり偏平率も高くなっています。

 タイヤを太くした理由は汎用性の向上ではないかと思います。ologicの問題点は、セッティングの幅が狭く量産に向かないことでした。

 けれどもタイヤサイズを太くし、偏平率を高めることでタイヤの横剛性及びねじり剛性を高くなりタイヤの変形量を少なくできたことで、セッティングのシビアさを解消することができたのではないかと思います。

 それが可能になった理由は、この10年である程度のタイヤ幅を確保したままでもタイヤの転がり抵抗を低くすることができるようになったことが挙げられます。

■195/50R19サイズが実現する燃費と操縦安定性

新型プリウスの19インチには横浜ゴムのブルーアースGTも採用されている

 すでにオロジック開発当時から分かっていたことですが、タイヤの転がり抵抗はトレッド面のグリップが作り出す抵抗だけではなく、タイヤのトレッド面やサイドウオールを含めたゴムの変形が作り出す発熱がエネルギーロス≒転がり抵抗になります。

 そこで低発熱のゴムの開発や配合剤の進化(シリカの分散性など)によって、極端にタイヤ幅を細くしなくても転がり抵抗を低く抑えることができるようになったのでしょう。

 タイヤ幅を広くできると、横剛性やねじり剛性を高めることができ、コーナリング中のタイヤの変形も抑えることができるようになります。

 一般的なタイヤサイズよりもナローで、空気抵抗低減や接地面積を(一般的なサイズのタイヤよりは)小さくすることができ、同時に操縦安定性も両立させることができる、そんなちょうどいい落としどころが195/50R19というサイズだったのでしょう。

 プリウス+195/50R19サイズの組み合わせについて言えば、徹底的に転がり抵抗を低減し燃費に特化したタイヤ……ではなく、高性能なエコタイヤ並みに転がり抵抗を低減しながら操縦性を両立させることを、トヨタは狙ったのでしょう。

 ちなみに、新型プリウスに装着されるタイヤはブリヂストンだけでなく横浜ゴムのブルーアースGTも用意されています。

 じつはタイヤ外径が大きいということは、同じ距離を走るときタイヤの回転数が少なくなるので(ほんのわずかですが)タイヤライフにも有利に働きます。

 i3という特殊な電気自動車ではなく、量産車プリウスに採用されたことで、今後このラージ&ナローコンセプトのタイヤは様々なクルマに採用されるようになるかもしれません。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

[圧倒的燃費]と環境性能! [トヨタ・ヤリス]を超えるクルマってぶっちゃけある? 
[圧倒的燃費]と環境性能! [トヨタ・ヤリス]を超えるクルマってぶっちゃけある? 
ベストカーWeb
給与が高いスイスに拠点を置くザウバーは例外? ハースF1小松代表、FIAが検討する予算上限”優遇措置”に反論「皆反対している。シンプルなままでいい」
給与が高いスイスに拠点を置くザウバーは例外? ハースF1小松代表、FIAが検討する予算上限”優遇措置”に反論「皆反対している。シンプルなままでいい」
motorsport.com 日本版
日産「新型スカイライン」発売! 歴代最強「匠“手組み”エンジン」×旧車デザインの「特別仕立て」登場も「次期型」はもう出ない…? 「集大成」完売した現状とは
日産「新型スカイライン」発売! 歴代最強「匠“手組み”エンジン」×旧車デザインの「特別仕立て」登場も「次期型」はもう出ない…? 「集大成」完売した現状とは
くるまのニュース
実は大きく違う!? モータースポーツ総合エンターテイナー濱原颯道が開催した「クシタニライダー台湾人スクール」で感じた台湾人ライダーと日本人ライダーの練習環境の違いとは
実は大きく違う!? モータースポーツ総合エンターテイナー濱原颯道が開催した「クシタニライダー台湾人スクール」で感じた台湾人ライダーと日本人ライダーの練習環境の違いとは
バイクのニュース
旧車への憧れ、理由の1位は「デザイン」、人気車種は…旧車王が調査
旧車への憧れ、理由の1位は「デザイン」、人気車種は…旧車王が調査
レスポンス
いずれスポーツカー[バブル]は崩壊する!! その時あなたは買う勇気があるか!?
いずれスポーツカー[バブル]は崩壊する!! その時あなたは買う勇気があるか!?
ベストカーWeb
レゴとF1、パートナーシップを締結…2025年からクリエイティブな遊び提案へ
レゴとF1、パートナーシップを締結…2025年からクリエイティブな遊び提案へ
レスポンス
メルセデスが3セッション連続で最速! 終盤の赤旗中断で、アタック未完了のマシン多数……勢力図は不明瞭|F1ラスベガスGPフリー走行3回目
メルセデスが3セッション連続で最速! 終盤の赤旗中断で、アタック未完了のマシン多数……勢力図は不明瞭|F1ラスベガスGPフリー走行3回目
motorsport.com 日本版
ルノーがハイブリッド車に使ったF1直系の技術……って聞くとなんかたぎる! 「ドッグクラッチ」ってそもそも何?
ルノーがハイブリッド車に使ったF1直系の技術……って聞くとなんかたぎる! 「ドッグクラッチ」ってそもそも何?
WEB CARTOP
F1ラスベガスFP3速報|赤旗で消化不良に。ラッセルがトップタイム、RB角田裕毅は16番手
F1ラスベガスFP3速報|赤旗で消化不良に。ラッセルがトップタイム、RB角田裕毅は16番手
motorsport.com 日本版
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場? 22年ぶり復活で噂の「MT」搭載は? 「2ドアクーペ」に反響多数!海外では“テストカー”目撃も!? 予想価格はいくら?
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場? 22年ぶり復活で噂の「MT」搭載は? 「2ドアクーペ」に反響多数!海外では“テストカー”目撃も!? 予想価格はいくら?
くるまのニュース
WRCラリージャパン、SS12キャンセル原因は“無許可の車両によるステージ侵入”とFIA発表
WRCラリージャパン、SS12キャンセル原因は“無許可の車両によるステージ侵入”とFIA発表
motorsport.com 日本版
山脈貫通!「新潟‐福島」結ぶ国道が建設着々 “延長21km・トンネル15本”におよぶ大規模道路いつ開通?
山脈貫通!「新潟‐福島」結ぶ国道が建設着々 “延長21km・トンネル15本”におよぶ大規模道路いつ開通?
乗りものニュース
昭和の名車とワーゲンがぎっしり…茨城県の江戸崎商店街でホコ天イベント
昭和の名車とワーゲンがぎっしり…茨城県の江戸崎商店街でホコ天イベント
レスポンス
ドゥカティ現行車では唯一!? 空冷Lツインを搭載する第2世代スクランブラー「アイコン」の魅力
ドゥカティ現行車では唯一!? 空冷Lツインを搭載する第2世代スクランブラー「アイコン」の魅力
バイクのニュース
ホーナーの言うことは「信用できない」とウォルフ。妻に対するFIAの調査の際に不信感を募らせたことを明かす
ホーナーの言うことは「信用できない」とウォルフ。妻に対するFIAの調査の際に不信感を募らせたことを明かす
AUTOSPORT web
バスドライバーを疲れさせる「プルプル運転」とは何か? 自動運転時代の落とし穴! 過剰な安全対策が招く危険とは
バスドライバーを疲れさせる「プルプル運転」とは何か? 自動運転時代の落とし穴! 過剰な安全対策が招く危険とは
Merkmal
46台の輸入EVが丸の内に集結!「JAIA カーボンニュートラル促進イベント」リポート
46台の輸入EVが丸の内に集結!「JAIA カーボンニュートラル促進イベント」リポート
LE VOLANT CARSMEET WEB

みんなのコメント

38件
  • いくら転がり抵抗減って燃費向上しても大径タイヤは高価だからタイヤ交換の際に出費増えるやん
  • 195で19インチって自転車かよw
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

275.0460.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

0.0999.9万円

中古車を検索
プリウスの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

275.0460.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

0.0999.9万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村